私の友人であり、1.8MHz 帯の研究と運用に取り組まれている JH7VHA 柴田さん から、今回も興味深い寄稿をいただきました。
これまで、アッテネーターやバンドパスフィルター、AIノイズキャンセラーなど、雑音対策の多面的なアプローチを紹介していただきましたが、今回はその総仕上げとして、「最も効果的なノイズ対策=アンテナの改造」 について詳しく解説されています。
限られた住宅環境の中で工夫を重ね、耐候性や安全性にも配慮した考えを基本に、測定・評価まで丁寧に記録された本稿は、実践的な資料としても非常に価値の高い内容です。
それでは、柴田さんの創意工夫あふれる「1.8MHz ダイポールアンテナの改造」をご紹介します。
これまで中短波帯(1.8、3.5MHz)における雑音対策(ATT、BPF、AI ノイズキャンセラー)についてレポートしてきました。
今回は、雑音対策で最も効果がある、空中線(アンテナ)についてのお話で最後にしたいと思います。
受信機に入力される信号電圧を大きくするためには、利得の高いアンテナが必要です。
雑音を拾いにくくするためには、指向性のあるアンテナが有利です。
また、送信機から出力される電力の輻射を大きくするためにも、利得の高いアンテナが必要です。
どんなに優秀な無線機も、アンテナがなければ、シャックのオブジェにすぎません。
高校生の時、学校敷に張られていたフルサイズダイポールアンテナの性能の素晴らしさは、今でもはっきりと憶えています。
学校の TS-520 の S メーターの針は +40dB を指していました。
周りは田んぼだったので、人工雑音はありませんでした。
1.9MHz CW で 599 ノーノイズで交信ができました。
いっぽう自宅は 1.9MHz のアンテナを張れるスペースはなく、3.5 / 7MHz のアンテナにカップラーをつないで聞いていましたが、学校と比べて、その差は、天と地でした。
当時の自宅とは別の場所ですが、当局のアンテナ設置状況です。
図1 平面図
図1のとおり4方に隣家がある住宅地に設置しています。
1.8~50MHz まで全てダイポールアンテナです。
紫色表示部分が 160m バンド用アンテナです。
総通局から防護指針上、先端の地上高が低いため、道路から3m敷地内に入れるように指示されました。
免許は1.9MHz 3MA 1KW です。
写真1 図1西側(左側)
赤矢印が給電点で、地上高 13m 両端高 4m 垂直角度 120° 水平角度 120° 全長 35m です。
写真2 3連コイル
このアンテナは、ダイヤモンドアンテナ社の W719 という 1.8 / 7MHz 用のアンテナですが
純正コイルが焼けたため、1mmφ の IV 線を巻いて 7 / 3.6 / 1.8MHz のトリプルバンド用に改造
したものです。
1年間使用しましたが、雪が降るとコイルに着雪して SWR > 3 になってしまいます
大きなコイルが3個連なっていて、強風時に空中でラインダンスを披露しています。
タワー上の V ダイポールは、たこ踊りをしています。
同じく水平ダイポールは、白鳥の湖を舞っています。
せまい町なので、人の噂話は回り回って自分の耳にも入ります。
「あのアンテナすごく大きいけど、大丈夫なの?」というご近所さんの不安が回り回って私の耳に入ります。
「あれは建築基準合法で、アマチュア無線のアンテナの中でも小さいほうなので大丈夫ですよ」と言ってくれたみたいです(*^-^*)
わずか 13m のタワーでも、世間の人から見れば、威圧感半端ないのです。
さらに、強風時はエレベーターでアンテナを下げているので、威圧感 MAX なんでしょうね。
今年も、もうすぐ冬の季節風の時期を迎えます。
ご近所さんに不安を与えないように、コイルを純正1個に戻して、派手なダンスをしないようにしました。
尚、アンテナ・タワー保険は入っておきましょう。
写真3 焼けた純正コイル
写真4 巻き直し
2m 位カットして、祖巻きしました。これで少し耐圧があがりそうです。
写真5 防水状況
