私の友人である JH7VHA 柴田さん から、2回路2接点同軸切替器を用いてアッテネーターやバンドパスフィルターを切り替え、1.8MHz帯の雑音を効果的に低減する手法 についての寄稿をいただきました。
整備や点検の過程まで丁寧に記録された、まさに柴田さんらしい内容であり、同軸切替器の構造や特性を理解するうえでも大変貴重な資料となっています。
それでは、以下に 柴田さんの寄稿をご紹介します。
2回路2接点同軸切替器(TRACSCO 製)を落札したので紹介します。
この切替器は 1.8 MHz 帯で使用するバンドパスフィルターやアッテネーターの切替に使用するために入手しました。
写真1 正面
外観は、とても綺麗です。
写真2 背面
コネクターも綺麗です。使用した形跡がありません。
写真3 銘板面
銘板の文字が鮮明です。
写真4 コネクター保護キャップ
NJ コネクター保護キャップです。
写真5 元箱
保護キャップを付けて、元箱に長期保管されていたと思われます。
元箱は、かなり劣化していて、爪でカリカリするとテープが剥がれますが、接着力は、もうありません。
写真6 ワイヤーロック
キャップで保護されない部分のコネクターの銀は、いぶし銀のように変色しています。
何万回操作しても、緩みが出ないように、ワイヤーロックが施されています。
写真7 TRANSCO 1回路6接点と比較
1回路6接点のシルキーな操作感に比べ、操作ミスで重大なトラブルにつながる2回路2接点タイプは通常プル & ターン方式が多いのですが、このタイプはシングルアクション方式のためか、操作感はとても重くなっています。
写真8 分解点検
接触不良が無かったので、完全分解はしていません。
写真9 グリスアップ
シャフトやボールベアリングのグリスが硬化していたので、清掃・グリスアップしました。
操作感が軽くなりました。
写真10 スペーサー挿入
さらに操作感を軽くするためにスペーサーを挿入して、バネの反発を弱めたことによりとても軽くなりました。
「うーんシルキー。これぞ TRANSCO」
しかし、接触不良が心配です。最終的にスプリングワッシャー1枚のみにしました。
写真11 アッテネーターと TRANSCO とバンドパスフィルター
左が 6dB ATT 右が 1.8 MHz 帯 BPF です。
写真12 BPF、ATT 切替器
① TRANSCO が1番回路時は、スルー状態です。
② TRANSCO が2番回路時で、ROCKET 製が2-2時は ATT オン。
③ TRANSCO が2番回路時で、ROCKET 製が3-3時は BPF オン。
写真13 ① スルー時
スペクトラムスコープは
信号=6 雑音=2
S メーターの雑音=8
写真14 ② ATT オン時
スペクトラムスコープは
信号=5.5 雑音=1.5
S メーターの雑音=6
写真15 ③ BPFオン
スペクトラムスコープは
信号=6 雑音=1.5
S メーターの雑音=5.5
信号レベルを落とさず、雑音レベルを下げることが出来ます。
ATT や BPF を挿入することにより、アンテナ系統が複雑になり、トラブルのリスクが増えることが懸念されます。
少しでもリスクを軽減するために、2回路2接点同時切替器は有効です。
1.8 MHz 帯は、自然雑音、人工雑音、望まない電波等々様々な雑音が大きいバンドです。
全ての雑音に ATT や BPF が効果がある訳ではありませんが、何か1つに有効であれば挿入するのもいいのでは?
「技あり一本」とまではいかなくても、効果・有効にはなると思います(柔道では廃止になったけど)
次回は、「背負い投げ一本」となる、AI によるノイズ除去についてレポートします。
それでは今宵も素敵な 1.8 MHz 和文ライフをお過ごしください。
■ ■ ■
柴田さんの寄稿は、単なる機器紹介にとどまらず、1.8MHz帯特有の難しさと、それに真正面から取り組む実践的な工夫が伝わってきます。
アッテネーターやバンドパスフィルターを状況に応じて切り替えるという発想は、ノイズ対策の王道でありながら、安定性や接触信頼性といった要素にも細やかに配慮する必要があることを改めて感じさせてくれました。
次回予告にある「AIによるノイズ除去」は、アナログの知恵とデジタル技術が融合する新たな挑戦の領域です。今後の続報がいっそう楽しみですね。
柴田さん、今回も貴重なご報告をありがとうございました。