UV-K1 のファームウェア F4HWN が v5.9.0(2026年8月14日リリース)として公開されています。
前回、私が更新した v5.7.0 から数えると、v5.8.0 と v5.9.0 の2バージョン分のアップデートになります。今回は特に v5.8.0 で大きな機能追加があり、あわせて周辺ツールの名前も変わっているので、そのあたりを中心に見ていきます。
アップデートの方法については以前と基本的に変わりませんので、詳しい手順は前回の記事をご覧ください。すでに Fusion Edition v5.x 系を使っていれば、そのまま v5.9.0 を上書きフラッシュするだけで OK です。
ただし1点だけ注意があります。これまで書き込みに使っていた Web ツールの名前が、UVTools2 から「UV Studio」へと変わりました(URL も armel.github.io/uvstudio に移っています)。あわせて、これまで「K5Viewer」と呼ばれていた PC 表示ツールも「Live Viewer」という名前に統一され、UV Studio の中の機能として組み込まれました。CHIRP を併用している場合は、ドライバも各リリースに添付されている最新版に更新してください。
なお、v5.8.0 については作者の Armel 氏(F4HWN)から紹介ビデオが公開されています。
https://www.youtube.com/watch?v=xtzw2TNv0ZI
v5.9.0 は、田舎の人里離れた場所にいて撮影機材がないから今回はビデオなし、とのことで、代わりに GitHub のディスカッションで変更点が説明されています。製作者らしいゆるさで、面白いですね。


v5.9.0 にアップデート
フォックスハンティング(Fox Hunt)機能が登場
今回の2バージョンで一番の目玉は、なんといっても v5.8.0 で追加された Fox Hunt(フォックスハンティング)モードです。サイドキーにアクションとして割り当てて呼び出す方式で、電波発射源を探すための専用画面が用意されました。

画面に出る情報
Fox Hunt の画面には、校正済みの受信レベルが dBm で表示され、あわせて S メーター値、ホールドされたピーク(PK)と最小値(MN)、直近のトレンド信号が並びます。受信周波数と電池状態も出たままです。
信号スケールは S0 から S9+40 まで。メインのゲージは次の2種類を切り替えられます。
S1〜S9、続いて+10〜+40をカバーする13段の階段(ステアケース)表示- 直近およそ18秒を滑らかにスクロールさせる信号履歴グラフ
トレンド矢印と符号付きの dBm 差分は、現在のレベルを「約1秒前」のレベルと比較したものです。上向き矢印なら信号が増加(近づいている)、下向き矢印なら減少(離れている)を意味します。歩きながら方向を詰めていくときの、直感的な手がかりになります。
操作系(キー割り当て)
Fox Hunt は「設定ごとに専用キーが割り当てられ、押すたびに次の値へ巡回する」という方式です。逆回しにしたいときは、先に F を短く押すとステータスバーに F が出て、次のキー入力だけ1つ戻る方向に動きます(Beacon と共通です)。主なキーは次のとおり。
1:S メーター階段表示 と 信号履歴グラフ の切り替え2:音声モードの巡回(無音 → ガイガー風ビープ → 受信局の音声 → 無音)3:受信ゲインの巡回(ATT 0→ATT 6→ATT 15→ATT 27→BYP→BYP+→ATT 0)UP/DOWN:減衰量を1段ずつ直接増減(設定3を選ばずに操作でき、キーロック中も有効)M:ピーク(PK)・最小値(MN)・トレンドの基準をリセットF約0.5秒長押し:Fox Hunt / Beacon の操作ロック/解除- サイドキーいずれか:Beacon モードへ即切り替え
EXIT:Fox Hunt / Beacon を抜けて通常画面へ戻る
音声モードのうち、ガイガー風モードは受信レベルが上がるほどビープが速く・高くなり、受信局音声モードでは受信音をそのままスピーカーへ流します。どちらのモードも、ノイズフロアで鳴り続けないよう、おおよそ -120 dBm 以下では無音になります。
