JH1LHVの雑記帳

和文電信好きなアマチュア無線家の雑記帳

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変わりゆく時代に「ハムの会話」を楽しむ

かつてのアマチュア無線は、世界中のハムたちと交信し、QSL カードを交換してコレクションを増やしたり、DXCC や各種アワードを目指したりするのが定番の楽しみ方でした。でも最近は、社会環境やライフスタイルの変化、コミュニケーション手段の多様化などにより、そういったスタイルから遠ざかるハム仲間も増えています。

V/UHF で「海外との交信に挑戦しています。DXCC は 〇〇 エンティティです」と話題を振っても、「海外との交信はしていません。カードは JARL で十分ですよ」なんて返されることも少なくありません。開局したばかりのハム局のなかには、何となく「カード交換は絶対に必要」と思い込んでいる人はいても、DX やアワードそのものには興味をもたない例も見かけます。

同じように、ハム同士の会話自体も無線そのものの話題で盛り上がる機会が減ってきていると感じています。確かに現在では高性能なリグも手ごろな価格で入手できるようになり、何かを電子工作で自作することもすっかりなくなってしまったので、技術的話題に展開することも少なくなりました。

さて今回は、「なぜアマチュア無線での会話が難しくなっているのか」、「どうすれば気持ちよく交信を楽しめるのか」について、最近の世情を踏まえながら考えてみました。



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変わりゆくハムのコミュニケーション事情

1. 趣味の多様化と「無線オンリー」の時代の終わり

かつては無線にどっぷり浸かるほど時間が取れる方が多く、局数も多かったため、アンテナや機材の話だけで何時間も盛り上がれました。でも今は、仕事や家事、他の趣味と並行してハムを楽しむ人も増えています。さらにインターネットや SNS の普及で、情報交換の場が無線以外にも無数に存在するのが当たり前になりました。

その結果、ハムの世界でも話題が広がりにくくなり、昔ながらの無線機・アンテナ・DX の話だけに固執すると、お互いに温度差が生まれてしまいます。

2. 年齢・世代間ギャップとコミュニケーション能力の重要性

若いハムが少ないと言われる中、どうしても年配のハムとのコミュニケーションが中心になります。そこで表面化するのが世代間ギャップ。若い方は敬意と配慮のあるやりとりを・・・、年配の方は "老害扱い" されない柔軟な態度を心がける必要があります。相手がどんなバックグラウンドか分からない分、社会人レベルのコミュニケーション能力が最も大切です。

この "社会人レベル" は、もはや会社や学校だけでなく、趣味の場でも普通に求められるようになっていて、ハムの交信でも例外ではありません。

3. 声だけのコミュニケーションゆえの難しさ

無線交信は相手の顔が見えないので、声の情報だけが頼りになります。しかも、シンプレックス通信なので、「話す側」と「聞く側」が完全に分かれていて、"会話が途切れがち" な感覚もあります。

  • 声色・抑揚・話すスピード
  • 長々と独り言のように話してしまうリスク
  • 相手が興味のない話題を延々続けてしまう可能性

こういった要素が重なってしまい、「無線で交信するのはけっこう疲れるな」と感じてしまい、無線で話すこと自体に消極的になっている人も増えているように感じます。



アマチュアコード再考:原点に立ち返ろう

ここで改めて、アマチュアコード(良き社会人・健全・親切・進歩的・国際的)の存在を思い出してみましょう。これは、私たちがアマチュア無線を楽しむ上での大切な倫理規範です。

  • お互いを尊重し、礼儀を忘れない
  • 相手が不快にならないように配慮する
  • お互いが進歩・成長できるような情報交換を行う
  • 国際的な視野を大切にし、多様性を受け入れる

この基本を意識するだけでも、会話のぎこちなさやトゲトゲした雰囲気をぐっと減らすことができるはずです。

最近の社会で大切にされている「思いやり」「配慮」「リスペクト」は、このアマチュアコードの精神そのものと言えるのではないでしょうか。

会話が難しいと感じる時の解決策?

