JH1LHVの雑記帳

和文電信好きなアマチュア無線家の雑記帳

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マンガで学ぶ「SWR 1.0 の罠:飛ばないアンテナの正体と真の効率」

今回も「アンテナ・マッチング」をテーマとした続編として、「SWR が 1.0 なのに電波が飛ばないアンテナ」という疑問について、マンガ形式で分かりやすくまとめてみました。

 


■ ■ ■

SWR1.0なのに飛ばないアンテナ
―「SWRが良ければよく飛ぶ」は本当なのか?―

アマチュア無線を始めると、必ずと言っていいほど目にする言葉が SWR です。そして多くの方が、最初にこう考えます。
「SWR が 1.0 なら、きっとよく飛ぶアンテナなんだろう!」
確かに、SWR は大切です。しかし実際には、SWR が 1.0 でも飛ばないアンテナ というものは存在します。これは新しくハムを始めた方にとって少し不思議に感じるかもしれません。
「SWR がバッチリなのに、なぜ飛ばないのか?」
今回はこの疑問について説明していきます。

 まず SWR とは何か 

SWR は、簡単にいうと、

無線機から送り出した電力が、アンテナ側でどれくらい素直に受け取られているかを見るための目安です。

正式には、給電線の途中で発生する進行波と反射波の比を表していて、日本語では「定在波比」と呼ばれます。

たとえば、

  • SWR 1.0
    反射がほとんどない、理想的な状態
  • SWR 2.0
    ある程度反射している
  • SWR 3.0以上
    かなり反射している

という見方をします。

つまり SWR は、

アンテナ系が送信機に対してどれだけ整合しているか

を表す指標であり、「よく放射しているか」そのものを直接表す数値ではありません。

 誤解しやすいポイント

SWR が良い = 電波がよく飛ぶ

これは半分正しく、半分間違いです。

正しく言えば、

SWRが良い = 無線機から見て、電力を送り込みやすい状態

ということであり、送り込まれた電力がその後どうなるかは別問題で、電力は次のどれかになります。

  1. 電波として空中に放射される
  2. アンテナやコイルや地面などで熱として失われる
  3. 不要な部分に流れてしまう

本当に大事なのは、送り込めたかどうかではなく、送り込んだ電力が、どれだけ電波になったか です。

「飛ぶアンテナ」とは何か

アンテナが「飛ぶ」というのは、結局のところ、送信した電力が効率よく電波として放射されることです。

そのためには主に次の3つが大切です。

  • 整合が取れていること
  • 損失が少ないこと
  • 放射しやすい構造・設置になっていること

SWR はこのうちの「整合が取れているか」 を見ているに過ぎません。つまり、SWR だけ良くても、損失が大きければ飛ばない、ということです。

極端な例:ダミーロード

この話を理解するのに最も分かりやすいのがダミーロードです。

ダミーロードは、無線機の送信電力を安全に吸収するための装置で、中身は基本的に、電力を熱に変える抵抗です。ダミーロードに無線機をつなぐと、普通は、SWR はほぼ 1.0 になります。ですが、ダミーロードではほとんど電波は飛びません。なぜなら、送信電力は空中に放射されるのではなく、内部の抵抗で熱になっているからです。

すなわち、ここで分かるのは、SWR 1.0 でも、電力が熱になるだけなら飛ばないということです。これが「SWR だけではアンテナ性能は分からない」という最も典型的な例です。

アンテナの入力インピーダンスとは

少し技術的な話になりますが、アンテナの給電点には 入力インピーダンス があります。これは交流に対する「電気の流れにくさ」のようなもので、

  • 抵抗成分
  • リアクタンス成分

から成り立っていて、一般的な無線機や同軸ケーブルは 50Ω 系 です。そのため、アンテナの入力インピーダンスがうまく 50Ω に近いと、SWR は良くなります。そして、ここで大切なのは、入力インピーダンスの中の抵抗成分です。

この抵抗成分は、さらに2つに分けて考えられます。

入力抵抗 = 放射抵抗 + 損失抵抗

放射抵抗:アンテナが電力を電波として放射することに対応する成分です。(良い抵抗)
損失抵抗:電力が熱などになって失われる成分です。(飛ばない原因になる、悪い抵抗)

