アマチュア無線でモールス通信を始めると、「電鍵やパドルをどちらの手で操作したらいいんだろう?」と悩む方も多いのではないでしょうか。実は、これって単なる好みの問題ではなく、特にモールス運用を考えると意外と重要なポイントになります。
因みに私は、電鍵(縦鍵や横鍵)は利き手で、パドルやバグキーは非利き手で操作する、というスタイルです。これにはそれぞれの機器の特性に合った理由があります。
電鍵は利き手で操作するべき理由
まず、縦鍵や横鍵のような通常の電鍵についてです。
これらの電鍵は、短点(・)と長点(-)を自分の手で作り出すタイプです。指先や手首を巧みに使って、モールス符号を紡いでいく必要があります。
特に和文モールスでは、「メ」(-・・・ー)や「ミ」(・・-・-)のように、短点と長点が複雑に組み合わさった符号が多く登場します。それぞれの点と線の長さ、間隔を正確に作り出すには、安定した操作が欠かせません。
そこで重要になってくるのが、利き手での操作です。利き手なら細かな力加減を調整しやすく、長時間の運用でも疲労が少なくて済みます。特に練習を始めたばかりの時期は、スピードよりも正確さが大切です。利き手で操作することで、美しい符号を打てるようになるまでの道のりが、ぐっと近くなるはずです。
パドルやバグキーは非利き手がおすすめ
一方、パドルやバグキーの場合はどうでしょうか。
これらはエレクトロニック・キーヤーと組み合わせて使うことで、短点や長点が自動的に生成される仕組みになっています。アイアンビック(両握り)方式のパドルなら、左右のレバーを押すだけで、簡単に符号を作れますよね。
この「自動生成」のおかげで、細かい手の動きや力加減がそれほど必要ありません。そのため、非利き手でも十分に操作できます。そして、ここがポイントですが、利き手を自由に使える状態にしておくことで、運用全体がぐっと効率的になるのです。
非利き手で操作するメリット
例えば、非利き手でパドルを操作すれば、利き手でこんなことができます:
- 交信内容のメモを取る
重要なコールサインや交換したレポートを素早く書き留められます。 - 無線機の調整をする
周波数ダイヤルや RIT を微調整したり、バンドを切り替えたりするのもスムーズです。 - 運用設定を変える
エレクトロニック・キーヤーのスピード調整やメモリー機能の変更も利き手なら素早く対応できます。
特にコンテストや DX ペディションなど、長時間の運用が必要な場面では、このメリットが非常に大きく感じられるはずです。
非利き手での操作を始めるコツ
「今まで利き手で練習してきたのに、今さら非利き手に変えるのは難しそう・・・」
そんな不安を感じる方も多いかもしれません。しかし、適切なステップを踏めば、誰でも無理なく習得することができます。
まずは 15 WPM という、ゆったりとしたスピードから始めることをお勧めします。この速度であれば、符号のリズムを意識しながら、正確な操作を心がけることができます。あせらず、自分のペースで練習を重ねていきましょう。
最初の1週間は確かに戸惑うことでしょう。しかし、基本的な符号(アルファベットや数字)を既に習得している方であれば、2週間程度の練習で自然な操作感が得られるようになります。そして一度慣れてしまえば、非利き手での操作がいかに効率的であるか、きっと実感できるはずです。
実際、コンテストや長時間の運用で実績を持つベテランハムの多くが、「パドルは非利き手、ログやメモは利き手」というスタイルを採用しています。これは長年の経験から導き出された、効率的な運用方法といえるでしょう。特に DX 通信やコンテストなど、集中力を要する場面では、この運用スタイルの利点が顕著に現れます。
新しい習慣を身につけるのは、最初は少し大変かもしれません。しかし、その先には必ず上達への扉が開かれています。焦らず、着実に、自分のペースで練習を重ねていきましょう。
最後に
「パドルは非利き手で」と聞くと、最初はちょっと戸惑うかもしれません。でも、この方法には確かなメリットがあります。モールス通信をもっと快適に、そして楽しくするための一つのアイデアとして、ぜひ試してみてください。
モールス通信は、単なる通信手段を超えた、技術と技能が織りなす奥深い趣味の世界です。電鍵やパドルの使い方一つで、その楽しみ方が驚くほど広がります。最初は低速からスタートして、少しずつ練習を積み重ねてみましょう。きっと、自分にぴったりの操作スタイルが見つかるはずです。
この記事が CW 運用を効率的に楽しむためのヒントとして、参考にしていただければ幸いです。