
このページは、当ブログで公開している練習ツール(モールス短期習得(欧文)、Learning Morse、コールサイン受信練習)を、どういう順番で使うと迷いにくいか、一つの例としてまとめたものです。
モールスの独習に「これが正解」という近道があるわけではありません(この点については以下の記事に書いた通りです)。あくまで、道具の使い方に迷ったときの目安として、参考にしてください。
全体像
| フェーズ | 目的 | 使うツール | 目安期間 |
|---|---|---|---|
| フェーズ 1 | 全文字を「音の形」として一括認識できるようにする | モールス短期習得(欧文) | 1〜2週間 |
| フェーズ 2 | 自分の弱点ペアだけを狙い撃ちで潰す | Learning Morse | 継続(フェーズ1と並走可) |
| フェーズ 3 | 実際のコールサインを実戦速度・実戦ノイズで聞き取る | コールサイン受信練習 | フェーズ1完了後、継続 |
3つのフェーズは明確に区切る必要はありません。フェーズ1がひと通り終わった時点でフェーズ3に進み、フェーズ2は常に「補習」として並行させるのが現実的な運用です。
フェーズ 1:欧文トレーナーで文字を一括認識する
使うページ: モールス短期習得(欧文)
このページの構成
A 〜 E → F 〜 J → K 〜 O → P 〜 T → U 〜 Z → 数字 → 記号、という順にグループが並び、各グループの後に「そのグループ内のランダム出題」、さらに数グループごとに「そこまでの累積ランダム出題」が用意されています。1グループずつ確実に押さえてから次に進む、階段状の構成です。
※ この並び順はアルファベット順であり、音の混同しにくさを基準にした並び(コッホ法などで使われる順序)ではありません。とはいえ「少しずつ文字を追加し、追加のたびに累積ランダムで復習する」という骨格そのものは、段階的習得の考え方として理にかなっています。焦らず、このページの構成どおりに進めてください。
設定の使い方
- 文字間:「標準×5」など広めの設定から始め、慣れてきたら「標準×3」「標準×2」「標準」と徐々に詰めていきます。Speed(wpm)自体は最初から下げすぎないのがポイントです。文字そのものの音の速さは終始一定に保ち、文字と文字の間隔だけを広げて聞き取りやすくする、という考え方です。
- Frequency(Hz):自分の耳に一番聞き取りやすい高さに固定してください。途中で変えると学習した「音の記憶」がリセットされやすくなります。
進め方
- 各グループを、符号表を見ずに、音だけを頼りに聞き取る。
- そのグループの「ランダム出題」で迷いなく答えられるようになったら次のグループへ。
- 「A 〜 Z ランダム」「A 〜 0 ランダム」に到達したら、このページでの練習は仕上げ段階です。ここを重点的に繰り返してください。
- 6日目の数字まで一通り聞き取れるようになったら、フェーズ1は完了です。
この段階でやらないこと
似た文字(S/H/5、V/4など)だけを意図的に集中出題する、といった練習はまだ不要です。それはフェーズ2の役割です。ここではまず、全文字を「数えずに」音の形として認識できるようにすることを優先してください。
フェーズ 2:Learning Morse で弱点ペアを潰す
使うツール: Learning Morse(Windows アプリ、32bit/64bit)
このアプリでできること
任意のテキストを貼り付けて、その内容を繰り返し送出させることができます。この機能を使えば、自分が実際に間違えやすい文字・文字列だけを集めた練習セットを、自分で作ることができます。
具体的な手順
- 受信練習中に「ん?」と一瞬つまずいた文字を、そのつどメモしておく。
- メモ帳などで、その文字・文字列を並べたテキストを作成する(例:S H 5 S H 5 H S 5 ... のように、混同しやすいものだけを固めて並べる)。
- Learning Morse にそのテキストを貼り付け、速度を上げたり下げたりしながら、繰り返し聞く。
