先日は 20dB と 50dB のカプラー製作しましたが、今回は 1dB から 41dB で減衰量が可変できる「ステップ・アッテネータ」を作ったので、その作業経過を撮影した写真を中心に備忘録などをアップしていきます。
今回の製作では、Pacific Antenna に掲載されている回路をそのまま使っています。
また、減衰量を決めている抵抗値もオリジナルのままでで、何も変更していません。
http://www.qrpkits.com/files/attenuator_assembly_101412.pdf
ここの Pacific Antenna ではキットの販売も行っているようですが、ウェブ情報では現在 "Temporarily out of Stock" になっていて、「在庫なし」の状況です。
ということもあり、今回は自分で作ることにしました。。。
回路としては一般的な減衰器である π 型の構成になっています。
最初、CNC フライスで自分で基板を作ることも考えましたが、東京に戻ってからというもの一度も CNC を動かしていないので(引っ越しの段ボールに入ったまま)、勘を取り戻すまで時間が掛かりそうだったので、CNC は止めました。
実際に CNC で切削するにしても、ガーバーデータから基板切削のための G コードを生成したり、基板の反りを考慮したレベリングが必要だったりと・・・上手くいかないことの方が多いんですよね。。。
それに、せっかく切削しても、仕上がりが汚かったりするんで。
やっぱり、基板を外注するのが・・・結局は早くてキレイに仕上がるし、便利ですよね。
基板代もお手頃価格ということもあり、今回は "Seeed Fusion PCB" に製作依頼を行いました。
KiCad を使う
KiCad を使って回路図を描いて、ガーバーデータを作りました。
描いた回路は、Pacific Antenna の ”41dB Step RF Attenuator” の回路そのままです。
今回の製作で合致するトグルスイッチはライブラリになかったので、これだけは自分で作りました。
Pacific Antenna の回路定数を信用してないわけじゃないのですが、iPhone アプリの "RF-Toolbox" を使って、各減衰量における抵抗値を確認しておきました。
1dB の減衰量を得るには、869Ω × 2、5.7Ω × 1 が必要ということ。
1dB から 20dB まで "RF-Toolbox" で計算させてみましたが、Pacific Antenna の回路と数値的には同じで、E24 系列の抵抗値としても適切な値になっていることが分かりました。
さらに、Circuit Simulator Applet を使って、ざっくりですがチェックしてみました。
この例は 3dB の回路なので、1V / 1.41倍(3dB) = 0.709V = 709mV ・・・
まぁ、こんなもんでしょう。
10dB だと、1V / 3.16倍(10dB) = 0.316V = 316mV なので、これもいい感じです。
これらのシミュレーション結果からも、この回路で目的とする減衰量が達成できることが判明したので・・・この回路構成で基板を発注することに決定しました。
seeed Fusion PCB に基板を発注する
ホントのところ、基板は1枚だけでよかったんですが。。。
最低 5枚 からの注文ということで、もう、5枚も10枚もあまり変わらなかったので、将来的に誰かにあげることも考えて、10枚注文しました。
注文前に絶対に確認しておくべきこと!
pcbnew で描いた基板を実寸で印刷してパーツの収まり具合を確認します。
今回は抵抗とスイッチという2種類だけのパーツ構成ですが、この確認作業だけは基板の発注前に必ずやっておくことをお勧めします。
基板の発注を急ぐ余り、この作業を手を抜くと・・・後で泣きを見ることになります。。。
あと、もう一つ、注文前に確認しておくことがあります。
ZIP で圧縮したガーバーデータを Fusion PCB にアップして、Gerber Viewer で実際の出来上がりイメージを確認しておきます。
発注する基板の表面です。
そして、これが裏面になります。
これで OK なら、あとは枚数等の必要項目と配送方法を決めて注文するだけです。
6/11 注文して、6/23 に DHLで到着しました。
基板はこのクッション封筒の中に入っていました。
で、基板はこんな感じにパッケージングされてました。
一応、基板の導入チェックだけはしておきましたが、全て問題なしでした。
組み立てを開始します
Seeed から届いた基板にパーツを挿してハンダ付け。
そして、少々面倒なケース加工を行います。
今回の製作で使った、主なパーツ類
基板はケースにスペーサを使って固定することを考えていたんですが、スイッチ7個の取り付けだけで十分な強度が得られたので、スペーサは使いませんでした。