1. 相手の興味を探る質問から始める

いきなり自分の趣味や経験をアピールするのではなく、相手の話を引き出す質問を投げかけてみるのはどうでしょう。

  • 「普段はどんなバンドをメインで出ていますか?」
  • 「どんなモードがお好きですか?」

相手の興味を把握したうえで、「そういうのいいですね。私は 〇〇 をやってみたいんですが・・・」と続けると、自然に会話が弾みます。

2. 当たり障りのない "安心できる" 共通話題を持つ

スポーツや政治など、相手と初めて話すときにはデリケートになりがちなテーマです。ハム同士であれば、無線機・アンテナ・運用方法など比較的無難な話題で様子を探ってみるのがいいと思います。

もし相手が DX に興味がなくても、国内移動運用やローカルラグチュー、FT8 やデジタルモードなど、多彩なジャンルに話を広げるチャンスかもしれません。

3. 無理に長話をしない:適度な挨拶と情報交換で満足感を

交信を延々と続ける必要はありません。相手のテンポや反応を感じ取り、「そろそろ次の局を待たれているかもしれませんので」など配慮のある言葉で締めると、お互い気持ちよく終われます。長すぎる一方的な交信にならないように注意が必要です。

4. 新しい仲間と出会う工夫をする

  • 地域のハムクラブや勉強会に参加する
  • インターネットフォーラムや SNS のコミュニティで情報交換する
  • 新しいモード(FT8、D-STAR など)やコンテストに挑戦する

同じ興味や目標を持つ仲間となら、無線の話題だけでなく、自然と雑談も生まれます。もちろん、そこでもアマチュアコードを忘れないことは大切です。

5. 「話し方」を意識してみる

  • 声のトーンは明るく
  • 聞き取りやすい速度で話す
  • 適度に了解を入れる

文字情報ではなく声のみの世界だからこそ、気持ちと配慮がいっそう伝わりやすくなります。



デジタル社会だからこそ見直される音声コミュニケーション

スマホや SNS の普及で「文字中心の非同期コミュニケーション」が当たり前になりました。スタンプや絵文字を活用し、時間差で返信できる一方、リアルタイムで「声」を使って会話する機会は減少しています。実際に、若年層の中には電話や直接会話に苦手意識を持つ人も少なくありません。

ところが、アマチュア無線では顔の見えない相手に対して「声」だけでやり取りするため、以下のような力が自然と鍛えられます。

  • 相手の反応を声のトーンや呼吸の間から感じ取る「聞く力」
  • 端的に言いたいことを伝える「まとめる力」
  • 会話をリードする「質問力」や「想像力」

最初は緊張するかもしれませんが、徐々に慣れてくると、今時のオンライン会議や電話対応、さらには対面での会話にも自信がついてくるはずです。

アマチュア無線は「コミュニケーション能力」を磨く最高の場

こうしてみると、アマチュア無線でのコミュニケーションは実社会と同じか、それ以上に洗練されたスキルを要求される場面が少なくありません。でも考え方を変えれば、これは絶好のトレーニング機会でもあります。

  • コールサインが必須であり、これは身元を明かしているのと同じ
  • 世代や職業が全く異なる相手との交流
  • マナーとアマチュアコードを意識した安心できる環境

インターネットで匿名の気軽さを得る一方、アマチュア無線は実名にも近い「コールサイン」で繋がるため、"まともな社交場" としての価値が非常に高いです。ここで培ったコミュニケーション能力は、学校や職場、地域社会での対人関係にも活かせるはずです。

おわりに

アマチュア無線が盛り上がった "昔" と比べれば、いまは確かに "話す" ことが難しく感じられる時代になりました。でも、それは裏を返せば、無線を通じて人と繋がる醍醐味がいっそう際立つ時代だとも言えます。

もし「最近、声を出していないな」「会話が苦手になりかけているかも」と思うなら、ぜひ一歩踏み出してみませんか? V/UHF の FM でも、HF の DX でも、デジタルモードでも構いません。「アマチュアコード」を意識して、相手を思いやりながらやり取りを楽しむ。そんな交信を続けるうちに、気づかないうちに "話す力" が高まっているかもしれません。

アマチュア無線は、これからも世代や立場を超えて楽しめる素晴らしい趣味です。
新たなコミュニケーションの場として、そして自分自身の成長ツールとして、アマチュア無線を活用してみるのもいいと思います。

以上、私自身のコミュ力を磨きながら、V/UHF の FM で交信を楽しんでみようと思っている今日この頃です。

皆さんもどうぞ、よい QSO を!