JH1LHVの雑記帳

和文電信好きなアマチュア無線家の雑記帳

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M5Stack による SINAD 計の製作 ②

前回ご紹介した「M5Stack による SINAD 計の製作 ①」の製作から一歩進めて、今回は以下の3点を改良・実装しました。

  • 表示方法をデジタルからアナログメータに変更
  • 信号入力回路をブレッドボードから専用モジュールへ変更
  • 3Dプリンターでボトムケースを自作

それぞれの改良点について、紹介していきます。

1. 表示をアナログメータに変更して視認性アップ

前回はデジタル数値で SINAD 値を表示していましたが、今回は 0dB から 20dB までを指針で示すアナログメータに変更しました。やはりアナログメータは、値の変化が一目でわかって直感的です。

最初のうちは、メータの針の動きがカクカクしていたのですが、本物のアナログメータのような滑らかな動きになるよう、プログラムを細かく調整しました。これがなかなか大変でしたが、そのぶん満足のいく表示に仕上がりました。



2. 信号入力回路を専用モジュールにまとめてコンパクト化

前回はブレッドボードで仮組みしていた信号入力回路を、今回は M5Stack 専用の「プロトモジュール」に組み込みました。実際には、M5Stack 純正のプラスチックフレームに、別売のプロトボードを取り付けて使っています。専用モジュールにまとめたことで、配線がすっきりして見た目も良くなり、持ち運びや実験中の取り回しもかなり楽になりました。

ステレオジャックには、できるだけ高さを抑えるために、背の低い表面実装タイプのパーツを使用しました。基板への固定は接着剤を使ってしっかりと取り付けています。
また、周囲のパーツと干渉しないように、電解コンデンサは寝かせて配置しました。
最後に、ステレオジャックの周辺をレジンでしっかり固めて補強し、ぐらつきや接触不良が起きないように仕上げました。

音声入力には 3.5mm のステレオジャックを使用しています。プロトモジュールのプラスチックフレームにはもともとケーブル用の穴があるのですが、ステレオケーブルのプラグを無理なく差し込めるように、ヤスリで少し広げて調整しました。

ステレオケーブルのプラグが差し込める程度に、穴を大きくしました。
このようなミニルーターを使うと簡単に穴を広げることができるのでお勧めです。

3. ボトムケースを 3D プリンターで自作

最後に、装置の一番下に取り付けるボトムケース(底フタ)を 3D プリンターで作成しました。M5Stack Core2 のボトムケースにはリチウムバッテリーが内蔵されていますが、バッテリーを外してもステレオジャックの部品と干渉してしまうため、既存のカバーでは収まりませんでした。

そこで、干渉を避ける形状にした専用のボトムケースを 3D プリンターで出力して取り付けました。結果的には、外付けの信号入力回路を含めて、M5Stack 本体とキレイにスタック(積み重ね)できたと思います。


3D プリンタで製作した、ボトムケースです。


ボトムケースの取り付け。
皿ネジは、M3×25mm  2本、M3×28mm 2本を使いました。

最終的に組み上がった状態です。

実際の感度測定

今回製作した SINAD 計を使って、アルインコのハンディ機「DJ-G7」の受信感度を測定してみました。

写真は、DJ-G7 145.0MHz -121.2dBm の時の 12dB SINAD です。 

前回製作した SINAD 計は、FUJISOKU 製の市販 SINAD 計を参考にしており、12dB の SINAD を示す信号レベルが -121dBm になるようにキャリブレーションしてあります。今回の機器でも同じ条件で測定したところ、きちんと 12dB を表示しました。再現性も良く、測定器として十分使えるレベルに仕上がっていると感じます。

ノッチフィルタもソフトウェアで完結

SINAD 計には、1000Hz のノッチフィルタが必要ですが、これはすべてソフトウェアで処理しています。アナログフィルタのように抵抗やコンデンサを調整する必要がなく、数字を変えるだけで済むのは非常に便利です。こうしたデジタル処理の強みを活かして、机の上で手軽にいろいろ試せるのがこのマイコンを使った製作の面白さでもあります。

M5Stack Core2 は高性能だが価格がネック

M5Stack Core2 は、LCD やタッチボタンなどがひとつにまとまった非常に便利なマイコンですが、国内での価格は1万円前後と、やや高めなのが難点です。

今回のような計測器をもっと安価に作ろうと思えば、ESP32-WROOM-32Raspberry Pi Pico 2 といった安価で高性能なマイコンを使い、LCD やアナログメータと組み合わせることで、かなりコストダウンできそうです。

今後の展開予定

ということで、次回からは、Raspberry Pi Pico 2 または ESP32-WROOM-32 を使った SINAD 計の製作に取り組もうと思います。これらのマイコンは価格が手ごろで性能も十分なため、より安価でコンパクトな測定器の実現が期待できるはずです。

さらに将来的には、信号入力回路とマイコンを1枚の基板にまとめた、専用の SINAD 計ユニットを自作する構想も進めています。部品点数を減らし、誰でも組み立てやすい形にするのが目標です。

マイコンを使った電子工作は、はんだ付けの手間が少なく、机の上も散らかりにくいのが魅力です。ソフトウェアで動作を調整できるので、思いついたことをすぐ試せるのも楽しいところ。アマチュア無線の世界がもっと広がるきっかけになりますので、ぜひ皆さんもマイコンに触ってみるのは如何でしょうか。