JH1LHVの雑記帳

和文電信好きなアマチュア無線家の雑記帳

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モールス符号は独学でマスターできる(その2)

前回の記事で、「モールス符号は理屈ではなく、自転車の乗り方と同じ。とにかく音を繰り返し聞き続けることだけが上達への唯一の道です」と書きました。あわせて、「まずは A から E までの5文字だけに集中して、小さな自信を積み重ねましょう」ともお伝えしました。

ただ、ひとつ気になっていたことがあります。「聞き続けるしかない」と言うのは簡単ですが、その「続ける」がいちばん難しいのではないか、ということです。私自身、モールス以外のことでは数えきれないほど三日坊主をやらかしてきました。

以前、Kindle Unlimitedで、戸田大介氏の著書『継続する技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を読んだことがあります。

戸田氏は、習慣化アプリ「継続する技術」の開発者で、山形県出身。データアナリストを経て起業された方です。本書では、200万ダウンロードを超える同アプリのユーザー行動データを分析し、「続けられる人」と「挫折する人」には、どのような違いがあるのかを明らかにしています。


継続する技術

前回の記事でご紹介した練習法は、このデータが示す「続けられる形」と、ほぼ一致しています。

ただし、今回お話しするのは、上達への近道についてではありません。「音を聞き続ける」という唯一の道を、どうすれば無理なく歩き続けられるのか。そのための工夫について考えてみたいと思います。

1. 三日坊主は、意志の弱さのせいではないらしい

「CW を覚えようと始めたけれど、数日でやめてしまった」

同書のデータによると、60分以上かかる目標を設定した人は、その 94.3% が挫折するそうです。ランニングを始めた人でも、30日以内に挫折する割合は 93.3%。つまり、続かないほうがむしろ多数派なのです。

著者自身も「元・筋金入りの三日坊主」を自認されています。プロの通信士養成所のような「サボったら落第する」という強制力がないアマチュア無線では、意志の力だけで続けようとするのはそもそも分が悪い・・・そう納得するところから始めたほうがよさそうです。だから、意志ではなく仕組みに頼る。それだけの話です。

2. 「まずは A 〜 E の5文字だけ」でよかったらしい

前回、私は「あれこれ手を出さず、まずは5文字だけに集中してください」と書きました。これは経験則で書いたことなのですが、同書でも同じことを書いていて、少しほっとしました。

同書が挙げる三原則の1つめが、「すごく目標を下げる」です。1時間かかる目標の30日連続継続率を1.0倍とすると、5分で終わる目標は3.13倍になるとのこと。準備も含めて5分で終わる目標は続きやすく、5分以上やるのはもちろん OK、ただし最低限のハードルは上げないのがコツだそうです。

いきなりアルファベット26文字と数字をすべて覚えようとするのは、たぶんハードルが高すぎます。「今日は5分だけ、A 〜 E の音を聞く」。前回「1週間で覚える」と書きましたが、あれは締め切りではなく目安です。1日5分でも、続きさえすれば必ずそこにいき着きます。

3. 「たった5文字、されど5文字」の正体

前回、ランダムに流れる5文字が聞き取れるようになると、まるで全符号をマスターしたかのような自信が湧いてくる、と書きました。そして家族に披露して「すごい!」と驚いてもらう、あの小さな承認欲求の話です。

同書にも「小さなことでも続けられると、高い目標にレベルアップしやすくなる」とあり、「やる気が行動を生む」のと同じくらい「行動がやる気を生む」のもまた事実だ、と書かれています。順番が逆でもいい、というのは救いのある話だと思いました。やる気が出るのを待たなくても、5文字聞けばやる気のほうが後からついてくる。私の実感ともよく合います。

4. 「家での5分」が、やがて「本番の1交信」に化ける

「1日5分、数文字聞くだけで意味があるのか」と思われるかもしれません。

でも、始めるハードルさえ下げておけば、いざ音を聞き始めると「もう少し聞いてみようかな」と、自然に10分、20分と続いてしまうものです。最初に5分だけの目標にしておけば、あとは何もしなくてもその効果がずっと続くというのが同書の指摘です。焦って遠回りをするより、毎日数分でも耳をモールス音に触れさせ続ける・・・これが CW デビューへの一番の近道なのだと思います。

5. 試してほしい、2つのルーティーン

では、どうやってルーティーンにするか。同書のノウハウのうち、モールス練習にそのまま応用できそうなものを2つご紹介します。

① 既存の習慣の「前」にくっつける

一度ソファでダラダラし始めると、もう動けません(私だけでしょうか)。ですので、すでに毎日やっている行動の「前」に練習を置いてしまいます。

  • 夜、風呂に入る前の5分間だけ、スマホで A 〜 E の音を聞く
  • 朝、ご飯を食べる前の5分間、コールサイン受信練習をする

同書でも「何かの前か後」を狙うとスムーズに行動しやすい、時間帯ではなく行動のきっかけとなる「タイミング」を考える、とされています。生活の流れに組み込んでしまえば、面倒だと感じる前に体が動きます。

② リマインダーやデスクトップのショートカットをトリガーにする

そもそも練習することを忘れる、というのが一番多い失敗です。同書によれば、適切なリマインダーを使うだけで成功率は4.47倍とのこと。スマホのアラームをセットするだけです。

パソコンのキーボードの横や、スマホのホーム画面の目立つ場所に、当ブログの訓練ページのショートカットを置いておくのも、地味ですが効きます。

6. 1日サボるのは OK。ただし2日は空けない

忙しい日も、体調が悪い日もあります。ここが一番大事なところかもしれません。

同書のデータでは、1日でもサボると、それを境に二度と行動しなくなる人が 69.1%。1日サボった人の 92.5% は、結局30日以内に挫折するそうです。かといって完璧を求めても続きません。同書では、ルールは厳しすぎても緩すぎてもダメで、現実的に成功率がもっとも高いのが「1日までは OK」というルールだったと述べられています。

どうしても時間が取れない日は、訓練ページを開いて音を1回だけ再生して閉じる(10秒)でもいいと思います。あるいは移動中の電車や車内で、中刷り広告や前の車のナンバープレートを頭の中でトンツーとやってみる。完璧でなくていい、1日ならサボってもいい、ただし2日連続だけは空けない・・・この少し緩いルールが、息の長い継続を支えてくれるようです。

最後に

同書の中に、こんな趣旨の一節がありました。

誰かと比べる必要はない。理想の姿に到達することだけが大切なのでもない。必要なのは、たとえ少しずつでも、自分で決めた方向へ進んでいると実感できることだ、と。

これはそのまま、アマチュア無線という趣味にも当てはまる話だと思います。

今回も繰り返しますが、モールスの習得に近道はありません。しかし、心理的なハードルをできる限り下げ、毎日少しずつ音を聞く習慣さえ作ることができれば、独学でも十分に身につけられるはずです。

まずは、A から E までの5文字から始めてみてください。

今日の「風呂に入る前」の5分間。まずは、その時間にリマインダーをセットするところから始めてみましょう。

その小さな積み重ねの先には、コンテストや DX ペディション、そして楽しい未来の和文交信の世界が待っています。

そして私は今日もまた、いつものように、胸が躍るモールスの音に耳を傾け続けます。