フォックスの見つけ方
ハンディ機での方向探知は、レベルの絶対値ではなく「レベルがどう変化するか」を見るのが基本です。ドキュメントでも、次のテクニックが紹介されています。
- 減衰(アッテネータ)が肝。近くの送信源にメーターが振り切れてしまうと「近い/遠い」の判別ができなくなるので、
3またはUPで減衰を足し、読み値をスケールの中央付近へ戻して、細かい変化が見えるようにします。段はATT 0・ATT 6・ATT 15・ATT 27の4段に加え、より深いBYP・BYP+のフロントエンドゲイン設定が続きます。 - ボディスキャンで、指向性アンテナなしでも方位が取れます。無線機を胸に当てて、ゆっくり一回転すると、送信源に背を向けたときに体がアンテナを遮って、はっきりした最小(ヌル)が一方向に現れます。
Mでリセットしてから一周し、レベルが落ち込む方位を読みます。 - ピーク(
PK)/最小(MN)ホールドは、リセット以降の最強・最弱レベルを保持します。一回転を「上下で挟んで」記録してくれるので、MNがPKより深く沈むほど、ヌルが鋭く信頼できるという目安になります。スイープごとにMで両方リセットすることができます。 - 信号履歴グラフ(
1)は、一回転の「形」をそのまま見せてくれます。スクロールする波形の谷が、そのままヌルの方向です。
自作でオフセットアッテネータを製作している身としては、この「本体だけで減衰をかけながら、ヌルまで追い込める」というのは、ちょっと悔しくもあり嬉しくもあります。もちろん外付けアッテネータと組み合わせれば、より広いレンジで追い込めるはずなので、その内、実験してみたいと思います。
BYP / BYP+ とは何か
v5.9.0 で増えた BYP・BYP+ の2段についても触れておきます。まず名前から「LNA をバイパスするスイッチ」を連想しがちですが、そうではありません。BYP / BYP+ はあくまで近距離用ゲイン設定に付けた便宜的なラベルで、ハードウェアの LNA バイパススイッチを作動させるものではないとのこと。実際には、最終段の PGA ゲインを低く保ったまま、BK4829 受信チェーンのより前段の利得を下げる設定で、BYP+ が最も深い減衰になります。要するに ATT 27 では足りないほど至近距離まで来たとき用の「追い込み段」というわけです。
注意点として、表示される dBm 値は選択中のゲイン設定に対して補正されません。そのため、より深い段へ切り替えると表示レベルは意図的にストンと下がります。読み値は「同じ段に留まったまま」相対的に使うのが正解で、異なる段どうしの絶対値を比較してはいけません。なお、ゲインを変えるたびにファームウェアは RSSI 検出が安定するのを少し待ってから、ピーク・最小・トレンド・信号履歴の基準を新しいレベルへ張り直します。段を深くした瞬間に古い高ゲイン時のピークやグラフ上の「崖」が持ち越されないための配慮で、このあたりの作り込みは丁寧だなと感じます。
さらに v5.8.0 では、ARDF(電波方向探索競技)向けの Beacon(ビーコン)モードも追加されています。MOE / MOI / MOS / MOH / MO5 といった標準的なキツネ局の識別符号と、フィニッシュ用の MO に対応し、起動メッセージ1に設定したコールサインで自動 ID も可能です。送信ウィンドウは 5〜60秒、待機インターバルは 5〜240秒まで調整でき、CW は約 12WPM で送出されます。CW 好きとしては、キツネ局を自分の設定した符号で鳴らせるというのは、なかなかそそられる機能です。
そして v5.9.0 では、この Fox Hunt / Beacon がさらに使いやすく磨かれました。上で触れた BYP・BYP+ の追加と UP / DOWN による直接操作に加え、F を約0.5秒長押しでキーロックできるようになり、探索中の誤操作を防げます。SetOff タイマーが切れると勝手に VFO 画面へ戻ってしまう不具合も直り、明示的に抜けるまで Fox Hunt / Beacon が維持されるようになりました。
この Fox Hunt / Beacon 機能を使用する際には、アマチュア無線の資格(従事者免許)を持っていたとしても、改めて総務省の免許を受けて合格しなければならず、このまま電波を送信することは違法となりますので、注意してください。