つまり同じ 50Ω でも、

  • 放射抵抗 50Ω、損失抵抗 0Ω
    → とてもよく飛ぶ
  • 放射抵抗 1Ω、損失抵抗 49Ω
    → SWR は良くてもほとんど飛ばない

ということが起こります。

「SWR 1.0 なのに飛ばない」典型例

1. 短すぎるアンテナ

本来 7MHz で使うにはかなり長いアンテナが必要です。しかし設置場所の都合で、短いホイップや短縮アンテナを使うことがあります。このような短いアンテナでは、もともとの放射抵抗が非常に小さいことがあります。その代わり、整合のために大きなコイルを入れたり、抵抗分が増えたりします。すると、無線機から見たインピーダンスは 50Ω に合わせられても、その内訳が、

  • 放射抵抗 2Ω
  • 損失抵抗 48Ω

のようになってしまうことがあります。

この場合、SWRは良くても、送信電力の大部分は熱になります。

数字で考えると、たとえば送信電力が 100W で、

  • 放射抵抗 2Ω
  • 損失抵抗 48Ω

なら、全体の抵抗は 50Ω です。

SWR はかなり良く見えるかもしれません。

しかし電力のうち、放射に使われる割合は

  2 / (2 + 48) = 2 / 50 = 0.04

つまり 4% で、100W 送信しても、電波として空中に出るのは理想化すると 4W 相当 しかありません。残りはほとんど熱です。これでは、SWR が 1.0 でも「飛ばない」と感じるのは当然です。

2. アンテナチューナーで無理やり合わせた場合

アンテナチューナーやオートアンテナチューナーを使うと、無線機側から見た SWR を 1.0 付近にできます。しかし以前にも触れたとおり、これは無線機から見た整合を取っているだけです。アンテナそのものがよく放射するようになったわけではありません。

たとえば、

  • 本来そのバンドに合っていないアンテナ
  • かなり短いアンテナ
  • 損失の多い給電系

にチューナーを入れても、無線機から見ればフルパワーで送信できますが、アンテナ系のどこかで損失が大きければ、飛びはあまり改善しません。

つまり、

チューナーで SWR 1.0 にした = アンテナが高性能になった

ということではありません。

3. 同軸ケーブルで電力が失われている

SWR が高いアンテナに長い同軸ケーブルをつなぐと、ケーブル内での損失が増えます。特に HF より上の周波数ではこの影響が目立ちます。仮にチューナーで無線機側の SWR を 1.0 にしても、アンテナまでの途中でかなり電力が失われていれば、結果としてあまり飛びません。

つまり、

  • 無線機からは快適に見える
  • でもアンテナには十分な電力が届いていない

ということが起こります。

4. アースやカウンターポイズが不十分

特にエンドフェッド、モービルホイップ、垂直系アンテナなどでは、戻り電流の通り道が重要です。アンテナは「片方だけ」で動いているわけではなく、電流は必ずどこかを通って戻ります。

この戻り道が貧弱だと、

  • シャック内に高調波が回る
  • 同軸の外側に電流が流れる
  • ロスが増える
  • ノイズを拾いやすくなる

などの問題が起きます。その結果、SWR はある程度下がっていても、効率の悪いアンテナになってしまうことがあります。

5. 地上高が低すぎる

アンテナそのものは共振していて、SWR も良好であっても飛ばないことがあります。その代表が設置時の高さの問題です。

たとえば HF のダイポールでも、地面に近すぎると地面への損失や放射角の問題で、期待したように飛びません。7MHz 帯で、地上高がかなり低いと、電波は高い角度に出やすくなり、近距離は良くても遠距離には伸びにくくなります。また地面条件が悪いとロスも増えます。この場合、SWR は良くても「思ったより飛ばない」と感じることがあります。

6. 測定位置の問題

SWR 計で見ているのが、無線機のすぐ近くの場合、途中の給電線や整合回路の影響を含んだ値になっていることがあります。つまり、アンテナそのものの状態ではなく、系統全体を見ているわけです。そのため、手元で SWR 1.0 だからといって、アンテナ素子そのものが理想的に動作しているとは限りません。

では「飛ぶアンテナ」は何が違うのか

飛ぶアンテナは、単に SWR が良いだけではなく、放射抵抗に対して損失抵抗が小さいという特徴があります。言い換えると、電力が熱になりにくく、電波になりやすいアンテナです。

一般に、よく飛ぶアンテナの条件は次のようになります。

  • その周波数に対して十分な長さがある
  • 不要な短縮コイルや抵抗に頼りすぎていない
  • 給電系の損失が少ない
  • アースやラジアルがしっかりしている
  • 設置場所と高さが適切
  • 不平衡電流やコモンモード電流を抑えている