- トグルスイッチ(2回路2接点)
基板とパネルの両方に取り付けできるという、秋月電子で売っている共用タイプを使いました。(このトグルスイッチのピンピッチに PCB は合わせています。)
トグルスイッチ2回路2接点(ON−ONタイプ): パーツ一般 秋月電子通商 電子部品 ネット通販 - 2W 抵抗(酸化金属被膜 ±5%)
秋葉原の千石電商から @20 で購入しました。
形状は 1W のものと同じで、この大きさに合わせて PCB はデザインしています。
写真上の抵抗は中華から買った 2W のもので、下の抵抗は今回使った千石電商のものです。
同じ 2W のものなんですが・・・こんなにも大きさが違うので、製作時というか基板設計時に注意が必要です。 - ケース
LEAD のカバー付きアルミシャーシ、P-104(150✕40✕70)を使いました。
高さがあと 1、2cm 低かったらバッチリなんですが、基板がちょうどイイ感じに収まってくれたので、まぁ、このケースでヨシでしょう。
ごちゃっとした抵抗の塊から、適当に1本ずつ選んで、テスターで値を確認しながら基板に挿し込んでいきます。
抵抗が全て挿し終わり・・・最後にもう一度、テスターでチェックします。
トグルスイッチの取り付けで判明したんですが、結構キツキツで。
ピンの直径を考慮してドリル径を決めたはずだったんですが・・・寸法、誤りました。
まぁ、なんとか挿し込めるレベルだったので・・・とりあえず、セーフです。
BNC との接続に 3D2V を使おうとして、こんな感じに配線したのですが。。。
実際はこんな面倒なことは必要はありませんでした。
右側の BNC との配線は 3D2V、左側の BNC との配線はこんな感じです。
そして最後に裏蓋をして、完成です。
抵抗とトグルスイッチだけという簡単な回路構成ですが、やはり最初から基板があると製作は楽ですね。
まるで、キットのような手軽さで、あっという間に完成しました。
こうなると、こういう製作では、ケース加工がイチバンのネックで。。。
今回のケース加工では丸穴だけで済むようにパーツを選び、極力労力を減らすことを考えました。
ケースにテプラでラベリング。
トグルスイッチの関係から、スイッチは上に倒して減衰量 ON になります。
(オリジナルの「41dB Step RF Attenuator」と、オン・オフの向きは逆になります。)
TG 付きのスペアナで減衰量を確認します
最後に、DSA815 で、実際の減衰量を確認してみました。
1dB
3dB(1dB + 2dB)
6dB(1dB + 2dB + 3dB)
11dB(1dB + 2dB + 3dB + 5dB)
21dB(1dB + 2dB + 3dB + 5dB + 10dB)
41dB(1dB + 2dB + 3dB + 5dB + 10dB + 20dB)
HF 帯なら、まぁ使えるかなって感じです。
基板の作りなのか、ハンダ付けなのか、それともスイッチの特性なのか・・・
もっと直線になると思ったのですが、少々残念な結果となりました。
あと、9枚も基板はあるので、更に作り方を変えて実験でもしてみましょうか。。。
■ ■ ■
ホントは今回の基板は CNC で作ろうと、準備していたんですよね。
KiCad でガーバーデータまで生成して、最後に仕上がりイメージを確認するため、Fusion PCB のサイトにある Gerber Viewer で表示させてたら、もう、これから CNC を引っ越しの箱から出して、基板の反りを補正するためレベリングして、G コード作って・・・って考えたら、もうすっごく億劫になっちゃって、そのまま Fusion PCB の発注ボタン表示に逆らえずに、クリックしてしまいました。
で、ここの Fusion PCB なんですが。
基板の大きさが 10cm✕10cm までなら凄く安く作れるのですが、今回作った基板のように 15cm✕5cm と 10cm を超えると、いきなり高くなるんですよね。
でも、自分で CNC で切削するという手間と時間を考えたら、これも仕方ないかと。
まぁ、なんだかんだ言っても、仕上がりが綺麗ですからね。
と言いながらも、やはり今回の基板は片面1層なので。
やっぱり自分の中では CNC で削りたかった・・・と悔やむところもあります。
基板を外注するなら両面2層からと決めていたので、なんかなぁ~って感じです。
今、何かと忙しい日々を送っているので、CNC を使った切削はその内にやってみますよ。
それにしても、KiCad とか Fusion PCB だとか・・・
電子工作するにはとっても良い時代になりましたね。
今回の基板程度なら、KiCad で回路を描いて、Fusion PCB に発注するまで、2時間程度で終わりますからね。
貧乏暇なしの今のわたしには、ホント幸せな時代です。^^
最後に、アッテネータの作成機会を与えてくれた、Pacific Antenna のウェブに感謝します。