- 「ん?」というつまずきの感覚がなくなる速度が、今の自分にとっての適正受信速度です。
弱点になりやすい組み合わせの例
一般的によく混同されるペア・グループを挙げておきます。自分の弱点と照らし合わせてセットを作る際の参考にしてください。
- 長さの混同:S(・・・)/ H(・・・・)/ 5(・・・・・)、V(・・・-)/ 4(・・・・-)
- 順序の混同:K(-・-)/ R(・-・)、Q(--・-)/ Y(-・--)、B(-・・・)/ D(-・・)/ N(-・)
- C の聞き取り:C(-・-・)は KE(-・- ・)や NN(-・ -・)、TR(- ・-・)のように途中で切って誤読されやすい文字です
補足:なぜこの練習法が効くのか
似た符号をあえて連続で対比させながら聞くと、その場では聞き間違いが増えて疲れますが、長期的にはその文字ペアの識別力そのものが底上げされることが知られています(心理学でいう「文脈干渉効果」に近い現象です)。フェーズ1で全体の土台を作った後にこの練習を挟むと、効果が出やすくなります。
一方で、この練習をフェーズ1より前にやりすぎると、「数えて区別する」癖がついてしまい、かえって速度の伸びを妨げることがあります。必ずフェーズ1をひと通り終えてから、弱点だけをピンポイントで使うようにしてください。
フェーズ 3:コールサイン受信練習で実戦力をつける
使うページ: コールサイン受信練習
このページの構成
アルファベットと数字の6文字からなる国内コールサインを、実際の受信練習として繰り返し聞くページです。聞き取りゲームモード(5問/10問/20問)を使えば、実際に回答して答え合わせをするところまで一貫してできます。
設定の使い方
- Speed(wpm):「かろうじて聞き分けられる」くらいの速度に設定するのが推奨されています。楽に聞き取れる速度で続けても伸びしろが小さいためです。
- ノイズ(S:N 比):最初は「なし」から始め、慣れてきたら S:N = 1:1 → 1:1.5 → 1:2 と、徐々に厳しい条件に上げていきます。実際の運用ではノイズの中から信号を拾う場面がほとんどなので、早い段階からノイズ耐性もセットで鍛えておくと後が楽です。
- 送出数:50/100 から選べます。最初は50で、慣れたら100に。
進め方
- 1日5分。 短時間でよいので、毎日欠かさず聞き続けることを優先してください。
- スコアを記録し、正答率の推移を追うと、自分の伸びが実感できます。
- フェーズ1をひと通り終えた段階からこのフェーズに入って構いません。文字の聞き取りに自信がなくても、実戦形式の中で自然と鍛えられていきます。
共通ルール(3つのフェーズすべてに共通)
- 符号表を見ながら練習しない。 表は確認用であって、聞きながら参照するものではありません。
- 速度そのものは下げすぎない。 間隔(文字間・語間)で調整し、文字自体の音の速さは早い段階から一定に保つ。
- 送信の練習も並行して始めてよい。 受信の土台づくりと送信フォームの習得は別トラックとして並走させたほうが効率的です。
- 毎日、短時間でも継続する。 特にフェーズ3のコールサイン練習は、5分でよいので習慣化することが最優先です。
進捗チェックリスト
- 欧文トレーナー:A 〜 E グループ、迷わず聞き取れる
- 欧文トレーナー:F 〜 J グループ、迷わず聞き取れる
- 欧文トレーナー:K 〜 O グループ、迷わず聞き取れる
- 欧文トレーナー:P 〜 T グループ、迷わず聞き取れる
- 欧文トレーナー:U 〜 Z グループ、迷わず聞き取れる
- 欧文トレーナー:数字グループ、迷わず聞き取れる
- 欧文トレーナー:A 〜 Z ランダム、迷わず聞き取れる
- 欧文トレーナー:A 〜 0 ランダム、迷わず聞き取れる
- Learning Morse:自分の弱点ペアのリストを作成した
- Learning Morse:弱点ペアを「ん?」とつまずかない速度まで潰した
- コールサイン受信練習:ノイズなしで安定して聞き取れる
- コールサイン受信練習:S:N = 1:1 でも安定して聞き取れる
- コールサイン受信練習:1日5分の習慣が2週間続いている


