私がアマチュア無線を始めたのは、まだ若かった少年時代。
あの頃は BCL(放送局の受信)に夢中で、近所のハムを訪ねてはシャックを見学させてもらったりしていました。そして、そのシャックの壁一面には、無線機を取り囲むように数え切れないほどの色鮮やかな QSL カードが飾られていました。
南国のハムから送られてきたカードには、青い海を背景にハンドマイクを持つハムの姿や、高くそびえるタワーには大きなアンテナがスタックされている、そんな異国情緒溢れるカードの鮮やかな色彩は、今でも忘れられない記憶です。
あの頃はカメラも高級品で、写真を撮ること自体も贅沢なことで。それでも、ハムたちはお金をかけて QSL カードを作成しては交換していました。そんな光景を目の当たりにした少年の私は、「ハムはお金持ちの趣味だ!」と感じて、自分には手が届かないものだと思っていました。
訪問した OM のシャックには、国内の QSL カードも飾られていましたが、やっぱり目を引くのは海外から届いたカードで、海外のカードは国内のものと比べて小ぶりで、デザインや紙質も異なっていたので、それがまた格好良く見えて、自分もハムになったら小さめのカードを作ろうと考えていました(実際に作ったカードは、やはり少年時代に憧れていた、少し小ぶりのカードです^^)。
しかし、現代のアマチュア無線の世界はどうでしょうか。
ブログなどでシャックの写真は見かけることはありますが、壁に QSL カードを貼っているようなシャックはほとんど見かけません。
かつては、電話代が高くて気軽に電話をかけることができない時代に、アマチュア無線は異国との交信を実現していました。その証明としての QSL カードは、1枚1枚が貴重で意味があるものでした。特に、無線機を自作していた時代の海外からのカードには絶大な価値があり、壁一面に飾ることは「俺って、すごいだろう」という証だったのです。
しかし、技術の進歩に伴い、その価値観は変わってしまいました。
高性能な無線機やアンテナが簡単に手に入るようになり、その設備投資に比例して DXCC のエンティティ数も増加する現代では、QSL カードの重みも薄れてしまっているように感じます。
そんなハムの遊びの中で、QSL カードを集める情熱も冷めがちで、ショートな交信で思い出も詰まっていないカードを壁に貼ることも少なくなりました。これは、子供たちが集めているカードゲームと似た状況で、親に高額なレアカードを買ってもらったりすると、途端に収集熱が冷めるのと同じようなものじゃないかと思っています。
それと QSL カードは、最近の年賀状と同じで、後で見返すことは、ほぼないんじゃないでしょうか。かつては、QSL カードをたまに見返しては、懐かしい交信の思い出に浸ることはありましたが、現代ではそのような感慨も薄れてしまっています。
インターネットが進化して、LINE や Chat で世界中の人と簡単にコミュニケーションがとれるようになったというのに、初めての人と数分だけ話しただけで、わざわざ紙の QSL カードを発行することはクエスチョンで、コンテストでの短い交信や JARL 会員の減少も、カード交換の面倒さが要因の一つであると考えています。
私自身も、受け取った QSL カードは、届いたその日にパラっと見るだけで、その後二度と目にすることはないので、今年の QSO パーティから QSL カードの交換は止めることにしました。ただ、eQSL や LoTW のアカウントは持っているので、電子 QSL は一方的に送るようにしていますが。
QSL カードの必要性を感じない人にとって、「QSLカードの交換をお願いします」という言葉はストレスで、この悪魔のフレーズを言われるたびに、交信すること自体が遠のくものになってしまうとしたら、それは本末転倒なことだと思います。
もういっそのこと、ハム界全体で QSL カードが電子化されないかなぁと、本気で思っていて、早く JARL も LoTW のような仕組みを導入するべきで、それがちゃんと交信証明書として認められれば、アワード申請も素早くできるし、多くの人が満足するはずです。
ということで、ハムの交信証明書の形態がどのように進化していくのか、期待しながら、今後の動向に注目していきたいと思います。