JH1LHVの雑記帳

和文電信好きなアマチュア無線家の雑記帳

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NanoVNA(SWR 測定専用)

わたしの NanoVNA は SWR 測定専用としてセッティングしてます。
電源オンの起動時は、CH0 だけで Smith chart と SWR  だけを表示するようにしています。

フィルタの設計とか調整とかの用途がなければ、基本 CH0 の S11 パラメータだけで十分で、それにあの起動時ごちゃごちゃ画面も嫌いなんで・・・CH0 だけのシンプル画面がイチバン心地いいのです。

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ハムのアンテナ接栓は M 型コネクタが多いので、わたしは "MJ-SMAP ケーブル"(13cm)を接続して校正を行ってます。

  • START → 1MHz
  • STOP → 500MHz
  • TRACE 0 → SMITH(Smith chart)
  • TRACE 2 → SWR
  • MARKER 1 のみ

基本はこれで校正して、SAVE 0 に保存します。(起動時は自動で SAVE 0 の内容が読み出されます。)
測定するハムバンドが決まってるなら、そのバンドの周波数範囲を START と STOP に設定します。

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これ、自宅のバンザイ・アンテナ、7メガ帯の SWR とそのインピーダンスなんですが・・・
イマイチ、悪いんですよね。。。

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(iPhone アプリ、RF-Toolbox で計算)

リアクタンス Xc は、この式から 32.99 Ω ということが分かります。
(NanoVNA の CH0 に REACTANCE を追加して X を表示するのが簡単ですが、ここでは SWR 測定専用としているので必要最小な項目としています。)

で、アンテナ作りをやってる人達は、このインピーダンス Z = 71.0 - j 32.99 の虚数部分をゼロにするため、コイル、コンデンサを直列や並列に入れてマッチングをとっています。

そして、71.0 - j 32.99 を 50Ω にマッチングするために必要なコイルのインダクタンスやコンデンサのキャパシタンスは、イミッタンスチャート(スミスチャート+アドミタンスチャート)を使って求めるのが一般的です。

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アンテナチューナは、コイルやコンデンサの値を自動で変えながら、50.0 + j0 に強制的に合わせる機器になります。

7メガバンド内がどこでも、素の状態で Z = 50.0 + j 0 なら SWR は 1.0 なんですけど・・・
そんなことは絶対にムリだからねぇ、アンテナは適当なところで妥協が必要です。

それに、アンテナのインピーダンスは天候でも変わったりするので、やっぱりアンテナチューナは必須で、無線機の終段を壊さないためにも、チューナさんに身代わりになってもらう必要があるんですね。

www.jh1lhv.tokyo

少し、校正のはなし 

まず、付属のジグ(SHORT、OPEN、LOAD)をそのまま NanoVNA の CH0、SMA-J に接続して校正してみました。 

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Open → マーカの位置はちゃんとレジスタンス(R)目盛りのイチバン右側の ∞ Ω に表示されてます。
 

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Short → イチバン左側の 0 Ω に表示されてます。

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Load → 中心付近の 50Ω に表示されてます。

次に、NanoVNA の SMA 端子をジグ直接接続から、下の3種類の変換ケーブルに変えて校正ジグを取り付けて測定してみます。

変換コネクタとケーブルを含めた周波数に対するロスの測定です。
このロスが小さいほど、優秀なコネクタ、そして測定ケーブルということです。

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先端 M コネのメス、3種です。 
校正ジグ側は、MP - SMAJ 変換コネクタを使います。

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1MHz から 500MHz で SWR はこういう感じで波を打ち、410 MHz 付近で 1.36 を示しました。
インピーダンスも円は小さいですが、ナルト的に変化してます。 

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こんな短いケーブルでも、理論上理想的な(?)直線で増加してます。

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どこで買ったか忘れたけど、M 型のコネクタなんてこんなもんなんでしょうね。
430メガとかでこういうコネクタを使ったりすると、もうこれだけで SWR は高くなってしまいます。

ということで、NanoVNA のデフォルトの変換コネクタとして、こういった単品変換コネクタの使用はおススメできませんね。それに、結構、変換コネクタって重いので NanoVNA 本体の SMA コネクタにモロかかってくるので破損の危険も大ありです。

わたしとしては危険回避とケーブルの接続の容易さを考慮して、13cm の MJ - SMAP 変換ケーブルをデフォルトの測定ケーブルとして常用することにしております。

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結果として、最終的な校正はこの測定ケーブルを接続した状態で行っております。

と、このように NanoVNA の校正は、
測定対象ケーブルが接続される最後のところ(基準点)を含んだ形で行います。

ようするに、NanoVNA の SMA 端子に測定ケーブルを接続して校正を終えたら、もう二度とその測定ケーブルは外さない、そういう構成にしておくのがイチバンです。

■ ■ ■

 

ところで、アナログテスターって知ってますか。
指針の振れで教えてくれるやつです。

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これ、抵抗を測る前に必ず、リード棒の + と ー をショートして、ADJ ツマミでゼロに合わせてから使いますよね。
NanoVNA の校正もこれと同じで、ちゃんと校正しないと結果がズレちゃうんです。

とはいっても、アンテナの SWR 程度の測定なら、そんなに神経質にならなくてもいいんですがね。

■ ■ ■

 

VNA は、ベクトル・ネットワーク・アナライザといって、高周波を測定する測定器としては最高級のもので、その昔なら VNA 1台で乗用車が1台買えるくらいの高価なものだったんです。

VNA って、ハムにとって夢の測定器だったんですね。

それが、コンピュータ技術の進化も相まって、nanoVNA という VNA 測定器が、たったの数千円で入手できるそんな時代になったなんて、ホント、この先なにが起こるか分からないですね。

で、そもそもこの VNA なんですけど。
高周波信号の伝達特性を測定するものなんですよね。
無線機の中って、物凄い数のフィルタがあるんですが、そのフィルタ回路の設計や調整なんかに欠かせない測定器が、この VNA なんです。

そういう VNA も・・・今となってはイチから無線機を自作する人なんて、ほぼほぼいないので。。。

せっかく、夢のような測定器がお手軽に入手できるというのに、今のハムには VNA を持ち出すような場面もないというのがホントのところで・・・皮肉な話です。

せいぜい自作しないハムとしては、アンテナの SWR を確認するためだけのアンテナアナライザとして使うことくらいしかないんじゃないかと思います。

NanoVNA は専用のアンテナアナライザと比べたら、もう 1/10 以下とかで買えるバカ安なんで、是非とも入手して、自宅のアンテナ整備にお役立ていただければと思います。