今回はアマチュア無線をやっている方なら一度は憧れたことがあるかもしれない「DXCC」アワード取得のお話です。年末に ARRL(American Radio Relay League)の DXCC を申請し、先日ついに手元に届きましたので、受領までの流れや DXCC の概要、そして私自身の心境などをまとめてみました。
DXCCとは?
DXCC(DX Century Club)は、ARRL が運営する世界的に有名なアワードです。国(もしくは地域)ごとに定められた「エンティティ」を通算で 100 以上交信し、交信実績が証明できれば、晴れて “DXCC” を取得できます。DXCC はアマチュア無線の世界では最も歴史があり、知名度も高いアワードの一つとして知られ、バリエーションも「Mixed」「SSB」「CW」「Digital」など複数用意されていて、モードごとに追加で申請が可能です。
LoTW や FT8 のおかげでハードルが下がった DXCC
私は JHILHV という再割り当てコールを取得して以来、ARRL の LoTW(Logbook of The World)を活用してきましたが、もともとはただの「CW好き」というだけで、DX を意識した運用はほとんどしていませんでした。
ところが、ここ数年で急速に普及したデジタルモードの FT8 を始めてみたところ、世界各国の局と驚くほど容易に交信できるようになりました。そこでふと ARRL のウェブサイトで DXCC の進捗を確認してみると、いつの間にか 100 エンティティを大幅に超えていたことが判明。「それなら Mixed で申請してみよう」と思い立ち、年末にオンライン手続きを行い、先日無事にアワードが届きました。
Amazonで購入できる DXCC 専用の額縁に入れて、部屋にきちんと飾ろうかと考えています。
Mixed 取得の喜びと CW 特記への想い
私は普段、HF で SSB を使うことがほとんどありません。そのため、今回の申請は CW と FT8 による「Mixed」での取得となりました。CW が大好きな身としては「CW 特記」のアワードが一番理想的なのですが、その点だけは少し残念です。
とはいえ、実際にアワードを手にするとやはりモチベーションが高まります。「次回は CW のみで申請できるよう、もう少し力を入れてみようかな」と改めて感じました。
申請手続きはウェブだけで完結
DXCC の申請は ARRL のウェブページ上で行います。必要情報を入力し、LoTW で管理している交信証明を使えば、紙の QSL カードを一切送らずに申請可能です。今回私も、LoTW のみの交信証明だけで申請は完結しました。
- 申請フォームの入力
・必要事項やクレジットカード情報を入力して送信するだけです。 - 申請料の支払い
・私の場合は、約1万円(9,553円)かかりました。クレジットカード決済であっさり完結します。("Credits” 数に応じて課金されるので、必要最小限の交信だけを申請すると費用を抑えることができます。) - ARRL 側での審査
・審査に約2か月ほどかかり、その後に引き落としが確定します。 - 発送通知がメールで届く
・「DXCC アワードを UPXE で発送した」という通知を受け取り、配送状況の追跡も随時メールで行われました。 - 到着
・私の場合は2025年2月22日に USPS で無事に到着しました。
紙 QSLでの申請を含める場合は、ARRL 本部に QSL カードを一式送るか、JARL 会員向けサービス「DXCC フィールドチェック」を利用して所持証明をしてもらう必要があります。これは郵送か直接持ち込みでの対応となるので、正直ちょっと手間がかかります。
最近は LoTW の普及もあり、より手軽にアワード申請ができるようになっている点はとってもありがたいです。
IRC や QSL カードへの思い出
今回の DXCC は気づけばあっけなく取得してしまいましたが、私が最初に宮城県で開局した昭和の時代は、「いつかは DXCC に入りたい!」という強い憧れがありました。あの頃は日夜 DX を追いかけ、高価な IRC(国際返信切手券)を数枚同封して QSL カードを送ってもらうなど、今となっては懐かしい苦労もしました。しかし、結局は 100 エンティティに届かず終わってしまいました。
それが今では FT8 の普及と LoTW の便利さによって、「これでいいのかな?」と思うほど簡単に 100 越えできることに感慨深いものがあります。もちろん QSL カードで世界各地のカードデザインを集める醍醐味は捨てがたいですが、アワード取得という観点からは LoTW だけで十分という時代になったと実感しています。
取得した DXCC アワードはどこまで “価値” がある?