このような条件が揃うと、SWR だけでなく実際の飛びも良くなります。

SWR 1.0 でも安心できない理由を一言で言うと

一言でまとめると、

SWR は「入口の通りやすさ」を示しているだけで、「その先で何が起こるか」は示していない

ということです。

たとえるなら、水道ホースで水を送る場面に似ています。

  • 入口がスムーズで詰まりがない
    → SWRが良い
  • でも先で漏れていたり、地面に染み込んでいたりする
    → 飛ばない

SWR が良いことはもちろん大切ですが、それだけで性能全体は判断できません。

ハムを始めたばかりの人がアンテナを評価するときの見方

つい SWR 計の数字だけを見て安心しがちです。しかし本当に見るべきなのは、次のような点です。

1. 交信実績

  • 同じ出力でどれくらい応答があるか
  • レポートがどうか
  • 他のアンテナと比べてどうか

実際の交信結果は重要です。

2. 受信の感じ

送信だけでなく、受信も参考になります。

ただし受信が良いから送信も良いとは限りませんが、極端に弱い場合は設置やロスを疑うヒントになります。

3. アンテナアナライザでの確認

SWR だけでなく、

  • 共振周波数
  • 抵抗成分
  • リアクタンス成分

を見ると、アンテナの状態がかなり分かります。

4. 比較試験

可能なら同じ場所で、

  • フルサイズアンテナ
  • 短縮アンテナ
  • チューナー使用時

などを比較すると理解が深まります。

「SWRが悪い=絶対ダメ」でもない

ここで逆の話もしておきます。

SWR が良くないからといって、必ずしも全然飛ばないとは限りません。たとえば、アンテナそのものはよく放射していても、給電の都合で少し整合がずれているだけなら、SWR が 1.5~2.0 程度でも十分実用になることは珍しくありません。

実際には、

  • SWR 1.1 の低効率アンテナ
  • SWR 1.8 の高効率アンテナ

なら、後者の方が飛ぶこともあり得ます。この点も、知っておくとアンテナ選びで失敗しにくくなります。

ではどうすればよいのか

アンテナを改善するときの優先順位は、私は次のように考えます。

まず優先したいこと、

  1. アンテナをできるだけフルサイズに近づける
  2. 設置高さを上げる
  3. 給電線の損失を減らす
  4. アースやラジアルを改善する
  5. コモンモード対策をする
  6. 最後に整合を詰めて SWR を下げる

つまり、

先に “飛ぶ構造” を作り、そのあとで SWR を整える

のが本筋です。

最初から SWR だけを追いかけると、数字だけは立派なのに飛ばないアンテナになりやすいのです。

アンテナチューナーは無意味なのか

ここまでの悦明で、アンテナチューナーが悪者のように見えるかもしれませんが、そうではありません。

アンテナチューナーには大きな価値があります。

  • 無線機を保護できる
  • 出力低下を防げる
  • 1本のアンテナで複数バンドに出られる
  • 運用の自由度が上がる

ただしその役割は、

「飛ばないアンテナを魔法のようによく飛ぶアンテナに変える装置」ではない

ということです。

チューナーはあくまで整合装置です。アンテナ効率そのものを根本的に改善する装置ではないということです。

 

まとめ

最後に、この記事の要点をまとめます。

SWR 1.0 なのに飛ばない理由

  • SWR は整合の良し悪しを示すだけ
  • 放射効率までは分からない
  • 送信電力が熱として失われることがある
  • 短縮アンテナ、損失の大きいコイル、給電線ロス、アース不足などで飛ばなくなる
  • チューナーで SWR 1.0 にしても、アンテナ自体が良くなったわけではない

本当に大切なこと

  • 放射抵抗が十分あること
  • 損失抵抗が小さいこと
  • 設置条件が良いこと
  • SWR だけで判断しないこと

おわりに

アマチュア無線では、つい数字の良さに安心してしまいます。SWR 1.0 という表示を見ると、とても気分が良いものです。しかし、本当に大切なのはその先です。

無線機から送り出した電力が、どれだけ効率よく電波になっているか

これを意識すると、アンテナを見る目が一段深くなります。SWR は大事です。でも、SWR だけではアンテナの実力は分かりません。

これからアンテナを調整するときは、

「この SWR 1.0 は、本当に電波を飛ばしている1.0なのか?」

という視点を持つのがいいと思います。

その意識だけでも、アンテナ調整や運用の考え方が大きく変わってくるはずです。