JH1LHVの雑記帳

和文電信好きなアマチュア無線家の雑記帳

スポンサーリンク

中華製 1/8W・1% 金属皮膜抵抗の精度を調べてみた

AliExpress へ注文していた、1/8W サイズの金属皮膜抵抗セットが届きました。

販売ページでは精度 1% とうたわれていますが、格安の中華抵抗だけに、本当に 1% の範囲へ収まっているのか気になるところです。

そこで、部品ケースへ収納する前に、代表的な抵抗値を抜き出して測定してみました。

f:id:JH1LHV:20211008191356j:plain

購入したのは、次のような抵抗セットです。

  • 抵抗値:1Ω~1MΩ
  • 種類:97値
  • 入り数:各25本
  • 合計:2,425本
  • 表示精度:±1%
  • サイズ:1/8W
  • 購入価格:約1,400円

1本あたりにすると約0.6円です。

これだけの抵抗値を国内メーカー品で一式そろえようとすれば、それなりの金額になります。趣味の電子工作で使うストックとしては、非常に魅力的な価格です。

ただし、いくら安くても、表示どおりの抵抗値でなければ困ります。今回は、どの程度のばらつきがあるのかを確認してみます。

前回の測定結果

前回は、AliExpress で購入した 5% カーボン抵抗と、Amazon で購入した 1% 金属皮膜抵抗を測定しました。

www.jh1lhv.tokyo

AliExpress の 5% 品は、100Ω 以上の測定では、調べたものすべてが 5% の範囲へ収まりました。

一方、Amazon で購入した 1% 品には、DMM の表示値上、1% の範囲から外れるものが複数見つかりました。

今回届いた AliExpress の 1% 金属皮膜抵抗についても、前回と同じ条件で測定し、結果を比較してみます。

測定に使用した DMM

測定には、22,000カウントのデジタルマルチメータ「ET3240」を使用しました。


DMM : ET3240
f:id:JH1LHV:20210915190813p:plain
1Ω の測定には4端子抵抗測定を使用し、それ以外は通常の2端子測定で確認しました。

ただし、DMM に表示された値が、そのまま抵抗の真値というわけではありません。

測定結果には、次のような誤差要因が含まれます。

  • DMM 本体の測定確度
  • 使用レンジの分解能
  • 最下位桁のデジット誤差
  • テストリードの抵抗
  • プローブの接触抵抗
  • 抵抗の温度係数
  • 測定中の自己発熱
  • 測定器の校正状態

したがって、規格の境界付近にある抵抗については、表示値だけで合否を断定できない場合があります。

今回の測定は、校正された標準抵抗を使った精密検査ではなく、購入した抵抗セットの傾向を見るための実験です。

測定した抵抗値

前回と比較できるよう、今回も次の5種類を選びました。

  • 100Ω
  • 1kΩ
  • 10kΩ
  • 100kΩ

100Ω、1kΩ、10kΩ、100kΩ については、それぞれ25本すべてを測定しました。

1Ω については、手元にあった15本を測定しています。

合計すると115本です。

f:id:JH1LHV:20211011203519j:plain

1% 抵抗の許容範囲

許容差 1% の場合、公称値に対する合格範囲は次のようになります。

公称値 1%の幅 許容範囲
±0.01Ω 0.99~1.01Ω
100Ω ±1Ω 99~101Ω
1kΩ ±10Ω 990~1,010Ω
10kΩ ±100Ω 9.9~10.1kΩ
100kΩ ±1kΩ 99~101kΩ

