児童向けの小説は和文練習に最適なので。。。
今回も青空文庫の児童書から、
小川未明 赤い手袋
を選択してみました。
[ 25wpm 750Hz ]
cwdecoder でも解読可能なように 750Hz のトーンにしました。
赤い手袋
小川未明
まさおは、ねえさんからこさえてもらいました、あかいけいとのてぶくろを、がっこうからかえりに、どこでかおとしてしまったのです。
そのひは、さむいひで、ゆきがつもっていました。
そして、しゅうじつ、そらはくもってひのひかりすらささないひでありましたが、みんなはげんきで、がっこうからかえりに、ゆきなげをしたり、また、あるものはすもうなどをとったりしたので、まさおも、いっしょにゆきをなげてあそびました。
そのとき、てぶくろをとって、がいとうのかくしのなかにいれたようなきがしましたが、きっとよくいれきらなかったので、とちゅうでおとしてしまったものとみえます。
まさおは、うちにかえってから、はじめてそのことにきづきました。
いよいよなくしてしまいますと、なつかしいあかいてぶくろがめについてなりませんでした。
それも、そのはずであって、まいにちがっこうのおうらいに、てにはめてきたばかりでなく、まちへかいものにやらされたときも、このあかいてぶくろをはめてゆき、おゆにいったときも、このあかいてぶくろをはめてゆき、また、よる、かるたをとりにきんじょへよばれていったときも、このあかいてぶくろをはめていったからであります。
それほど、じぶんにしたしいものでありましたから、まさおは、おしくてなりません。
それよりも、もっと、こんなにさむいのに、ゆきのうえにおちていることが、てぶくろにとってかわいそうでなりませんでした。
どんなにかてぶくろは、うちにかえりたいとおもっているだろう。」とかんがえると、まさおは、どうかしてさがしてきてやりたいきもちがしたのであります。
けれど、そのとき、やさしいねえさまは、まさおをなぐさめて、 わたしが、またいいかわりをこしらえてあげるから、このかぜのさむいのに、わざわざさがしにいかなくてもいいことよ。」とおっしゃったので、ついにまさおは、そのあかいてぶくろのことをあきらめてしまいました。
ちょうど、そのひのくれがたでありました。
そらはくもって、さむいかぜがふいていました。
あまりひとどおりもない、ゆきみちのうえに、つのあかいてぶくろがいっしょにおちていました。
いままで、あたたかいがいとうのポケットにはいっていたてぶくろは、つめたいゆきのうえにさらされてびっくりしていたのです。
このとき、まちのほうから、ななつ、やっつのおとこのこが、てあしのゆびをまっかにして、きたならしいきものをきて、ちいさなわらじをはいて、とぼとぼやってきました。
このこは、とおいむらにすんでいるこじきのこであったのです。
ひるはまちにでて、おあしや、たべものをもらってあるいて、もはや、ひがくれますので、じぶんのいえへかえってゆくのでした。
こどもはとぼとぼときかかりますと、ゆきのうえに、まっかなてぶくろがおちているのがめにつきました。
こどもは、すぐには、それをひろおうとせずに、じっとみていましたが、そのうち、ちいさなてをだして、それをひろいあげて、さもめずらしそうにみとれていました。
こどもは、まえには、こんなうつくしいものをてにとってみたことがなかったのです。
まちへでまして、いろいろりっぱなものをならべたみせさきをとおりましても、それは、ただみるばかりで、なすらしらなかったのであります。
こどもは、なんとおもいましたか、そのあかいてぶくろをじぶんのほおにすりつけました。また、いくたびとなく、それにせっぷんしました。
けれど、それをけっして、じぶんのてにはめてみようとはいたしませんでした。
こどもは、たいせつなものでもにぎったように、それをだくようにして、さびしい、ゆきみちのうえを、じぶんのいえのあるむらのほうをさして、とぼとぼとあるいてゆきました。
ひぐれがたをつげる、からすのこえが、とおくのもりのほうできこえていました。
こどもは、やがておおきなきのしたにあった、みすぼらしいこやのまえにきました。
そこがこどものいえであったのです。
こやのなかには、あおいかおをして、ははおやがだまってすわっていました。
そのそばに、うすいふとんをかけて、とおばかりになるこどものあねがびょうきでねていました。
そのあねのおんなのこのかおは、やせて、もっとあおかったのであります。
ねえちゃん、いいものをもってきてあげたよ。」と、こどもはいって、あかいてぶくろをあねのまくらもとにおきました。
けれど、あねはへんじをしませんでした。
ほそいてをしっかりむねのうえにくんで、このときもうねえさんはしんでいたのです。
最後は思わずうるっとくる。。。そんなお話でした。