JH1LHVの雑記帳

和文電信好きなアマチュア無線家の雑記帳

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NanoVNA と tinySA の活用について

近年登場した NanoVNA と tinySA という測定器が注目されています。これらは、数千円程度で購入できる小型の測定器で、スペクトラムアナライザやベクトルネットワークアナライザの基本的な機能を持っています。ところが安価なゆえに入手したはいいけど一度も使ったことがないという、積み測定器になっているハムも多いのではないでしょうか。

「アマチュア無線では高周波回路の特性を測定することがよくある」というような記事をよく目にしますが、本当にそうなのでしょうか。現代のアマチュア無線環境を考えると、このような測定の必要性を感じるハムは少ないのではないでしょうか。

NanoVNA についていえば、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)と呼ばれる測定器であり、高周波回路の入力と出力の関係を測定することができます。具体的には、回路の周波数特性やインピーダンス特性、反射係数や伝送係数などが測定できます。これらの情報は、回路の設計や調整に必要なものでありフィルターの通過域や減衰域、アンプの利得や帯域幅などを測定することができます。

昨今、マイコンや半導体素子の進化は目覚ましく、その結果、無線機の自作はハムの黎明期に比べて格段に容易になりました。これは、技術の進歩が私たちアマチュア無線家にとって大きな恩恵をもたらしていることの一例です。しかし、免許取得の手間暇や、メーカー製の高性能無線機が手頃な価格で市場に出回っている現状を鑑みると、NanoVNAの 使用機会は限られてくるかもしれません。特に、技適を受けた無線機は、そのまま使える利便性があるため、自作の必要性を感じにくいはずです。

ただし、電波を出すためにはアンテナだけは必要になるため、ハムとしてアンテナの状態を把握することは基本中の基本であり、NanoVNA はアンテナの SWR 測定に非常に有効です。専用のアンテナアナライザーは数万円することを考えると、NanoVNA はコストパフォーマンスに優れた選択肢と言えます。

www.jh1lhv.tokyo

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一方、tinySA はスペクトラムアナライザーで、高周波信号の周波数成分や強度を測定します。信号の品質や特性を知るのに便利ですが、無線機の自作をしない限り、NanoVNA よりも使い道は限られるでしょう。所有するメーカ製無線機のスプリアスを測定することに技術的興味以外に得られるメリットは考えられません。それに、アッテネータやダミーロードなどの測定治具も必要になり、これらの治具を揃えるコストを考えると、tinySA は必要ないかもしれません。

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私の気持ちとしては、これらのツールは、多彩な機能を持ちながら価格も手頃であり、アマチュア無線界ではもっと活用されることを期待しています。もし自作無線機で実験しながら電波を出せるような免許制度になれば、NanoVNA と tinySA の価値はさらに増すはずなのですが、残念でなりません。

ところで、最近 CQ 出版から「tinySA 活用ガイド」が発売されました。発売日に入手し、現在熱心に読んでいます。


tinySA 活用ガイド 

 

ハムの技術的測定に没頭しているオタク系女子(イメージ)