抵抗値が高くなるほど、1% に相当する絶対値も大きくなります。

100kΩ の 1% は 1kΩ ですが、1Ω の 1% は、わずか 0.01Ω です。

同じ「1% 品」であっても、DMM で規格内かどうかを判定する難しさは大きく異なります。

測定結果

f:id:JH1LHV:20211011203335j:plain

f:id:JH1LHV:20211011203400j:plain

表の赤いセルは、DMM に表示された値が、公称値に対する ±1% の範囲から外れていたものです。

測定結果を見ると、100Ω から 100kΩ までの各抵抗値には、表示上 1% の範囲から外れるものが複数含まれていました。

いずれも公称値から大きく外れているわけではなく、おおむね 2% 以内には収まっています。

一般的な電子工作で使う分には、ほとんど問題にならない程度の差でしょう。

それでも、商品として「精度 1%」をうたっている以上、本来なら個々の抵抗が 1% の範囲へ収まっていることを期待します。

約1,400円で2,425本という価格を考えれば仕方がないと思う反面、少し納得できないところもあります。

規格外と断定できるのか

測定表で赤く表示されたからといって、すべてを直ちに規格外品と断定できるわけではありません。

たとえば 100Ω の 1% 品なら、許容範囲は 99~101Ω です。

DMM の表示が 101.1Ω だった場合、一見すると規格外です。しかし DMM の測定誤差が ±0.16Ω あるとすれば、実際の抵抗値が 100.94Ω である可能性も残ります。

この場合、抵抗は規格内かもしれません。

反対に、表示が 100.9Ω でも、真の値が 101Ω を超えている可能性があります。

正確に判定するなら、測定値だけでなく測定器の不確かさを考慮し、

  • 明らかに規格内
  • 明らかに規格外
  • 測定誤差を考えると判定不能

のように分ける必要があります。

今回の測定環境では、境界付近の抵抗まで厳密に選別することはできません。それでも、同じ DMM と測定方法で前回の抵抗と比較すれば、セット全体の傾向を知ることはできます。

1Ω 抵抗の測定

1Ω については、ET3240 の4端子抵抗測定機能を使用しました。

通常の2端子測定では、測定対象の抵抗値にテストリードや接触部分の抵抗が加算されます。

たとえば、測定リードを短絡したときに 0.3Ω と表示される環境では、1Ω の抵抗を測ると約 1.3Ω になってしまいます。

これでは、抵抗本体の値を正しく測れません。

4端子法では、

  • 抵抗へ測定電流を流す2本
  • 抵抗両端の電圧を測る2本

を分離します。

電圧検出側のリードにはほとんど電流が流れないため、テストリードの抵抗による電圧降下を測定結果から取り除くことができます。

低抵抗測定には非常に有効な方法です。

1Ω の 1% 判定は難しい

今回測定した 1Ω 抵抗は、表示された数値を見る限り、ほとんどが 1% の範囲から外れているように見えました。

しかし、ここには大きな注意点があります。

1Ω の 1% は、わずか ±0.01Ω です。

許容範囲は、

0.99Ω~1.01Ω

しかありません。

この差を判定するには、単に4端子法を使うだけでは不十分です。

DMM の4端子抵抗レンジにおける確度と分解能、測定電流、ゼロ点の安定性、接触位置、抵抗の温度などを含めて、0.01Ω より十分小さい不確かさで測定できなければなりません。

元の記事では、「小数第一位が0になったものが15本中1本しかない」としていますが、小数第一位までの表示では 1% の判定に必要な 0.01Ω を読み分けることができません。

仮に「1.0Ω」と表示されても、実際には 0.96Ω かもしれませんし、1.04Ω かもしれません。

したがって、今回の結果だけから「1Ω 抵抗はほぼ全滅」と断定することはできません。

正しく表現するなら、

「今回の DMM と測定条件では、1Ω 抵抗が 1% 規格へ収まっているかを確実に判定できなかった」

ということになります。

抵抗を精密に測る難しさ

抵抗値は、温度によっても変化します。

金属皮膜抵抗の温度係数が仮に 100ppm/℃ なら、温度が 10℃ 変化すると抵抗値は約 0.1% 変化します。

また、小型の 1/8W 抵抗へ測定電流を流すと、わずかでも自己発熱が生じます。抵抗体が温まれば、その分だけ抵抗値も変化します。

リード部分を指で持ち続けることによる温度変化や、クリップを当てる位置の違いも、低抵抗測定では無視できない場合があります。

精密に測定するなら、

  • 抵抗を室温へ十分なじませる
  • 測定中に素手で触れない
  • 同じ位置へ4端子を接続する
  • 測定電流による発熱を抑える
  • 複数回測定して再現性を見る
  • 校正された標準抵抗と比較する

