AliExpress の "10W 50Ω dummy load" キットを利用した、”終端型電力計” の製作です。
完成写真
"10W 50ohm load dummy load" Kit は AliExpress で購入
AliExpress の検索窓に、"10W 50ohm load dummy load" のキーワードを入力して検索することで、いくつかのショップが見つかり、送料込み 800円 程度で購入できます。
キットに同梱されているパーツ類です。
このキットだけで 10W のダミーロードを作ることができます。
終端型電力計にするために必要な追加パーツ
本キットを終端型電力計にするためには、キットに同梱されているパーツ以外にパネル式の電流計とケース、それとシャント抵抗器(R + VR)などが必要です。
で、私は同梱されてきた 1/4W の抵抗は使わずに、秋月電子で売っている 1/4W と同サイズの 1W の抵抗を使って耐電力をアップさせることにしました。
ケース:タカチ電機工業 HU-N型メタルケース HU-1N
電流計:秋月電子、アナログ・標準パネルメーター(10mADC)
抵抗:秋月電子、超小型 金属皮膜抵抗 1W2kΩ (100本入)
製作費用としては、中華キットを含めてトータルで 4,000円以下で作れると思います。
ちなみに、キット同梱の抵抗と、秋月電子で買った抵抗の精度は以下のとおり。
どちらも、精度 1%以内の良品でした。
回路図
今回製作する終端型電力計の回路図は以下のとおり。
1W と 10W の2つのレンジを設けました。
検波ダイオードの D1 は、添付されてきた品番不明なものは使わずに、手持ちの AA143 という検波用のゲルマニウムダイオードを使いました。
AA143 → 25V、40mA、C=1.2pF(Vr=3V@1MHz )
使用するシャント抵抗の定数は、回路シミュレータの QucsStudio を使って導いたのですが、実際にパワーを入れたテストと結構ズレていて、最終的にはカットアンドトライで決めました。
ここで使う D1 のパーツ選定では、複数の検波用ゲルマニウムダイオードやショットキーバリアダイオードを使って特性をチェックする予定だったんですが・・・そこまでするのも面倒になってしまい、結果、一番良さげなこの AA143 を基板へ直にハンダ付けしました。
(調整方法)
- 1W レンジ
1W 出力で電流計の針がちょうど 10mA を示すように VR を調整します。 - 10W レンジ
10W 出力で電流計の針がちょうど 10mA を示すように VR を調整します。
製作開始
製作といっても、とっても簡単です。
ただ、抵抗を基板に取り付けていくという単調作業で、ハンダ付けは速攻で終了します。
この "終端型電力計" の製作で面倒なことと言えば、やっぱりメータを取り付けるケース加工(といっても丸穴なので割と楽)と、電力値の校正とパネル作成で、この作業に製作の9割の時間を要しました。
キット基板に、秋月電子で購入した 2KΩ 1W を 40本取り付けます。
同梱のダイオードの素性が分からなかったので使うのは止めて、手持ちの AA143 という検波用ダイオードを取り付けました。
同梱されてきた 100KΩ を取り付けて、とりあえず一旦作業終了。
ダミーロードとしての抵抗値は、49.82Ω です。
電力値の校正
メータの指針の校正では、10W までのパワーを正確に出力できるジグが必要になりますが・・・そういうものは持ってないので、シャックにある FT-950、FT-857、uSDR などのムセンキと、ハム用の電力計を活用しながらメータを校正することにしました。
上:Radio-Kits の RK-SWR (1.8~30MHz)
下:第一電波工業の SX-200 (1.8~200MHz)
実際の基板に取り付けるシャント抵抗の定数は、ブレッドボードで実測しながら決定します。
RK-SWR と SX-200 の読みがジャスト 10W を示すように、FT-950 などの無線機の出力を調整して電流計の振れが 10mA 付近になる抵抗値(R + VR)を探します。
最初はシャント抵抗基板をこんな感じに取り付けたのですが・・・切り替えスイッチが邪魔してケースに収まらなくってしまったので・・・最終的な取り付けはこうなっていません。(最終的な写真は後述)
