JH1LHVの雑記帳

和文電信好きなアマチュア無線家の雑記帳

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アマチュア無線を通じたコミュニケーションの難しさ

7メガの上の方では、OM 達が SSB の音質について語り合っていることをたびたび耳にします。

ある時、一人のハムが「私の送信機の音質はどうでしょうか、何か気になる点はありますか?」と問いかけたところ、対応したハムは「使っている送信機の構成は?フィルターは・・・?」と問い返しました。それに対し、「TS-990 と純正のマイクロフォンを使っています」と返答したところ、「メーカー製の一番高級なもの使っていて音質がどうなのか?と聞くこと自体、間違っているでしょう。音質を評価してくれと言うから、自作の無線機だと思うじゃないですか。TS-990 なら、普通に使っていれば、初めから綺麗な音質でしょう。自慢してるんですか、それとも冗談を言ってるんですか?」(実際の会話はもっと過激でした)という、やや怒り混じりの反応を示し、残念な感じになって、その後すぐに QSO は終了してしまいました。

TS-990 の所有者は、特に自慢したかったわけではないと思いますが・・・音質に敏感な7メガの上の方の重鎮に対して、そのような質問をすること自体が場違いだったのかもしれません。ハムの会話は、本当に難しいですね。

例えば、自分の無線機を紹介する場面でも、「30年前のアナログ無線機をだましだましなんとか使っています」と言えば、特に問題なく聞き流されるでしょう。しかし、プロ並みの高級な無線機を紹介すると・・・相手に与える心理的な影響は大きいでしょう。40年前なら、みんなが同じような価格帯の無線機を使っていたので、それを自慢だと感じることは少なかったと思いますが、今は無線機の価格も10万円から100万円以上と、その価格差が大きいです。しかも、高価な無線機を所有している人は、アンテナにも大金を投じており、いいロケーションに第二のシャックを持っている人もいます。それを設備が貧弱な人に、求められてもいないのに一方的にそういうブルジョアな設備を紹介されたとしたら、やっぱり「なに、自慢してるの?」となるでしょう。

このようなことは日常生活のあらゆる場面でも言えることで、ハムの世界でも同様です。例えば、アフリカやカリブと交信できたという話も、一度も交信したことがないハムにとっては、うらやましく感じるかもしれません。そしてそれがハムのステータスシンボルとなっていれば、交信できたハムは自分より優れていると感じられ、交信できなかった自分は劣等感を感じるでしょう。相手がその DX との交信を自慢げに話すと、それを聞いている方は不快感を覚えることもあるでしょう。つまり、特定の話題を過度に語ることで、聞いている側に心理的な負荷が生じることがあるのです。

一方で、受け取り方次第では、相手の優れた技術や経験を聞くことで、自分もその人に近づいたと感じることがあります。また、自分自身の知識やスキルが向上するという感覚を得られることもあります。

私は、ハムでの交信は様々な学びがあると思っています。自分とは異なる視点を持つ人とじっくり話す機会を持てるハムは、非常に貴重なものです。何十歳も年齢が離れていても、気軽にコンタクトを取れる趣味はこのハムくらいしかないと思っています。育ちやライフスタイル、価値観によって、考え方に大きな違いが生じるのは当然のことです。そのため、自分の価値観だけで会話をしないように、「世の中には様々な価値観を持つ人がいる」ということを学び続けることは大切なことです。そして、それを体験できるハムは、本当に素晴らしい趣味だと思っています。