中華製の「QuanSheng UV-K6(UVK58)」というハンディ機(V/UHF)を購入してみました。AliExpress で、充電スタンド付きで 約 4,000 円という、とてもお手頃な価格で入手可能です。
GitHub では、この無線機を改造するためのファームウェアがいくつか公開されており、受信範囲を 1300 メガまで拡大できたり、SSB の受信まで可能になります。
この無線機は、アマチュア無線の会話で新たな話題を提供したり、趣味のマンネリ化を解消するのにも役立ちそうな、興味深い一品ではないかと思います。
仕様
ユーザマニュアル(日本語翻訳変換済み、PDF)
YouTube 動画
どんなハンディ機かは、YouTube 動画を観るのがイチバンです。
www.youtube.com
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この動画では OM0ET 氏が、UV-K5(8)の紹介ビデオを公開しており、新しいファームウェアの導入方法とその機能について説明しています。この新しいファームウェアには、スペクトラムスコープの機能が追加されており、HF、VHF、UHF の各バンドで FM、AM、SSB(USB)の電波が受信できます。
開封
注文してから約10日で商品が到着しました。配送中に箱の一部が少し 凹 んでしまっていたようですが、幸い本体や付属品には何の影響もありませんでした。
アンテナ接続コネクタ
この無線機のアンテナコネクタは、国内でよく使われるハンディ機とは異なり、SMA オスタイプが採用されています。外部アンテナや測定用のジグなどを接続するために、「SMAメス - BNCメス」の変換コネクタを持っておくと、非常に便利です。
送信出力の測定(満充電時)
144 メガと 430 メガに対応した、WELZ SP-420 を使って、145 メガだけになりますが、送信出力を測定してみました。
〇 LOW(2.2W)
〇 MID(2.6W)
〇 HIGH(3.7W)
スプリアス(スプリアス領域)の測定
中華製の無線機ということもありスプリアスがどれだけ出ているか気になるところです。今回は TinySA Ultra で、145MHz のスプリアス(無変調)を確認しました。参考にして下さい。
中華らしく、とても元気なスプリアスです。
実際の交信では絶対に使わないように・・・送信禁止改造は必須です!
最小受信強度の測定
SSG の信号強度を調整して、スピーカからどのくらい小さい音まで聞き取れるかを確認してみました。このテストでは、信号と雑音のレベルの比(S/N 比)を考慮していません。ですので、この結果はあくまで個人的な参考程度に留めておいてください。
本来であれば、AF(オーディオ周波数)信号を抽出して 12dB SINAD 法を用いて確認するのが正しい方法です。しかし、その準備が少々面倒であり、単に国内メーカーのハンディ機とざっくり比較するだけなら、この簡易的な方法でも十分だと考えました。
www.jh1lhv.tokyo
周波数(MHz) | UV-K6 | UV-5R | FT-3D | DJ-G7 |
---|---|---|---|---|
18 | -104 | - | -121 * | - |
50 | -125 | - | -123 * | - |
90 | -124 | - | -109 | -108 |
120 | -122 * | - | -122 | - |
145 | -129 | -124 | -124 | -125 |
単位は dBm、FM 変調(1KHz, Dev 3KHz)、* : AM 変調(1KHz, 30%)
結果として、スピーカーから聞こえる最小レベルの音は、どの機器も大体似たようなものであることがわかりました。これは、信号の中のノイズの大きさは特に考慮せずに得られた結果です。
カスタムファームウェア
まず、インターネット上には様々なファームウェアが公開されており、どれを選ぶか迷われるかもしれません。しかし、書き込み自体は非常に簡単ですので、自分に最適なファームウェアを見つけるまで、何度でも試しながら楽しむことができます。
ファームウェアをアップデートすることにより、受信範囲を 18 MHz から 1300 MHz まで拡張することが可能です。また、詳細なバッテリーアイコンの表示、起動画面のカスタマイズ、S メーターの詳細表示など、多彩な機能を追加できます。さらに、周波数ステップの追加や変更、SSB 受信や拡張スペクトラム表示機能の追加も可能です。
この UV-K6 は、18 MHz ~ 620 MHz、及び 840 MHz ~ 1200 MHz に対応する BK4819 チップを搭載しています。このため、ファームウェアを書き換えることで、バンドの拡張が比較的容易に行えます。
ファームウェアの書き込み方法には、主に2つの方法があります。一つは UVMOD というウェブブラウザを経由して直接本体にアップロードする方法です。もう一つは、よりオーソドックスな「Portable Radio Updater」という専用のファームウェア書き込みソフトを使用する方法です。
