USB マウスを分解してパドルと電鍵をワイヤレス化する試みです。
はじめに
K3NG キーヤーのスケッチで USB 機能が使えることをご存じの方もいらっしゃると思います。前回は Arduino CW Keyer に USB ホストシールドを組み込み、USB キーボードやマウスを接続して CW を送信できるようにしました。
今回は、K3NG キーヤーのスケッチが備えている
- 左クリック: 短点
- 右クリック: 長点
- 中央ホイールボタン: トーン送出
といった機能を、ワイヤレスマウスで試してみることにしました。
なぜワイヤレスマウスを使うかというと、ケーブルがないぶん、込み入ったシャックでも遠隔で CW を送信できるのではないかと期待しているからです。ただし、マウスの基板やバッテリーの収納など、実際の運用では少々課題もあり、どの程度メリットがあるかは正直微妙なところです。
とはいえ、「こんなこともできるのか!」くらいの気軽な気持ちで読んでいただければ嬉しいです。
ワイヤレスマウスを購入・分解する
実験用として、まずは Amazon で最も安価(800円程度)のワイヤレスマウスを購入しました。安いマウスであれば壊れても惜しくなく、基板の取り出し目的には十分です。
分解方法はとても簡単でした。
- マウス裏側の電池蓋を外す。
- 蓋の下にあるプラスネジ1本を外す。
- 上下のケースを分離する。
機種によっては、底面に貼られたソール(滑りを良くするシール)の下にネジが隠されている場合もあるので、各自で確認してください。今回のマウスは電池蓋を外すだけでネジが見えたので、作業はとても楽でした。
上下のケースを分離すると、中身はほぼ 1 枚の基板だけ。LED やセンサーなどマウス特有のパーツが付いていますが、今回の目的では不要だったため、一部のパーツは取り外してしまいました。
マウス基板を別ケースに組み込む
取り出した基板をそのままエレキー用パドルやストレートキーの筐体に収められれば見た目もスッキリして格好良いのですが、意外と基板が大きく、しかも単4電池を2本使うためスペースをとってしまいます。
そこで今回は、ワイヤレスマウスの基板を小さなケースに収め、そのケースに以下の2種類のジャックを取り付けることにしました。
- エレキー用ジャック
- ストレートキー用ジャック
こうすることで、
- パドルをつないで通常のエレキーとして操作できる
- ストレートキー(電鍵)をつないで操作できる
という2通りの使い方が可能になります。
単4電池を2本収めるための電池ボックスと、動作確認用に LED(+220Ω の抵抗)を取り付けました。
電池ボックスはケースのフタ裏面に接着剤で固定しました。
ケースには、パドル用ジャックと電鍵用ジャック、さらに電源ボタンと LED を取り付けています。
Arduino CW Keyer に搭載した USB ホストシールドに、ワイヤレスマウスの小型レシーバーを接続して並べてみました。
実際にパドルと電鍵を接続してテストしたところ、数メートル離れた場所からでも遅延なく動作しました。
なぜワイヤレス化するのか
正直なところ、ここまで作業を進めても「ワイヤレスにして本当によかった!」と感じるほどの大きなメリットは、あまり得られませんでした。パドルの操作は無線機の近くですることがほとんどなので、ケーブルを接続しても不便は感じないのが現状です。さらに、ワイヤレス化する分、電池の管理や基板の収納、ちょっとした改造などの手間が増えるのも事実です。
ただ、あえてメリットを挙げるとするならば、エレキーのパドルと電鍵の2種類を同時に取り回せる点でしょうか。
まとめ
今回の取り組みは、前回の記事「USB キーボードを使用する」で紹介した USB ホストシールドと K3NG キーヤーのスケッチを応用し、ワイヤレスマウスの基板を使って CW を送信してみた事例です。結論としては、「運用上、目立ったメリットは感じにくいかもしれないが、ちょっとした電子工作としては面白い」というのが率直な感想です。
アマチュア無線の楽しみ方は人それぞれで、こうした工作や改造に時間をかけること自体が趣味の醍醐味でもあります。今回のように、一見 “ムダ” に思えることでも、その過程で得られた経験や話題はハム仲間とのコミュニケーションのきっかけになるはずです。
もし興味があれば、安価なマウスで実験してみるのも良いと思います。もちろん自己責任にはなりますが、こうした自由な発想での工作こそがアマチュア無線の魅力だと思います。ぜひ皆さんも、ご自身のアイデアをプラスして楽しんでみてください。
今後も Arduino CW Keyer に関連する記事をアップしていく予定ですので、引き続きよろしくお願いします。