(ここからは “心の声” です。。。)
私が昭和の頃に開局した当時(現在も継続中の JR7FHN)は、海外局との交信でエンティティ数を競い合い、仲間同士で QSL カードを見せ合うのが一つの楽しみでした。まるで今のポケモンカードや遊戯王カードを集めるような感覚で、カードを収集すること自体が大きなモチベーションになっていました。
ただし QSL カードは、いわゆる金銭的なプレミア価値が付くわけではありません。そこに記録されているのは交信日時や周波数、コールサインなど、ある意味 “個人情報” に近いもので、他の人が見ても価値を感じられるものかどうかは微妙です。実際、段ボール何箱分もの QSL カードを泣く泣く処分したという話を、ハム仲間の会話で耳にするたびに、私も寂しさを感じます。カード自体に財産的価値があれば家族に引き継いでもらうこともできるかもしれませんが、そういう性質のものではないんですよね。
そのため最終的には、自分自身で整理や処分をしなければならない日が来るかもしれないと思うと、どうしても切ない気持ちになります。1エリアでコールサインを取得してからというもの、「DXCC を取って何になるの?」という葛藤がずっとありました。自己満足だけの世界で、いまさらどこまでエンティティを伸ばせるのか疑問を抱いていたのも事実です。
とはいえ、昭和時代に熱狂した憧れの DXCC という存在は、ずっと心の片隅にあったのも確かです。あの頃は、深夜まで DX を追いかけたりしながら、高価な IRC を送って一生懸命 QSL カードを集めて、「いつかは DXCC!」と夢見ていました。だからこそ今回、LoTW と FT8 の普及によって思いのほか簡単にエンティティ数が増えていき、気がついたら 100 を超えていたという事実に、少し戸惑いながらもまた妙な感慨深さを感じてしまいました。
正直、「今さら DXCC を申請しても、結局は自分だけが喜ぶものだし、いつかは処分することになるかも・・・」と思い、「もういいかな」と考えたこともありました。しかし、実際に申請して届いたアワードを手にすると、あの昭和の頃に抱いた憧れが報われたような感覚が込み上げてきて、素直に嬉しかったです。自己満足といえばそれまでですが、それでも自分の中で大きな区切りになったと思います。
そしてこうしてブログに書くことで、かつての “カード集め自慢” のように、「DXCC を取ったぞ!」と披露したい気持ちがあるのも事実です。子供の頃のコレクション熱が再燃したといいますか・・・やはりアワードを手にすると、モチベーションがぐっと上がりますね。
次のステップはやっぱり CW 特記での DXCC。
私が一番好きなモードですし、Mixed の取得だけで終わらせるには惜しい。今後も少しずつ、CW で DX 局と交信を重ねていって、 LoTW 上の QSO レコードを増やしていきたいと思います。自己満足かもしれませんが、その過程にこそハムライフの醍醐味が詰まっているのではないでしょうか。
昔と違ってハム人口が減り、430MHz の FM をワッチしていても DXCC の話題が聞こえてくることはめっきり少なくなりました。それでも、私にとってはまだまだ夢の続きがありますし、一人でも仲間が増えて同じようにハムを楽しんでくれたら嬉しいですね。結局「価値」は自分が決めるものです。そう思えるからこそ、DXCC アワードは今でも私にとって大切な存在なのだと思います。
実際のタイムライン
- 2024-12-28 申請(クレジットカード決済)
- 2025-02-11 9,553円(AMERICAN RADIO RELAY LEAG)引き落とし確認
- 2025-02-22 USPS にてアワード到着
ウェブ申請から到着まで約2か月ほどでした。チェック期間と国際郵送の時間を考えれば、このくらいのスパンは想定内です。
おわりに
DXCC はアマチュア無線を趣味としている方であれば、一度は耳にしたことがあるほどポピュラーなアワードです。しかし、「100 エンティティ達成がゴール」ではなく、200、300、オーナロール、モード別やバンド別など、その先に広がる多彩な楽しみこそが最大の魅力だと感じています。私自身、今回 Mixed での取得でしたが、次は大好きな CW 特記での DXCC を狙って、もうひと踏ん張りしてみようと思っています。
もし DX に興味がある方で、まだ DXCC の会員になっていない方がいらっしゃいましたら、ぜひ LoTW や FT8 を活用してみてください。開局当初、夢に描いていた “DXCC 申請に必要な 100 エンティティ” を、思いのほか早く超えてしまうかもしれません。
皆さんの DXCC チャレンジが実り多いものとなるよう、心からお祈りしています!