1W 以下の校正は 10dB の ATT を接続して、FT-950 の 5W から 10W を 500mW から 1W にして、100mW から 400mW は uSDR を使って間に合わせることにしました。
RK-SWR と SX-200 の指示値(ほぼ一緒の値を示します)が 100mW から 1W を示すように FT-950 と uSDR のパワーを調整しながら、終端型電力計のメータの値を記録していきました。
ちなみに uSDR のパワーは、uSDR 本体の電源電圧を可変して調整しました。
特性カーブの傾きが最小目盛りから最大目盛りまでしっかり 2乗検波領域(傾き1)に入っていると綺麗なんですけど・・・多少ゆるい傾きとなりました。
検波で使うダイオードをもっと吟味すればよかったようにも思いますが、基礎実験するにも時間がかかり作業自体が飽きてしまうので、もうこのまま仕上げることにしました。
とはいっても、2乗目盛なら、フルスケール 10mA の 1/2 である 5mA の位置が、電力では 1/4 の 2.5W となるので、なかなかいい感じにはなっていると思います。
FT-857 の出力設定を 5(5W?)と 10(10W? )に設定して、7MHz から 430MHz までのパワーを SX-200 と比較してみましたが、結果としては 50MHz までなら使えるレベルで、144MHz では厳しく、430MHz にあっては自作パワー計では測定不能の結果となりました。
基本的には高周波電力をダイオード検波で直流電圧に変換して、抵抗に流れる電流値を読んでいるだけなので、こういう電力計の良し悪しは、ほぼ使用するダイオードで決まってしまい、430MHz にも対応させるには、430MHz でも感度が落ちないダイオードを探すしかありません。
(参考)
パネル作成
この終端型電力計の製作でイチバン面倒だった、パネル作成です。
このパネルを作図するために今回改めて Adobe Illustrator の iPad 版を購入してイチから学習しました。
Illustrator は Photoshop と共に随分前に触ったことはありましたが、最新の iPad 版をインストールして驚いたのですが、私が知っている過去の Illustrator と比べてベツモノに進化していて、もうそのままの感覚で操作することができるので、今回新たに購入した解説書1冊を斜め読みしながら、サクッとパネルを作ることができました。
パネルのアップです。
電流計からパネル板を取り外して、そのアップ写真を Illustrator に読み込み(パネルの実寸に合わせます)、あとはレイヤーを活用しながら作図するだけです。
A4 サイズのシール紙に印刷して、電流計の金属パネルに貼り付けました。
ホントは厚手の光沢紙を使いたかったのですが、普通紙っぽいのしか持ってなくて・・・仕方なく妥協しました。
こんな感じです。
ケース加工
直径 45mm の丸穴あけがキモですが、丸穴ばかりなので結構楽にあけられました。
今回使ったケースの タカチ HU-1N には、 秋月電子の電流計がジャストサイズで収まります。
電流計を取り付ける丸穴は、φ45mm のホールソーを使うと簡単にあけられます。
シャント抵抗基板の取り付けですが、これは当初の予定とは違って・・・最終的に、こういう感じに BNC コネクタに接着剤で取り付けました。(もう、外せません。。。)
完成
テプラを貼って、完成です。
正面
斜め前
後面
最後に
中華キットの "10W 50Ω dummy load" を、そのままダミーロードだけで使うのは勿体ないということで "終端型電力計" にしてみましたが、製作作業としてはメータの電力値を校正するのがイチバン面倒でした。
基準の出力を作るため FT-950 を使いましたが、FT-950 のパネルで設定した出力がある程度正確に出力されるものだと思い込んでいたんですが、それが大きく違っていることが判明して、それから大きく作業予定も狂いだし、あれやこれやと結構手間がかかってしまいました。
ずばり正確なパワーが出力できるそんな夢の測定ジグでもあれば、もっと簡単に作ることができたんですが、何を信じていいのやら・・・結局、SX-200 と RK-SWR の値を信じることにして、その後の作業を進めていきました。
この校正用の基準パワーに振り回されてしまい、検波用のダイオードの選定がいい加減になってしまったことは、今となっては残念でなりません。
ということで、この記事が皆さんの参考になって、もっと素敵な "終端型電力計" を製作して頂けたら幸いです。