古い無線機を買ってきて一番最初にやることって、
とりあえず「電解コンデンサ(ケミコン)を交換」することだと思いますが。。。
確かに電解コンデンサには寿命があって、一般的に定格温度での使用で 1,000 ~ 2,000 時間が目安とされています。時間だけでなく、長年放置されたものは劣化が進んでいることも多く、「10年くらいが寿命」と言われることもあります。
特にヤフオクや中古市場で見かける無線機は、製造から半世紀近く経っているものも珍しくありません。コンデンサの寿命を考えれば、全部交換しておくのが無難でしょう。
格安コンデンサと国産コンデンサ
私がよく使うのは中華製の格安電解コンデンサ。
ただ、こうしたコンデンサは劣化が早く、液漏れしやすいという話もよく聞きます。
「最初から国産品を買えよ!」
というツッコミが聞こえてきそうですが、私としては「悪くなったらまた交換すればいいや」というスタンスで使い続けています。(本当は、少し高くても信頼できるメーカー品を使うのがベストです。)
電解コンデンサの寿命と「10℃ の法則」
コンデンサの寿命には「10℃ の法則」というものがあります。
- 使用温度が 10℃ 上がると、寿命は半減
- 逆に 10℃ 下がると、寿命は 2 倍
これは「アレニウスの法則」に基づいたもので、温度管理の大切さを示しています。
この辺りのことを詳しくお知りになりたい方は、「日本ケミコン株式会社」のウェブにアップされているテクニカルノート(PDF)をご覧ください。
https://www.chemi-con.co.jp/products/relatedfiles/capacitor/catalog/al-technote-j.pdf
ここで、下記の一般的な電解コンデンサ(日本ケミコン)の寿命を「アレニウスの法則」で推定してみます。
例えば、日本ケミコンのデータシートによると、105℃・1,000時間保証のコンデンサは…
使用温度 | 寿命(推定) |
---|---|
95℃ | 2,000時間 |
85℃ | 4,000時間 |
75℃ | 8,000時間 |
65℃ | 16,000時間 |
55℃ | 32,000時間 |
逆に、115℃で使うと寿命は1,000時間に半減し、125℃では500時間になります。
まあ、一般的な環境でそこまで高温になることはないですが、「温度管理をしっかりすればコンデンサの寿命は延ばせる」ということです。
で、今回は電解コンデンサの良否を ESR で判断するために、手持ちの新品コンデンサの ESR を容量/耐圧別に計測して表にまとめてみました。
ESR って?
さて、今回はコンデンサの劣化を ESR(等価直列抵抗)で判断しよう!という話です。
理想的なコンデンサと現実のコンデンサ
まずは理想的なコンデンサですが、下の図のように純粋に静電容量 C だけが存在する状態です。(ありえないことですが、エネルギーの無駄がない状態です。)
理想的なコンデンサに印加する交流電圧の周波数を変化させると、交流電流を妨げるインピーダンスは図のように、低い周波数では大きく、高い周波数では小さくなるように変化します。
周波数が高くなるにつれて、どんどんインピーダンスは低くなります。
1/ωC = 1/2πfC
純粋な容量性リアクタンスで 45° の右下がりとなります。
ところが実際のコンデンサには、リード線の抵抗や誘電体の特性による微小な抵抗(R)やインダクタンス(L)が存在します。
このため、周波数が高くなるとインピーダンスは下がるのですが、ある値で落ち着いてしまいます。
ωL = 2πfL
純粋な誘導性リアクタンスで 45° の右上がりとなります。
(図は Google スライドで作成)
この時の抵抗成分 R を 「ESR(等価直列抵抗)」 と呼びます。
ESR は 0 が理想ですが、現実には 0.01Ω ~ 数Ω の範囲に収まります。
ところが、ESR が数十Ω~数百Ωと大きくなると、回路に大きな影響を与えるようになります。
特にオーディオ用途では ESR が極めて低い「低 ESR コンデンサ」が重宝されており、これが「高級オーディオ用コンデンサ」として人気になっています。
手持ちのケミコンの ESRを測ってみた!
ということで、手元にある新品の電解コンデンサの ESR を測定し、容量/耐圧別にまとめてみました!
使用した測定冶具は次の2機種です。
写真左が GM328A、右が DE-5000 です。
手持ちのコンデンサは、ほぼ中華製だったはず。各容量/耐圧の中からランダムに1つ選んで測定しました。
(なので、精度は参考程度ということで!)
DE-5000では周波数を変えて測定しました。
(100μF 16V → 100Hz、120Hz、1KHz、10KHz、100KHz の各周波数で測定)
100Hz で測定。
120Hz で測定。
1KHz で測定。
10KHz で測定。
100KHz で測定。
※ Cs モードでは測定外となったため、Cp モードに変更して測定。
周波数が上がると、ケミコンの容量が減少する傾向があることが分かります。
GM328Aでも測定してみました!
GM328A での測定の様子
DE-5000 での測定の様子。
電解コンデンサの ESR 値
手持ちのケミコンの ESR を測定し、表にまとめてみました。
(常温で測定、単位は Ω)
(表は Google スプレッドシートで作成)
結果の表は小さく縮小印刷してカードケース(B8)に入れておきます。
この ESR 表は測定器と一緒に保管し、いつでも良品の ESR 値と比較できるようにしました。
ESR 測定の重要性
電解コンデンサが劣化すると、ESR が異常に増加します。
ESR が高くなっても、静電容量 C は正常値を示すことがあるため、コンデンサの劣化判定には ESR 測定が重要です。
特に…
- 無線機のスピーカーが無音に…
- 安定化電源が出力ゼロに…
こういうとき、コンデンサの ESR が数百Ω になっていることもあります。本来、ESRは 0 に近いのが理想なので、ここまで大きくなると回路に悪影響を及ぼすのは確実です。
最近は ESR が測定できる LCR メーターも手頃な価格で手に入るので、1 台持っておくと便利です。これがあれば、不要なコンデンサ交換を減らせるはずですよ!
ということで、今回の測定結果は、手持ちのケミコンがほぼ中華製で信頼性は微妙(?)ですが、何かの参考になればと思い、ESR についての解説と計測結果の表を公開しました。