ESP32 を搭載した高性能ポケットラジオ「Mini Si4732(通称:ATS-Mini)」は、ハム仲間の間でも愛用している方が多いのではないでしょうか。私自身もこの ATS-Mini を使用しており、今回、購入時に搭載されていたファームウェア(バージョン v1.01 G8PIN 版)を、最新の v2.28(PU2CLR 版)にアップデートしましたので、その内容を少しご紹介します。

■ 周波数
LF(長波): 153KHz ~ 279KHz
MF(中波): 520KHz ~ 1710KHz
HF(短波): 2.3MHz ~ 26.1MHz
VHF(超短波): 64MHz ~ 108MHz
■モード
FM / AM / LSB / USB
まず、ファームウェアには「OSPI」版と「QSPI」版の2種類が存在します。これは、v2.28 で PSRAM(外部メモリ)サポート機能が追加されたことによる違いで、使用している ATS-Mini の基板仕様によって選択する必要があります。私の手持ちの個体は「OSPI」版で問題なく動作しました。確認方法としては、本体メニューの「About」画面で PSRAM メモリの有無が表示されるので、そこを参考にしてください。

PSRAM の容量が 0 以外なら OK です。
ファームウェアの書き込み方法はいくつかありますが、今回私は Web ブラウザ経由で行いました。専用の Web ページにアクセスし、USB 接続した ATS-Mini を選択するだけでアップデートできるので、非常に手軽です。YouTube などでも解説動画が多く公開されており、初めての方でも安心して作業できると思います。
さて、このATS-Mini ですが、以前から気になっていた点として「電源オフ状態でもバッテリーを消費し続ける」というハードウェア上の問題があります。実際、満充電にした状態で数日放置しておくと、電源が入らなくなることがありました。SNS などのネットで調べたところ、これは電源スイッチ周辺の配線設計ミスが原因で、電源 OFF 時も基板へ電流が流れてしまう構造になっているということが分かりました。
この対策として、JFET 2SK508(SOT-23)部品の配線を一部変更し、電源ラインを正しく制御できるようにする方法が広く知られています。具体的には、基板上の JFET のドレイン端子を浮かせて、そこから電源スイッチへ再配線する形です。ただ、私の場合は作業性を考え、写真のように JFET と互換性のある TO-92 パッケージの J211 と交換して配線し直す方法を取りました。
| 特性 | 2SK508 | J211 |
|---|---|---|
| タイプ | Nチャネル J-FET | Nチャネル J-FET |
| Idss(Vgs=0時) | 2 ~ 20 mA | 7 ~ 20 mA |
| Vgs(off) | –0.5 ~ –6 V | –2.5 ~ –4 V |
| 雑音特性 | 低ノイズ | 約10 nV/√Hz |
| gm(トランスコンダクタンス) | 約 1〜10 mS | typ 6.5 mS |
| 入力容量(Ciss) | 推定 5〜10 pF | typ 4.5 pF |
| ゲートリーク電流 | 数pA | typ 10 pA |
| 最大ドレイン電圧 | 50 V | 50 V |



満充電から3日後の起動でも 4.00V です。
さらに、ファームウェア v2.28 では新たに Wi-Fi 機能も正式サポートされました。従来バージョンでは使えなかった機能です。Wi-Fi 機能を使うには、まず ATS-Mini を家庭内 LAN に接続する設定が必要です。具体的には、ATS-Mini の Wi-Fi 設定メニューから AP モードを有効にし、スマホなどから SSID「ATS-Mini」に接続後、ブラウザで
http:// 10.1.1.1
にアクセスします。そこから自宅 Wi-Fi の SSID やパスワードを入力し、設定を保存すれば、以後は自宅 Wi-Fi ネットワークを利用できるようになります。

画面の「構成」から、自宅の Wi-Fi を設定します。
Wi-Fi 接続後は、以下の便利な機能が利用可能になります。
- インターネット経由で NTP サーバーから正確な時刻を取得し、時計表示
- 世界中の短波放送局情報「EiBi スケジュールデータ」を自動ダウンロードし、画面に放送局名を表示

インターネットから「EiBi スケジュールデータ」を受信中
EiBi スケジュールデータは主に短波放送(SW)の国際放送局のスケジュールを網羅しており、日本国内の FM 放送局のリストは含まれていません。

NTP で時刻を合わせて、「Voice of Korea」を受信中
Wi-Fi で Connect していないと、メモリ登録ができません。これは、仕様なのかバグなのか不明です。
User Manual
このように、ファームウェアのアップデートにより ATS-Mini の使い勝手は大きく向上します。今日はこの辺で終わりますが、また機会を見て、各バンドごとの受信感度や使い勝手についても書いていきたいと思います。