前回の記事では、430MHz 帯のような見通し通信において「送信出力を上げても、相手局の S メータは思ったほど振れない」という話をしました。
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出力を2倍にしても、S メータの針は1本動くかどうか(+3dB)
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出力を4倍にして、やっと S メータが約1〜2本動く(+6dB)
※ S が振れやすい機種(1目盛 = 3dB ~ 4dB)を前提
今回はその第2弾として、「じゃあ、アンテナを高くしたらどうなるの?」ということについて、技術的な理屈(少しだけ数式)を交えて書いていきます。
結論から先に言うと、
高さを2倍にすることは、出力を4倍にするのと同じ効果があります。
今回も、以下のように図にまとめてみました。















なぜ「高さ」が効くのか?(2 波モデルの考え方)
一般的には「見通しが良くなるから」と説明することが多いですが、技術的にもう一歩踏み込むと、「大地反射波(グラウンド・リフレクション)」の影響が見えてきます。
電波が相手に届くとき、実は2つのルートを通っています。
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直接波:アンテナから相手へ一直線に届く波
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反射波:地面に一度反射してから届く波
この2つの波は、受信点(相手のアンテナ)で合流します。しかし、反射波は遠回りをしてくるため、直接波とはタイミング(位相)がずれます。 この「ズレ」によって、打ち消し合ったり強め合ったりするのですが、通常のアマチュア無線の交信距離(数km〜数十km)においては、お互いに打ち消し合う方向に働いてしまい、結果として電波が弱くなってしまいます。
アンテナを高くすると、この「打ち消し合い」が緩和され、相手に届く電力が劇的に増えるのです。これをハイトパターン(Height Pattern)やハイトゲインと呼びます。
「高さ2倍」の効果を計算してみる
難しい計算は省きますが、専門書(近似式)によると、十分な距離がある平坦な地上通信において、受信電力(Pr)はアンテナの高さ(h)の2乗に比例するという性質があります。
Pr ∝ h^2
これを使って、「高さを2倍」にしたときの変化を見てみましょう。
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高さ 5mH のとき
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5^2 = 25
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高さ 10mH のとき(2倍の高さ)
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10^2 = 100
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なんと、受信電力の係数は25から100へ、つまり4倍になります。
電力が4倍になるということは・・・
前回の記事から、
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電力4倍 = +6dB
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S メータでいうと = S が約2つアップ(※ここでは、1S = 3dB 換算)
「パワー」vs「高さ」 コスパが良いのはどっち?
ここでは、相手局の Sメータを2つ(+6dB)上げるという同じ目標に対して、前回の「送信出力」と、今回の「地上高(高さ)」がそれぞれどのような違いを持つのかを比較してみます。
| 比較項目 | Sを2つ上げる(+6dB)ための条件 | 実現の難易度 |
|---|---|---|
| 送信出力 | 4倍にする (例:10W → 40W) |
リグの買い替えや免許変更が必要。 バッテリーも消費する。 |
| 地上高 | 2倍にする (例:5m → 10m) |
ポールを伸ばす、移動運用なら高い場所に移動する。 |
10W 機を使っている人が、40W 〜 50W を出そうとすると、上位機種への買い替えや安定化電源の強化、場合によっては放熱対策など大変なコストがかかります。 しかし、移動運用などで伸縮ポールを使ってアンテナを「あと数メートル上げる」ことや、少し高い丘に移動することは、比較的ローコストに S メータを振らすことが可能です。
まとめ:高さはパワーだ!
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出力を2倍にしても、+3dB しか稼げない。
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高さを2倍にすれば、+6dB も稼げる(理論値)。
つまり、「アンテナの高さを2倍にすることは、送信出力を4倍にするのと同等の効果がある」と言えます。
これが、「アンプを買う金があったらタワーを建てろ」「移動運用では1mでも高く上げろ」と言う技術的な理由です。
移動運用では、送信出力のツマミを回す前に、アンテナをあと1段高く上げてみてはいかがでしょうか?S メータの針が、今までとは違う動きをするはずです。