といった配慮が必要になります。

趣味の電子工作でここまで追い込む必要はあまりありませんが、「1% 品が本当に 1% 以内か」を検証するとなると、思っていた以上に測定する側の条件が厳しくなります。

精度が必要な場所では選別して使う

今回の中華抵抗は、表示上 1% から外れるものが混じっていましたが、ほとんどは 2% 以内に収まっていました。

LED の電流制限抵抗、トランジスタのバイアス抵抗、プルアップ抵抗など、一般的な電子工作で使う分には十分実用になると思います。

一方、次のような回路では抵抗値の精度が重要です。

  • オペアンプのゲイン設定
  • 電圧分圧回路
  • 基準電圧回路
  • 測定器の入力回路
  • ブリッジ回路
  • アッテネータ
  • フィルタ回路
  • 電流検出回路

このような用途では、セットに表示された「1%」だけを信用せず、使用前に DMM で測定して選別した方が安心です。

特に、絶対値よりも抵抗比が重要な回路では、同じ DMM で複数の抵抗を測定し、値のそろった組み合わせを選ぶ方法が有効です。

たとえ DMM の絶対確度が十分でなくても、同じレンジ、同じ条件で測定すれば、抵抗同士の相対的な差は比較しやすくなります。

国内販売品とも比較してみたい

今回の測定結果を見ていると、国内の販売店で購入した 1% 抵抗が、実際にどの程度の範囲へ収まっているのかも気になります。

秋月電子で販売されている 1Ω と 100kΩ の金属皮膜抵抗を100本ずつ購入し、同じ方法で全数測定してみれば、

  • 中華セットとのばらつきの違い
  • 公称値に対する偏り
  • 1% 範囲内へ入る割合
  • ロット内の均一性

などを比較できそうです。

ただし、1Ω について厳密に 1% を判定するには、今回の DMM だけでは測定能力が不足する可能性があります。

まずは 100Ω以上 の抵抗で比較し、1Ω については標準抵抗や、さらに高精度な測定環境を用意してから調べた方がよさそうです。

また一つ、今後の楽しみが増えました。

まとめ

今回は、AliExpress から購入した 1/8W・1% 金属皮膜抵抗セットについて、1Ω、100Ω、1kΩ、10kΩ、100kΩ を測定しました。

100Ω 以上では、DMM の表示上、1% の範囲から外れる抵抗が複数見つかりました。ただし、その多くは 2% 以内に収まっており、一般的な電子工作には十分使えそうです。

一方、1Ω については、4端子法を使っても 1% に相当する ±0.01Ω を確実に判定できる測定環境ではありませんでした。

今回の結果からいえるのは、次のようなことです。

  • 格安の 1% 抵抗には、表示上 1% から外れるものが含まれていた
  • 規格境界付近では DMM の測定誤差を考慮する必要がある
  • 1Ω の 1% 判定には、4端子法に加えて高い測定確度が必要
  • 一般用途なら 2% 程度の誤差でも問題にならない場合が多い
  • 精度が重要な回路では、使用前に測定して選別するのが確実

2,425本で約1,400円という価格を考えれば、電子工作用のストックとしては十分魅力的です。

「1%」という表示を全面的に信用するのではなく、通常の回路ではそのまま使い、精度が必要な場所では測定して選別する。

このくらいの付き合い方が、格安中華抵抗にはちょうどよさそうです。