JH1LHVの雑記帳

和文電信好きなアマチュア無線家の雑記帳

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アマチュア無線とデシベル 〜初心者とベテランの対話〜

dBμV・dBm 変換表の作成

私の最近のマイブームは 12dB SINAD の測定です。この測定作業を効率的に行うため、「dBμV to µV, dBm, and mW Conversion Table (50Ω)」という変換表を Excel で作成しました。

作成した変換表は A4 サイズで印刷し、ハードケースに入れて必要な時にすぐに参照できるようにしています。

アマチュア無線の受信感度測定

アマチュア無線の世界では、無線機の受信性能を評価する際に 感度測定 が重要であり、特に FM(周波数変調)方式では 12dB SINAD を基準とした測定方法が広く用いられています。また、この感度測定に用いられる 12dB SINAD をはじめ、無線通信では 「dB(デシベル)」 という単位が頻繁に登場します。しかし、初めて学ぶ人にとっては「なぜ使うのか?」「どのように計算するのか?」と疑問に感じることも少なくありません。

今回は、デシベルの基本概念を初心者向けにわかりやすく解説し、アップロードした dBμV・dBm 変換表を活用する方法を紹介します。

 

女の子:好奇心がいっぱいの初心者ハム
男性:近所の無線好きな OM
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アマチュア無線機の受信性能を評価するには、感度測定が重要なんですよね?

特にFM(周波数変調)方式では 12dB SINAD を基準にすることが多いと聞きました。でも、これを測定する際に dBμV(デシベルマイクロボルト)や dBm(デシベルミリワット)を使うらしいのですが、いまいちピンとこなくて・・・。

そうですね、12dB SINAD を基準にした感度測定は、FM 受信機の性能を評価する際によく使われます。

詳しい説明は以前にもしましたが、簡単に言うと、これは受信した音声の品質を測るための基準です。そして、信号の強さを数値化するために dBμVdBm といったデシベルの単位が使われます。

※12dB SINADとは?
SINAD は「Signal to Noise And Distortion」の略で、受信音の 信号対雑音・歪み比 を表します。
12dB SINAD の基準は以下のようになります。

(入力信号の強さを変えながら測定)
FM 受信機に一定の周波数の信号を入力し、入力信号の強さを変えて受信機の出力信号をミリバルで測定します。

(SINAD 比が 12dB になったときの入力レベルを記録)
受信機からの出力信号の SINAD 値が 12dB になった時点の入力信号レベル(dBμV)を記録し、それを感度として評価します。

なるほど。でも、そもそも デシベル(dB)って何なんですか?
なぜこんな単位を使うんですか?

 

デシベル(dB)の基本概念

 

いい質問だね!

デシベルは、とっても大きな数や小さな数を、わかりやすく表すための方法 なんです。

へぇ~、でも、普通にそのまま数を書いたらダメなんですか?

もちろん書いてもいいんだけど、無線の世界では 数の変化がものすごく大きい から・・・。

たとえば、無線の信号の強さは『1μV(マイクロボルト)』のようなすごく小さい値から、『100V』のような大きな値まであるんですよ。

対数とは?

確かに、0.000001 と 100 って全然違うなぁ・・・。

そうですね!
それを 対数(log)という考え方を使って、シンプルに表すんです。

ところで、対数って何んですか?
学校で習ったような・・・習ってないような・・・。

それじゃ、簡単に説明するね。

まず、普通の数の増え方から。
たとえば、2, 4, 8, 16, 32 っていう数列があったとすると、これは 2 倍ずつ 増えているよね。

こういう増え方を『指数(べき乗)』っていうんです。つまり、

    

こんな感じで、数字がどんどん大きくなっていきます。

じゃあ、今度は逆に考えると・・・
もし『32 は 2 を何回かけた数?』って聞かれたらどうしますか?

えっと、2 を何回かけたかを数えればいいので・・・5 回です!

そのとおり!

この『かけた回数』のことを 対数(log) って呼びます。

2 を 5 回かけると 32 になる → 25=32
32 は 2 を何回かけた数? → 対数で表すと log2(32)=5

へぇ!
対数って『何回かけたかを調べる方法』なんですね!

無線でよく使うのは「10 の対数」

でも、この対数が無線の話に出てくるデシベルとどう関係があるんですか?

無線の世界では、数字が 10 倍ずつ増えていくことが多いから、10 を基準にした対数を使います。

たとえば、こんな数の増え方があったとします。
    
ここで、もし 1000 は 10 を何回かけた数? って聞かれたら?

え~・・・ 3 回です!

正解です!

だから、対数で書くと log10(1000)=

なるほど!

10 倍なら 1、100 倍なら 2、1000 倍なら 3 ってことですね?
桁数が大きくなると対数のほうが扱いやすくなるんですね。

そういうことです!