メニューが「カテゴリ表示」に対応
もう一つ、v5.9.0 の地味に嬉しい改良が、カテゴリ別メニューです。これまでフラットに並んでいたメニューが、Channels・Scan・Keys・Power・Display・Timers・Audio・Radio・DTMF・Service といったカテゴリに整理されました。従来どおりの並び順で全項目を見たい場合は All カテゴリを選べば、以前の番号体系のまま使えます。
あわせて、F を押してからサイドキーを長押しすると、その場で使えるアクションを選んで即実行できる「アクションピッカー」も追加されました。番号を覚えていなくても目的の機能へたどり着きやすくなっていて、機能が増え続ける Fusion Edition らしい、実用的なアップデートだと思います。
それでは、各バージョンのアップデート内容を見ていきます。
アップデート情報
v5.8.0(2026年8月4日)
Fox Hunt モードと ARDF 向け Beacon モードの追加が目玉です。あわせて書き込み/表示ツールが UV Studio へと再編されています。
新機能:
- Fox Hunt モードをサイドキーのアクションとして追加
- 校正済み dBm・S メーター・ピーク・最小値・信号トレンドを表示する専用画面を追加
- 強い近接送信源を探すための減衰レベル選択に対応
- Fox Hunt に無音/ガイガー風ビープ/受信音の各モードを追加
- Fox Hunt に信号履歴グラフ(画面幅)を追加
- Fox Hunt の減衰量・表示モード・音声モード、Beacon の待機間隔・送信ウィンドウ・選択中のキツネ識別符号を永続保存
- ARDF 向け Beacon モードを追加(
MOE/MOI/MOS/MOH/MO5識別符号、フィニッシュ用MO、起動メッセージ1によるコールサイン ID、未設定時はMOEに自動フォールバック) - Beacon の送信ウィンドウ(5〜60秒)/待機インターバル(5〜240秒)を可変に
- 送信ウィンドウ中の CW ID 繰り返し送出、送信/待機のカウントダウン表示、送信中の専用アイコン表示を追加
F + 1/F + 2/F + 3による Fox Hunt・Beacon 設定の逆方向送りに対応
改善:
- スキャン開始/切り替え時に、アクティブなスキャンリスト名を一時表示(ディスカッション #462)
- 起動時のバックライト演出を smoothstep イージングで滑らかに
- 高速スキャン時に RSSI スパークラインと RX シェブロンが重ならないよう改善
- RF ログと UV Studio へのストリーミングを、
RF LOGアクションをキーに割り当てているときだけ有効化するよう変更 - 送信前にファンクションロック・TX ロック・電池電圧・変調方式を毎回チェックし、Beacon の安全性を強化(#478)
- Beacon を ARDF 用途向けに調整(CW 速度を約 12WPM に、識別符号を送信ウィンドウ全体で繰り返し、待機最大4分の5キツネ方式に対応)
- Beacon 操作系を統一(
1送信ウィンドウ、2待機間隔、3キツネ識別符号、Fで次の変更を逆送り) - フラッシュ書き換え回数を抑え、チャンネル属性の書き込みを必要最小限に
- 読み取り専用テーブルを Flash へ移動して RAM 使用量を削減
- README を Fusion の機能セット中心に再構成し、UVTools2 の記述を UV Studio へ置き換え
バグ修正:
- リバースモード解除後に誤って表示される Remove Offset インジケータを修正(#469)
- Close Call 終了後の RX モード復帰を修正(#478)
- チャンネル/周波数スキャンから Broadcast FM・Close Call・CTCSS/DCS スキャンへ切り替えた際の RX モード復帰を修正(#480)
- Air Copy・Breakout・周波数スキャナ・スペアナ・UART・Fox Hunt など、モーダルアプリの再起動処理を修正