自己融着テープでコイル全体を防水しました。
純正はビニル製の筒で防水していて、滑りやすいためか、雪があまり付着しませんでしたが、これはどうか一冬観察してみます。
コイル左側が 7MHz、右側が 1.8MHz のエレメントです。
調整用のヒゲはできるだけ短くしたい(受風量をへらしたい)ため、切りすぎてもすぐ交換できる架設用のものです。
調整は完了しましたが、雪の影響を確認してから、ヒゲをIV線に交換する予定です。
エンド側はステンレスワイヤーの折り返し長さで調整しました。
写真6 完成
全景です。コイルが目立たなくなりました。
まだ本格的な季節風は吹いていませんが、ラインダンスは少し控えめになったようです。
写真7 VSWR 測定状況
最終的に R=50、X=0、VSWR=1.0 にしましたが、日によって 1.1 ~ 1.2 になります。
ほとんど誤差範囲です。
一応、給電点でも測定しましたが、同じ値でした。
写真8 VSWR グラフ
全長は、改造前 35m から 33m と少し短くなったせいか、帯域が狭くなりました。
VSWR < 1.5 の幅は W719 純正全長 30m 時が 12KHz、W719 改 33m 時が 15KHz、35m 時が 23KHz です。
SSB 帯域 26KHz をカバーするには、全長が 35m 以上必要です。
左側のエレメントを 15cm 位短くすると VSWR が最小(50Ω)になります。
CW 帯域に ON AIR 時は左側のエレメントにワニ口クリップでヒゲを追加しています。
作業は2日間行いましたが足、腰、脇腹等が筋肉痛になりました。
私は毎日腕立て伏せをしていますが、スクワットとけんすいも追加したほうがよさそうです。
2 ~ 3日心地よい痛みが続きました。
1.8MHz 帯は波長が長い(中波)ためアンテナも長くなります。
しかし、自宅の狭い敷地では長いアンテナを設置することは不可能です。
そのため、コイルによる短縮、折り曲げ等により、敷地内に収まるように工夫が必要です。
しっかりと同調(共振)させれば、全長 20m で、なんとか実用になると思います。
短縮等によりアンテナの利得が落ちた分は、送信はパワー、受信ではフィルターや AI ノイズキャンセラー等で補うしかありません。
受信時のフィルターやアッテネーターの効果は微妙で、AI ノイズキャンセラーの効果は効くか効かないかが、はっきりしています。
アマチュア無線の特にローバンドの世界では、まだ AI より NI:Nature Intelligence(ネイチャー・インテリジェンス)のほうが優勢です。
このアンテナで、全日本との交信が可能です。(全世界はムリです)
1.8MHz(中波)帯での交信は、少年の頃からの、あこがれ・ロマンでした。少年は、おじいさんになって浪漫飛行へ In the sky しました。
それでは今宵も素敵な 1.8MHz 和文ライフをお過ごしください。
■ ■ ■
今回の寄稿では、アンテナこそがノイズ対策の最前線である ということを、改めて実感させてくれる内容でした。
柴田さんの実験は、単なる技術改造ではなく、「限られた環境の中で最良の電波環境を追求する」というアマチュア無線の原点を思い出させてくれます。
防護指針やご近所への配慮など、現実的な制約を受け止めながらも、ユーモアを交えつつ改善を重ねる姿勢は、まさに “エンジニア魂” そのものです。
AI ノイズキャンセラーをも凌駕する “NI(Nature Intelligence)”=自然との共存 の発想は印象的でした。
柴田さん、今回も実践に裏打ちされた貴重なレポートをありがとうございました。そして、どうぞこの冬も安全に、そして優雅な 1.8MHz の空をお楽しみください。
また、メールでは、IC-PW1 が故障して修理に出したものの「年内は難しい」との返答があり、新たに PW2 を購入されたといった近況もいただきました。そして、今後は、総通局の検査もあるのでは・・・とのことで。
次回は、ぜひこのあたりの経過について紹介していただければ、と思っております。
よろしくです。