4年近く積キットになっていた QRP Labs の "QCX 5W CW transceiver kit" の組み立てが終了しました。
調整終了後の完成写真
ちなみに、今回製作した QCX kit は、2020/5/14 に QCX+ kit に置き換えられており、この新たなバージョンで販売は続けられています。
製作開始前の開封
今もこういうスタイルで配送されてくるかは不明です。
日本在住の外国人代行者から、こういう小さな箱で届きました。
先日作った中華キットに比べたら・・・ホント、丁寧な梱包です。
基板のバージョン確認
基板のバージョンによってドキュメントの内容に若干の違いがあるので、まず PCB バージョンを確認する必要があります。
PCB バージョンは基板右端に番号で示されております。
本キットは PCB rev2 ということになります。
ドキュメントや製作に関する技術資料は公式サイトに登録やリンクが貼られており、日本語に翻訳されたドキュメントもあります。
で、この QCX Kit の人気は今なお衰えることはなく、QRPLabs Users' Group でも有志による活発な意見や投稿が続けられているので、本キットに関する技術的な疑問や問題が見つかったときは、これらの過去ログを検索することで短時間でその解決策を見つけることができると思います。
また、ドキュメントには QCX の回路に関する技術的な説明もあるので、本来のハムらしいムセンキそのものの勉強にもなるし、将来的に自分好みの QCX に改造するとか・・・ドキュメントの充実ぶりからも、ホント、興味が広がる素晴らしいキットです。
それで、私の今回の製作では、JA1XRP OM が翻訳寄稿した「QCXマニュアルの訳文 pdf Ver1.08」を使わせていただきました。
(PCB Rev 5 の最終バージョンのドキュメントも参照しながら、変更箇所に注意しながら製作を行いました。)
製作開始
ドキュメントは 100 ページ以上あり、もうこれ以上ないというくらい丁寧に書かれています。
1ページずつ確認しながらハンダ付けすることで、まず失敗はないと思います。
製作に当たり、ドキュメントはカラーコピーした紙の方がイイんですが、100 ページもあるドキュメントのすべてをカラー印刷するのは高くつくので、今回の製作では iPad + Apple Pencil + Noteshelf(アプリ) で、蛍光ペン機能を使って PDF にチェックしていくことにしました。
コイル製作
ドキュメントでは、コイル作りは中盤に出てくるんですが、気分ノリノリでハンダ付けしている時に、このコイル作りのため途中で頭を切り替えるのは嫌だったりするので、こういったキット作りではコイルを最初に作ることにしています。
本キットの製作でイチバン厄介なのが、T1 コイルの製作です。
これは、しっかり時間をかけて集中することが必要です。
キット同梱のエナメル線の直径は、φ0.33mm (AWG #28) です。
取り敢えず、リード先端の処理はヤスリを掛けましたが、T1 だけはリードがごちゃっとしているので適当にヤスリ、あとはハンダ付けの時に熱で溶かすことにしました。
それと、T1 のエナメル巻きですが、ドキュメントに書かれている方法は採用せず、単純に4ブロックとして巻きました。
(参考)
QCX Transceiver Part 4 - The Bandpass Filter and Winding T1 - YouTube
私はこの方法はやりませんでしたが、コイル作りの参考になると思いリンクを掲載しました。
パーツのハンダ付け
コイルの準備ができたら、あとはハンダ付け作業だけです。
パーツをひとつ付けたら、ドキュメントにチェック・・・この繰り返しです。
このとき、取り付けるパーツの値は必ずテスターなどで確認します。
基板に印刷されたパーツ記号が小さくて読みづらかったり、隣りのパーツ位置と勘違いすることがあるので、これらの確認ミスの防止のため、今回の製作ではこういう拡大鏡を使いました。
IC の取付けや装着では、 ”ピンそろった” のようなジグを使うことをおススメします。
このキットでは ATmega328p 以外の 14P と 8P(6個)の IC は、直接基板へ取り付けるようになっていて、私は指示通り直接基板に IC をハンダ付けしたんですが、後々の障害探索のことを考慮すると、ここは IC ソケットを使った方がよかったかもです。
なにか実験してて不具合が発生したとき、IC の障害かどうかの切り分けが簡単になりますからね。
トランジスタ類もハンダ付けする前にしっかりチェックしておくと、精神衛生上イイですよ。
(特に、ファイナルの BS170 は静電気に弱いので、良品チェックは必須です。)
ひと通りハンダ付けは終了し、最後に AVR の ATmega328p の挿入なんですが・・・。
今回事前に最新バージョンを入れた Firmware を新しい 328p で作っていたんですが、これが上手く動きませんでした。
こういうセットを使って Boot Loader を書き込み、そして、新しい Firmware の .hex を 書き込みエラーもなかったんですが・・・結果、ダメでした。
再度、最初からチャレンジすればいけそうな気もするんですが、もう QCX は組み立て済みだったりするので、直接 AVR へ書き込むことにしました。
ということで、添付されてきた v.1.00d を挿し込み、基板直接の SPI という転送方法を使って、新しい Firmware を書き込むことに成功しました。
v.1.00d で簡単な動作確認後に、新しい Firmware を書き込みました。
Firmware のアップデートは、このドキュメント(VK3ELH 提供)の通りで上手く書き込めます。
Arduino を ISP にして SPI でデータを書き込むという、普通の方法です。
AVRDUDESS の設定です。
起動時の画面に、”1.07” と表示されました。
公式サイトにある バージョン履歴 によれば、現在の最新バージョンは v.1.07a(2020/12/7)で、3年前の v.1.00d から実に 15 回もの更新を繰り返しており、現バージョンが相当洗練されたものになっていることが伺えます。
調整とパワー確認
調整方法についてもドキュメントに丁寧に記述されております。
基本的にフロントエンドの BPF やフェーズシフトの IQ バランスの調整は、内蔵の OSC を使って簡単にできるので、測定器類は不要です。
(参考)
https://www.youtube.com/watch?v=zTmt_KF_xTU&t=9s
YouTube には多くの QCX に関する製作動画がアップされていて、そのどれもが凄く参考になるものばかりです。
QCX 本体のパワー計で測定した写真だけですが、掲示しておきます。
各部の調整についてはドキュメント通りです。
13.8V で 4.25W でした。
それと、こういうムセンキの調整では、下のような調整ドライバーがあると便利です。
1本、数百円程度と安価ですし、工具箱へ備えておくことをおススメします。
最後に
先日作った中華キットの Rock Bending PLL CW Kit(SWL-40)と、大きさだけですが比べてみました。
大きさ的にはさほど違いはありませんが、価格とその機能、技術情報量、そのどれをとっても断然 QCX が有利で、初めてムセンキのキットを作ってみようとするなら、ゼッタイ、今回作ったこの QCX を購入されることをおススメします。
ちなみに、現在販売されている QCX+ 5W CW Kit は $55(配送料別)、一方中華の Rock Bending PLL CW Kit は 約 $64(配送料込み)となっております。
ということで、今日のところはここまでです。