- Beacon 送信ウィンドウ中に再起動コマンドが失われる不具合を修正
- Fox Hunt 設定がアプリを正常終了せずに電源断した際に失われる不具合を修正
メンテナンス:
ENABLE_FEAT_F4HWN_FOXHUNTフィーチャーフラグを追加し、Fusion で有効化- Fox Hunt 設定領域を5→7バイトに拡張(キツネ識別符号と送信ウィンドウを保持)
- AirCopy が Fox Hunt / Beacon の全設定を含むよう VFO 互換マッピングを拡張
- 未使用・到達不能コードの削除、ドナーリストと Wiki の更新
v5.9.0(2026年8月14日)
カテゴリ別メニューとアクションピッカーの追加、そして Fox Hunt / Beacon まわりの磨き込みが中心です。
新機能:
Channels・Scan・Keys・Power・Display・Timers・Audio・Radio・DTMF・Serviceのカテゴリ別メニューブラウザを追加- 従来のフラットメニュー(並び順・番号を維持)へのフォールバックとして
Allカテゴリを追加 - サイドキー用アクションピッカーを追加(
Fを押してからサイドキー長押しで、使えるアクションを選択・即実行) - Fox Hunt のフロントエンド減衰に
BYP・BYP+の2段を追加(きわめて強い近接送信源向け) Fを約0.5秒長押しでトグルできる、Fox Hunt / Beacon 共通のキーロックを追加(ディスカッション #498)
改善:
- カテゴリごとに最後に選んだ項目を記憶するよう改善
- カテゴリ画面にカテゴリ/項目の2桁カウンタを表示
- アクションピッカーに逆送り・確定・キャンセル・タイムアウト・受信開始時の自動終了を追加
- スキャンリスト名の表示中はスキャン再開を一時停止するよう改善
- Fox Hunt の減衰操作を改善(
UP/DOWNで直接調整、キーロック中も操作可能) - 減衰変更後、RSSI 検出が安定してからピーク・最小値・トレンド・履歴をリセットするよう改善
- Beacon の待機中・送信中いずれでもキーロックを使えるよう改善
バグ修正:
SetOffタイマー満了時に Fox Hunt が予期せず VFO へ戻る不具合を修正(明示的に抜けるまで Fox Hunt / Beacon を維持)- メイン受信チャンネルの信号検出で Broadcast FM スキャンが中断される不具合を修正(通常の Broadcast FM 受信は従来どおりチャンネル受信を優先)
- メモリスキャン中、スキャンリスト名オーバーレイが消えた後にスキャン進捗が飛ぶ不具合を修正
メンテナンス:
ENABLE_FEAT_F4HWN_MENU_CAT・ENABLE_FEAT_F4HWN_ACTION_PICKERフィーチャーフラグを追加し、Fusion で有効化- 割り当て済み/動的選択のアクションが同じ安全チェックを共有するようリファクタリング
compile-with-docker.shの引数受け渡しを修正、未使用変数の警告を修正、Wiki の更新
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ビルドサマリを見ると、v5.7.0 では FLASH 85.70%/RAM 78.12% でしたが、v5.9.0 では FLASH 92.35%/RAM 78.52% になっています。Fox Hunt と Beacon という2つの大きな機能が入ったぶん、FLASH は一気に伸びました。118KB の FLASH に対して 92% 台となると、いよいよ容量との戦いも大詰めという感じで、変更履歴にも「◯◯バイト削減」といった最適化の記述が目立つようになってきました。
個人的には、やはり v5.8.0 の Fox Hunt モードが気になります。校正済み dBm 表示に内蔵アッテネータ、信号履歴グラフまで載って、これ1台でフォックスハンティングの探索がひととおりできてしまう。自作のオフセットアッテネータと組み合わせて、どこまで追い込めるか、実際にフィールドで試してみたいと思っています。CW ビーコンでキツネ局を鳴らせる Beacon モードも、和文・欧文を問わず遊べそうで楽しみです。