だから、無線の信号の強さが 1000倍 になったら +30dB1/1000 になったら -30dB って表せるようになります。

特にアマチュア無線の交信では、信号が非常に微弱な場合もあるので、通常の数値では扱いにくくなります。そこで、対数を使うことで、わかりやすく表記できるわけです。

デシベル(dB)の計算

でも、電力と電圧で計算が違うって聞いたことがありますけど・・・。

はい、電力(W)と電圧(V)ではデシベルの計算方法が異なります。

・電力比のデシベル(dB)

dB=10×log10(P2P1)
電力が10倍になると +10dB、1/10 になると -10dB

・電圧比のデシベル(dB)

dB=20×log10(V2V1)dB = 20 \times \log_{10} \left(\frac{V_2}{V_1}\right)
電圧が10倍になると +20dB、1/2 になると -6dB

電圧の場合は 20log なんですね。どうして違うんですか?

それは、電力が電圧の二乗に比例するからです。
電圧が10倍になると、電力は 102=10010^2 = 100倍になりますよね?

だから、電力のデシベル計算は 10log、電圧のデシベル計算は 20log になるんです。

 

dBμVとdBm の違い

 

では、dBμV と dBm って、何が違うんですか?

良い質問だね。

これらはどちらも信号の強さを表しますが、基準となる値が違います。

dBμV
 ・ 基準値は 1μV
 ・ 電圧レベル を表す
 ・ たとえば、100μV は +40dBμV

dBm
 ・ 基準値は 1mW
 ・ 電力レベル を表す
 ・ たとえば、1mW は 0dBm、10mW なら +10dBm

ふむふむ。

dBm は電力を表してて、dBμV は電圧を表してるんですね。でも、dBμV って電圧だけなら、インピーダンスは関係ないんですか?

鋭いね!

実は dBμV は インピーダンス(Ω)によって対応する電力が変わります。
たとえば、同じ 1μV の信号でも、50Ω  の回路 か 75Ω の回路 かによって、そこに起きる電力が違います。

えっ、どういうことですか?

簡単な電力の計算式を見てみると・・・
電力(W)は、電圧(V)とインピーダンス(R)の関係でこう表せます。


P = \frac{V^2}{R}

なるほど!

じゃあ、50Ω と 75Ω の違いで、dBμV と dBm の変換がどう変わるんですか?

いい質問だね。

dBμV と dBm の変換式は、インピーダンスによって変わります。

・50Ω の場合
   dBm = dBμV − 107


・75Ω の場合
   dBm = dBμV − 108.8

えっ、50Ω と 75Ω で違うんですか!?

そう、違うんですね。

それは、75Ω のほうが 50Ω よりもインピーダンスが大きいから、同じ電圧でも電力が少し小さくなるからです。

・50Ω の場合
   0 − 107 = − 107dBm


・75Ω の場合
   0 − 108.8 = − 108.8dBm 

このように、同じ dBμV の値でも、インピーダンスが違うと対応する dBm の値が変わります。

ということは、dBμV を使うときは インピーダンスが何 Ω かを考えないと、電力に変換するときに間違える ってことですね!

そのとおり!

だから、変換表を見るときは「これは 50Ω 用なのか? 75Ω 用なのか?」を確認することが必要です。今回アップロードした対応表は 50Ω 用だから間違わないでください。

なんとなく dBμV と dBm の違いがわかってきました!

つまり、dBμV は 電圧 を基準にしてるから インピーダンスによって電力は変わる。でも、dBm は 電力を基準 にしてるから インピーダンスに関係なく同じ基準で使える ってことですね!

はい。そのとおり!

その理解があれば、dBμV と dBm の違いをしっかり使い分けられますよ。

 

dBμV・dBm 変換表の活用

 

それで、この変換表って、具体的にどんな場面で使うんですか?

無線機の取説に記載されている受信感度の確認や、各種無線測定の際に、手元にあると便利ですよ。 

じゃあ、受信機の感度が 0.5μV って書かれている場合、それを dBµV に変換するにはどうすればいいんですか?


※ YAESU FT3D の受信部の仕様

変換表から、0.5μV は -6dBµ に相当することが分かるね。

それじゃ、dBm への変換は?

アップロードした変換表は dBμV、μV、dBm、mW の値を 50Ω 環境で換算できるようになっているので・・・

-6dBμV の場合は -6 - 107 = -113dBm になるのが分かるね。


受信機の感度測定ではどう使うんですか?

受信機の入力感度を測定する際、信号発生器から供給される入力レベルは  dBμV で表されることが一般的なんですが、無線機によっては dBm で記載されていることもあるので、dBμV ⇔ dBm の変換が必要になることがあるんです。

また、無線機の Sメーター を読むときにも役立ちますよ。



例えば、S9 の信号は 50μV(34dBμV)に相当し、これを dBm に換算すると -73dBm ということが分かります。

ということは、S9+20dB の信号は -53dBm だから、S9 より 100倍強い ということですね!

そういうことです!

このように、デシベルを理解すれば、無線の信号強度を直感的に把握できるようになります。

 

まとめ

 

なるほど、デシベルって最初は難しく感じましたが、仕組みがわかると便利ですね!

そうですね。特にアマチュア無線では、送受信の感度や S メーターの読み取りに関わるので、デシベルの概念を理解しておくと運用がスムーズになります。

今日学んだことを活かして、無線機の感度測定にも挑戦してみます!

いいですね!
この変換表を活用しながら、より快適な無線運用を楽しんでください。