先日の記事では、中華無線機の UV-K5 や K6 を使って盗聴波を探知する方法についてご紹介しました。これらの無線機に「盗聴6波」をメモリに登録して、ボタンを押すだけでスキャンができるようにしました。でも、これだけでは盗聴波を捉えても、盗聴器がどこにあるのかすぐにはわかりません。付属のアンテナが付いた状態での受信では、強い電波によって受信機が飽和状態になりがちで、盗聴器の正確な位置を特定するのが難しくなります。ですから、盗聴器を見つけ出し、取り除くためには、ある程度の技術と知識が必要です。
今回は、盗聴器探索に関して、もう少し詳しく掘り下げてみました。
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盗聴器の種類と特徴
市場に流通している盗聴器にはどんな種類があるのか、事前に知っておくことは大変重要です。ネット検索で、市販されている盗聴器の写真を簡単に見ることができますので、どのような種類があるかを確認してみると良いでしょう。ただし、無線技術に詳しい方なら、自作の盗聴器を作成することも可能ですから、盗聴に使われる周波数は実に多様です。盗聴器はぬいぐるみや時計、オブジェなどに隠されていることもあり、発見して排除するのは簡単ではありません。ただ、こうした珍しいタイプの盗聴器はごく稀で、特別な諜報活動が関係していない限り、大抵の場合、前回の記事で説明した「盗聴6波」で対応可能な盗聴器が一般的です。
あなたの家の近くで、こうして車を止めて、盗聴しているかもしれません。(イメージ)
秋葉原ではさまざまな種類の盗聴器が売られていて、その形や仕組みは非常に多岐にわたります。例えば「テーブルタップ型」盗聴器は、三又型や平型など、さまざまな形があり、普通のコンセントに見えますが、内部に盗聴機が仕込まれています。しかも、コンセントから直接電源を得るため、長期間にわたって盗聴することが可能です。
さらに、他にもこんな盗聴器があります。
- ボックス型
このタイプはタバコの箱ほどの大きさで、部屋の隅など目立たない場所に設置されます。電池式と電源式の両方があり、電源式はコンセント型と同じように長期間使用できます。
- モジュラーコネクタ型
固定電話の機器に取り付ける盗聴器で、通話内容を盗聴するのに使われます。電話線から電源を取るため、こちらも長時間の盗聴が可能です。
- デジタル式
改造された携帯電話やスマートフォンを使って盗聴します。電波が届く範囲ならどこでも使用でき、発見するのには高度な技術が必要です。
- スクランブル式
通信を暗号化して発信するタイプで、専用の受信機がなければ盗聴できません。これは、特殊な機材がないと発見が困難です。
インターネットの通販サイトや秋葉原の電気街では、さまざまな盗聴器が簡単に手に入ります。そんな状況だからこそ、無線技術に詳しいアマチュア無線家のみなさんには重要な役割があります。盗聴器に関する正確な情報を把握し、その知識を活かして不正に設置された盗聴器を見つけ出し、取り除くための協力を求められることがあるかもしれません。このような専門知識を持つ皆さんの活躍は、私たちのプライバシーを守るためにも非常に重要です。
ハムの電波探索競技「FOX ハンティング」と「ARDF」
電波の到来方向を探知し発信源となる送信機器を見つけ出すことは、ハムの世界では 「FOXハンティング」 や 「ARDF」 という競技としてよく知られています。これらは電波の発信源を探し出すゲームです。FOX ハンティングは、特定のエリア内で小型の送信機を持って逃げ惑うキツネ役の人を探し出すもので、一方、ARDF は、自然の中に設置された複数の送信機を見つけるもので、地図とコンパスを使って方向を定める技術が求められるため、FOX ハンティングに比べて厳しいルールもあり、探し当てるのは難しくなっています。
電波探索には、S メーター付き受信機、方向を指し示すアンテナ(八木アンテナやマグネチックループアンテナなど)、そしてATT(アッテネータ)が必要です。さらに、周波数と減衰量が調整できる電界強度測定器があれば、探索に有利になります。
私も昭和時代に何度かこの競技に参加した経験があります。当時、車両のルーフに 2 列 2 段にスタックしたアンテナをローテーターで回していた参加者が勝利していました。
受信機とアンテナを持ち、FOX ハンティングに参加している、イメージ
発信源の距離は、ATT の減衰量と S メーターの指示から推測します。S メーターの振れが大きい場合、それは発信源に近いということを意味します。
具体的には、探索を始めるときには ATT の減衰量を 0dB に設定します。アンテナの向きを変えながら、S メーターの振れが最大になる方向を探します。これが電波の来る方向です。発信源に近づくにつれ、S メーターの振れも大きくなります。振れが常に中央を示すように ATT の減衰量を調整しながら探します。いよいよ発信源との距離が近くなると、ATT を最大にしても受信機が飽和状態になります。このときは、アンテナを外したり、無線機を電波遮断ポーチに入れたり、アルミホイルで覆うなどして、受信機に入る電波の強さを弱めながら、発信源を探し続けます。
盗聴波の探索方法
盗聴波の探索は、アマチュア無線の FOX ハンティングと似ています。電波の到来方向と受信レベルを基に、電波を発信している機器を見つけ出します。盗聴器が使う周波数は V/UHF 帯で、HF 帯のように電離層の影響を受けないため、アンテナの向きが発信源の方向を示します。また、波長が短く、指向性の強いアンテナを用意しやすいので、探索がスムーズに行えます。
ATT : 受信用に作成した、0 ~ 113dB の減衰器
探索の具体的な方法として、部屋の中で不要な音(テレビやラジオなど)は消し、スマホで音楽を流します。この音楽は、音量の変化が少なく、一定の大きさのものが適しています。次に、UV-K5 に取り付けた ATT を調整しながら、S メータと音楽の音を頼りに発信源を探します。複数の部屋がある場合は、複数のスマホを使いそれぞれの部屋で異なる音楽を流して、どの部屋に盗聴器があるか特定します。部屋が分かれば、あとは盗聴器自体を見つけるだけです。受信レベルが高い場合は、UV-K5 に付いているアンテナを外したり、本体をアルミホイルで包んだりして、受信入力を調整しながら、不自然な物体や新しい配線、家具、電気製品、天井、照明器具などに怪しいものがないか確認します。特に、電源プラグや電話ジャックの周辺は注意深くチェックします。
電源コンセントに仕掛けられた盗聴器を発見した、イメージ
なお、市販の盗聴器の送信出力は 5mW から 20mW 程度で、家屋の構造や階数、設置状況によって飛距離は変わりますが、電波的に見通しが良ければ、受信側の環境にもよりますが 1Km 先でも傍受することが可能です。
最後に
本日は、UV-K5 や K6 を用いて自宅に仕掛けられた盗聴器の探索と排除についてお話しました。盗聴器の探索はプライバシーや法律に関わるデリケートな問題です。面白半分に自宅以外で行うのは避けましょう。特に、勝手に盗聴電波を受信して、発信元の家を突き止めて突撃するような行為は絶対にやめてください。たとえ身内や知人からの依頼でも、許可なく盗聴器を探すことは、思わぬトラブルにつながる恐れがあります。他人の家に盗聴器を仕掛ける行為は異常なことであり、このような行為に軽率に関わらないようにしましょう。盗聴器の探索は自衛のためだけに留め、必要があれば専門家や法律家に相談することをお勧めします。
今回は UV-K5、K6 を使って「盗聴6波」に焦点を当てましたが、他の周波数を探索する必要がある場合は、tinySA という小型のスペクトラムアナライザーの使用も一つの方法です。この件についてはまた別の機会に詳しく書きたいと思います。