ローパスフィルタ作りで使用したフィルムコンデンサの ESR を調べてみました。
測定環境及び測定方法に難ありのところはありますが、NanoVNA のソフトウェアを使ってザックリですがコンデンサの ESR を測定してみました。
電解コンデンサのように静電容量が大きく低周波領域で使用するコンデンサなら、GM328A のような中華製の安価な測定器でも ESR は調べることはできるんですが、セラミックコンデンサやフィルムコンデンサのような低インピーダンスなコンデンサの ESR は、プロが使うような高級な測定器じゃないと調べることはできません。ところが、"NanoVNA V2 plus4" という、オリジナルな NanoVNA とハード的に違っている VNA と、これまたちょっとマニアックな、”NanoVNA V2+4” というソフトウェアを使うことで、これまでできなかった低インピーダンスなコンデンサの ESR を測定できることが分かったので、ホントに正しい ESR なのか不明なところではありますが、まぁこれも小さな一歩ということで調べてみることにしました。
測定方法やその考え方に誤りがあれば、その都度修正していきますので、その点はご承知おきください。
測定環境
機器の校正はこの Testboard を使った環境で行い、ロードは 51Ω の抵抗で行いました。
NanoVNA V2(SAA-2N)を購入しました - JH1LHVの雑記帳
NanoVNA Testboard Kit ~1~ - JH1LHVの雑記帳
ソフトウェアの NanoVNA V2+4
ESR を調べるコンデンサは直列ではなく並列で接続する、"シャントスルー法" で測定を行います。
ESR が小さいほど、共振点でのインピーダンスは低くなります。
P1 ------------------- P2
|
=
|
--------------------
シャントスルー法は、mΩ のきわめて小さなインピーダンス測定に適した方法で、S パラメータの ポート1 と 2 を使用して、コンデンサを並列に接続して測定します。
基本的に1μF 以下のコンデンサの ESR は並列で測定する必要があります。
(GM328A は、直列接続のみとなっています。)
NanoVNA で、共振周波数のディップ点を求めます。
このディップ点は、Xc = XL で打ち消し合うので、あと残るのは ESR だけとなります。
インピーダンス測定の方法に、今回のシャントスルー法や、シリーズスルー法、反射法などがありますので、詳しく知りたい方は、これらのキーワードでググってみるといいと思います。基本的に私としては、「コンデンサの ESR というものは害なもので、その数字は小さければ小さいほど高周波回路ではいい!」ってことだけを覚えておけばいいと思っていて、今どきはこういうソフトウェアを活用することで、複雑な計算をせずとも、ハムの工作で必要な程度の ESR が一発で表示してくれるので、あとは測定ジグの校正と、ソフトに表示される各項目の意味をザックリ知る、もうそれだけでいいんじゃないかと思っています。
7メガの LPF で使ったフィルムコンデンサの ESR について
まずは、中華リニアの 50W で、煙が出たコンデンサ(同型)の ESR から。
このフィルムコンデンサ(1500pF 100V)は、秋月電子で購入したものになります。
ESR = 0.317Ω ってとこなんで、コンデンサの品質としては良好だと思います。
ほかの手持ちもすべて調べましたが、0.3Ω から 0.7Ω というところに収まっていました。
やはりコンデンサから煙が出た原因は、コンデンサ自体が悪かったのではなく、ただ単に耐圧の問題だったんじゃないかと思います。50W の出力に耐えられないパーツを選定した(または、SWR = ∞ になった)、そんな単純なミスが招いた煙だったんじゃないかと思っています。
続いて、千石電商で購入した同種のコンデンサ(100V)の ESR も調べてみました。
1500pF
ESR = 0.064Ω
@の価格も高いですが、ESR も低いです。
千石電商で買った他のフィルムコンデンサも調べてみましたが、ESR は総じて低い値です。
さらに、マルツで購入したフィルムコンデンサ(100V)の ESR です。
1500pF
ESR = 0.3Ω 程度で、秋月電子のものと同じような ESR です。
100pF
ESR = 1.142Ω
ほかの数個も同じような ESR で、約1Ω ありました。
LPF の製作で最終的に採用した、中華から購入したフィルムコンデンサ(2,000V)の ESR 測定です
リードが長いままでの測定です。(厳密な測定ではダメダメな環境です)
620pF
ESR = 0.22Ω
同値のものすべてをチェックしましたが、ESR は同じようなものでした。
1000pF
ESR = 0.16Ω
同値のものすべてをチェックしましたが、ESR は同じようなものでした。
ほかの所有するすべての 2,000V 耐圧の中華フィルムコンデンサを、ランダムで抜き出し ESR を調べてみましたが、いずれも ESR は 1Ω 以下でした。
ついでに、セラミックコンデンサの ESR も調べてみました
秋月電子の、積層セラミックコンデンサと、一般的なセラミックコンデンサの ESR をランダムに抽出して調べてみました。
秋月電子の、積層セラミックコンデンサ
100pF
ESR = 0.22Ω
470pF
ESR = 0.2Ω
1500pF
ESR = 0.2Ω
一般的な、セラミックコンデンサ
100pF
ESR = 4.9Ω
470pF
ESR = 1.3Ω
1500pF
ESR = 0.6Ω
今回の調査ではセラミックコンデンサを使うなら、電子工作の世界で一般的な茶色のセラミックコンデンサの使用はできるだけ避けるべきじゃないかということで、やっぱり、秋月電子あたりのちゃんとしたコンデンサを使うべきなんだと、改めてそう実感しました。(今ストックしているセラミックコンデンサから茶色のコンデンサをすべて排除して、青色の "積層コンデンサ" 一色に替えやろうかと画策中です。)
ということで、”NanoVNA V2 plus4(ハード)” と "NanoVNA V2+4(ソフト)" の組み合わせで、低インピーダンスなコンデンサの ESR を測定してみましたが、この一連の LPF 作りで使った中華製の 2,000V 耐圧のフィルムコンデンサは、いずれも ESR(ほかにも ESL や EPR もありますが)は 0.3Ω 以下と小さく、LPF の C としても十分な性能を有しているんじゃないかと思います。
今日は、コンデンサたちと戯れる一日でした。。。