前回に引き続き、今回も「アンテナ・マッチング」をテーマに、アンテナチューナーに関する疑問をマンガ形式で分かりやすくまとめてみました。
- アンテナチューナーで SWR を 1.0 にしても、それは無線機の終段回路を保護するためだけのものではないのか?
- 実際の電波の飛びは、SWR が悪い状態のときと変わらないのではないか?
- TVI などの電波障害を減らす効果はあるのだろうか?
本記事では、こうした 3 つの疑問について、できるだけ分かりやすく解説しています。















■ ■ ■
アマチュア無線で使用する アンテナカップラー(ATU)やオートアンテナチューナー は、よく「無線機を守るための装置」と言われますが、実際にはそれだけではありません。ただし 「アンテナ自体が良くなるわけではない」 という点も重要です。
アンテナチューナーの本質
アンテナチューナーは、
無線機 → アンテナ系のインピーダンスを整合する装置
です。
つまり、
無線機側から見たインピーダンスを 50Ω に変換
無線機が正常に電力を送り出せるようにする
という働きをします。
重要なのは、「アンテナ自体の SWR は改善していない」という点です。
| 状態 | 無線機側SWR | アンテナSWR |
|---|---|---|
| チューナー無し | 3.0 | 3.0 |
| チューナー有り | 1.0 | 3.0 |
このように、アンテナ側は依然として 3.0 のままです。
それでもメリットはある
「無線機保護以外のメリット」は実際に存在します。
① 無線機がフルパワーを出せる
最近の無線機は、SWR が悪いと出力を落とします。
例えば、SWR 3 以上になると出力が 50% などに落ちますが、ここにチューナーを入れるとフルパワーで送信可能になります。これは実際の飛びに影響します。
② 反射電力を再利用できる
アンテナチューナーの大きな役割です。
SWR が悪い場合、
- 一部の電力が反射
- 送信機に戻る
チューナーは、この反射電力を再びアンテナに送り返すことができます。そのため、チューナー無しより実際に放射される電力は増えることがあります。
③ マルチバンド運用ができる
これが最も実用的なメリットです。
例えば、
| 周波数 | SWR |
|---|---|
| 7MHz | 1.2 |
| 10MHz | 3.0 |
| 14MHz | 4.0 |
この状態で、チューナーを使うと、14MHz でも送信可能になります。つまり、1 本のアンテナで複数バンド運用が可能になります。
④ 給電線の電力を有効利用できる
SWR が高いと、同軸ケーブルで、
- 反射
- 損失増加
が発生します。チューナーが送信機側で整合してくれるため、ある程度の電力をアンテナに送り込めます。
※ ただし同軸の損失は増えます
TVI(テレビ障害)は減るのか
これは 基本的には関係ありません。
理由は、TVI の主原因は、
- 強すぎる電界
- 高調波
- コモンモード電流
アンテナチューナーは、これらを直接改善しません。むしろ、場合によっては、コモンモードが増えることもあります。
チューナーのデメリット
① 同軸の損失が増える
SWR が高い状態で同軸を使うと損失が増えます。
例えば、SWR 1 → 損失 1dB、SWR5 → 損失 3〜6dB となり、つまり、ケーブルで電力が熱になる可能性があります。
② 本当のアンテナ性能は改善しない
SWR が 1 でも、
- 放射効率
- 利得
- 指向性
は変わりません。極端な例でいえば、電気的に短いアンテナは、チューナーで SWR 1 にしても飛びません。
③ RF電流の偏り
アンバランスな整合をすると、
- コモンモード電流
- シャック内に高調波
が発生することがあります。その結果、
- マイクに高調波
- パソコンの誤動作
- TVI(今だとインターフォン I など)
の原因になることがあります。
本当に飛ばしたい場合の優先順位
アマチュア無線では基本的に、
- 良いアンテナ
- 良い設置
- 低損失ケーブル
- チューナー
です。
つまり、アンテナチューナーはアンテナ改善の代わりにはならないということです。
まとめ
| 項目 | 効果 |
|---|---|
| 無線機保護 | ◎ |
| フル出力可能 | ◎ |
| 反射電力再利用 | ○ |
| マルチバンド化 | ◎ |
| 電波の飛び改善 | △(場合による) |
| TVI低減 | × |
| 同軸損失 | 増える |
ベテランのハムや DXer は、チューナーに頼らないことが多いです。
理由は、
- 専用バンドアンテナ
- 完全共振
- SWR 1.2 以下
つまり、チューナーは便利装置という位置付けという考えです。