ファームウェアの書き込み(全バンドの送信禁止)
私がファームウェアを書き込む第一の目的は、国内のハムバンドを含めた全てのバンドで送信を禁止することです。これは本体の設定画面から行うのではなく、ファームウェアを書き換えて完全に送信禁止にすることであり、そういうことができるバージョンのファームウェアを探しましたが、UV-K6 のものは見つかりませんでした。
しかし、RE3CON / UV_Kitchen のファームウェアなら Python プログラムを修正することで対応できそうだったので、このバージョンを選択することにしました。
ただし、UV-K5 と UV-K6 ではアドレスマップが異なっているため、UV-K5 のファームウェアをそのまま UV-K6 に適用することはできないと思われます(実際には試していないので確証はありませんが)。ということで、今回は、UV-K5 の Python ブログラムを参考にしながら UV-K6 用に修正してビルドを行い、「Portable Radio Updater」を使って書き込みました。
送信禁止のついでに、周波数ステップに 20KHz を追加しようと試みましたが、アドレスに誤りがあるようで、こちらの方は正しくビルドすることができませんでした。
0xE170 は UV-K5 のアドレスであり、UV-K6 ではこれと違うアドレスになるはずです。どなたか、UV-K6 の周波数ステップのアドレスに関する情報や、全体のアドレスマップの入手方法をご存知の方がいらっしゃれば、ぜひ情報を共有していただけると幸いです。
(2023/11/11 深夜に追記)
バイナリを解析して、周波数ステップの先頭アドレスが判明(0xEBA0)しました。Python コードの修正では上手くいかなかったので、ファームウェアのバイナリを直接修正して、周波数ステップ 20KHz を使えるようにしました。
やっぱり、ハムバンドの受信では 20KHz ステップは必須ですね。
UV-K6 へのプログラムの書き込みは簡単です。UV-5R のプログラミングケーブルをそのまま使用できます。PTT スイッチを押しながら電源を投入すると、LED が点灯し(画面は黒いまま)、プログラミングモードに入ります。その状態で「Portable Radio Updater」を起動して、通信ポートとファームウェアのファイルパスを指定した後、「UPDATE」ボタンを押すとファームウェアの書き込みが行えます。なお、この書き込みで、無線機の基本設定やメモリデータまでは変更されませんので、ご安心ください。
受信中の画面
145MHz の送信で DISABLE
433MHz の送信で DISABLE
メモリ編集プログラム「QS Portable Radio CPS」を使う
ファームウェアの更新で、完全に受信専用になったので、メモリ編集プログラム「QS Portable Radio CPS」を使用して、本体の SW2 ボタン(LED が点滅するボタン)の機能を変更しました。具体的には、SW2 ボタンを FM ラジオ(F → 0)の切り替えに割り当てました。
このボタンの割り当て変更は、UV-K6 を FM ラジオとして使用する場合に非常に便利ですので、皆さんにもぜひお勧めしたいと思います。
UV-K5、UV-K6 に関する情報(国内)
これらの中華無線機の情報をお探しの方は、JH4VAJ さんのウェブサイトを一度訪れてみることをお勧めします。国内での情報に関しては、こちらのウェブサイトが最も詳しく、無線機を購入される前に参考になる内容が豊富に揃っています。
最後に
5年前にも、同じような中華製の激安無線機「UV-5R」を購入した経験がありますが、スプリアスが大きい問題がありました。それを解決して免許を申請するのは手間がかかるため、結局その無線機はしまいこんでしまったのですが、今回のこの無線機はそうしたことにならないように、長く楽しんでいけたらと思います。
今回、TinySA Ultra を使用して、ざっくりとですが 145 メガのスプリアス(不要な信号)を調べてみました。予想はしていましたが、その酷さには正直驚きました。このようなスプリアスを大量に発する中華製無線機に対して、免許を下すことは考えにくいと思います。国内のハムバンドだけに限定するための改造や、スプリアス対策のための終段のフィルタ回路の見直しなど、かなり手を加える必要があります。また、フィルタの追加や改造によっては、送信出力が半減することも考えられます。
JARD の申請料や手続きの煩雑さを考えると、この種の無線機を日常的に使用するのは現実的ではないかもしれません。実際、無線機として使用するよりも、18MHz ~ 1300MHz の受信専用機として考えた方が賢明でしょう。国内で販売されている保証認定済みのハンディ機は手頃な価格であり、ハム開局の最初の一台が、このような中華製の無線機から始めることは、まず考えにくく、素直に国産の無線機を買い求めることをお勧めします。
一方で、中華製の無線機は、分解、リバースエンジニアリング、ファームウェアの改造などを楽しむマニアには魅力的かもしれません。ハムの交信において、話題を提供し、マンネリ化を解消するための面白いオモチャになるでしょう。