久しぶりに IC-9700 で D-STAR を運用しようと思ったら、ターミナルモードで送信したとたんに画面へ赤い「×」が出て、まったくサーバに繋がらないという事態に遭遇しました。あれこれ悩んだ末に無事解決できたので、同じ症状で困っている方のために備忘録として残しておきます。
結論から言うと、原因は無線機でもレピータ網でもなく、自宅ルーターの「DNS」でした。有志の XLX リフレクターへの接続はもちろん、JARL(国内)の D-STAR レピータ網でエラーが出る場合にも有効な対策です。
発生したトラブルの症状
まずは私の環境と症状から。
- IC-9700 を LAN ケーブルで自宅のルーターに接続
- 「ターミナルモード(内蔵ゲートウェイ)」に設定
- ルーターの UPnP、無線機側の UDP ホールパンチ機能もすべて【ON】
ネットワーク周りの設定はひととおり済ませたつもりでした。ところが PTT を押すと、画面上部に赤い「×」が表示され、音声がまったくインターネットへ出ていきません。国内のエコーテストも、海外の XLX リフレクターも、どこへ送信しても同じように弾かれてしまいます。
ここで一つ押さえておきたいのが、この「×」の意味です。IC-9700 は IC-705 と違って、画面にネットワーク接続マーク(LAN が繋がっているかどうかのアイコン)を表示しない仕様です。つまりこの「×」は「ネットに繋がっていない」という表示ではなく、送信した信号がゲートウェイ(サーバ)へ届かなかった、という「接続結果の失敗」を示すマークになります。ここが切り分けのポイントです。
送信「×」の原因はルーターの「DNS」でした
IP アドレスの取得など、無線機とルーターの接続そのものは正常。それなのに送信結果だけが「×」になる。こういう場合、原因のほとんどは DNS(ドメイン・ネーム・システム) にあります。
なぜ繋がらなかったのか
D-STAR の通信時、無線機はインターネット上のサーバ(JARL の管理サーバや、リンク先の XLX リフレクターのサーバなど)へアクセスしようとします。ところがインターネットの世界では、xxxxx.d-star.info のような英語のアドレス(ドメイン名)のままでは通信できず、必ず「数字の住所(IP アドレス)」へ変換する必要があります。この変換を担う “住所案内所” が DNS です。
初期設定のままだと、IC-9700 は自宅のルーター(192.168.1.1 など)へ「このサーバの住所を教えて」と問い合わせます。ふつうはルーターがそれを代理で調べて返してくれるのですが、
- 昨今の高速光回線(IPv6 / IPoE 環境など)のセキュリティ仕様
- ルーター独自の不具合(DNS リレー機能のバグ)
こうした要因で、ルーターが D-STAR サーバの住所をうまく調べられず、無線機に「住所が分かりません」とエラーを返してしまうことがあります。宛先の住所が分からなくなった IC-9700 は、通信を諦めて「×」を表示していた、というわけです。
【解決策】プライマリー DNS を「8.8.8.8」に書き換える
解決方法はいたってシンプルで、当てにならないルーターを頼るのをやめ、無線機からインターネット上の信頼性の高い DNS サーバへ直接問い合わせに行くよう設定を変えるだけです。
今回は、Google が全世界に無料公開しているパブリック DNS サーバ 8.8.8.8 を、IC-9700 に直接指定しました。
IC-9700 の設定手順
- [MENU] ➔ 「設定」 ➔ 「ネットワーク設定」 を開く
- 「プライマリー DNS サーバー」 をタップ
- 元の数値(192.168.1.1 など)を消去し、8.8.8.8 と入力して [ENT]
- (念のため)「セカンダリー DNS サーバー」に 8.8.4.4 を入れておくと、予備の問い合わせ先ができて安心です
- 設定を確実に反映させるため、一度 IC-9700 の電源を切り、数秒待ってから再度オンにする
私の環境では、これで問題なく接続できるようになりました。
対策後の効果
プライマリー DNS を 8.8.8.8 に書き換えた結果、ルーターの DNS リレーの不具合をきれいにバイパスできるようになりました。
無線機がルーターの頭越しに Google の案内所へ直接問い合わせるので、正しい D-STAR サーバの IP アドレスが一瞬で判明します。おかげで、「×」が消え、国内レピータのエコーテストも XLX リフレクターへのリンクも一発で通るようになりました。
この 8.8.8.8 という設定は、パソコンやスマホでも「ネットの繋がりが悪い・遅い」というときに使われる、非常にメジャーで安全なテクニックです。無線機がやり取りするのはインターネット上の D-STAR サーバだけなので、常時この設定にしておいても運用上のデメリットはまずありません。安心してそのまま使い続けられます。
同じように「×」が消えなくてモヤモヤしている方は、ぜひ一度 DNS を疑ってみてください。