JH1LHVの雑記帳

和文電信好きなアマチュア無線家の雑記帳

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【情報 TNX】旧日本陸軍の電鍵

戦後80年という節目の年にあたり、私たちはあらためて平和の尊さと、今の暮らしの礎を築いてくださった方々への感謝を心に刻む必要があります。

本記事は、私の友人である JH7VHA 柴田さんより寄稿いただいたものです。旧日本陸軍の電鍵にまつわる貴重な資料と、その背景に込められた深い想いが綴られています。

とりわけ私の心を打ったのは、電鍵が納められていた木箱の存在です。静かに年月を重ねたその佇まいには、持ち主の記憶や歴史が染み込み、言葉にできない哀愁が漂っています。こうして実物と向き合うことで、遠い過去の記憶が私たちの日常に静かに語りかけてくるのです。

このような歴史的遺品をご紹介いただいた JH7VHA 柴田さんに、心より感謝申し上げます。

それでは、柴田さんの記事をご覧ください。

写真1

旧日本陸軍の、無線電信を打つための電鍵です。
天然秋田杉に畳を敷いて置いています。
異国の地や海に散った多くの英霊達に、安らいでほしいという気持ちからです。

写真2


写真3


写真4

写真2~写真4
縦140 横70 厚さ5 (mm)の台座(鉄板)上に絶縁材(黒色部分)が取付けられ
絶縁材の上に機構部が、構成されています。
機構部はアーム、接点台座、スプリングが鉄製(磁石がつく)です。
軸受け、間隔調整ネジ、端子ネジには、磁石がつきません。
反発は不等径コイルスプリング、ノブは樹脂製のようです。
重量は570gです。
アームのメッキは、ほとんど剥がれています。

写真4
端子は左と中央がブレーク→メーク接点
中央と右がメーク→ブレーク接点
中央と右の間がアースです。

写真5

裏側には、スパイクが3本付いています。
赤丸は絶縁体固定ネジのロックペイントです。
左上は錆が見られます。
机にネジで固定するためか?鉄板前部に切り込みが入っています。
ネジ止めした跡はありません。

写真6

電鍵を保管する木製の箱です。

写真7

電鍵がピッタリと収まっています。

写真8

銘板を外したような跡があります。
軍用品として、焼却処分されないようにしたのでしょうか?

戦中か戦後の保管中かは不明ですが、浸水した跡があります。
木箱の右奥側から浸水して、電鍵の右奥が錆びています。
写真5  裏側の左奥は、写真1 表側の右奥で、錆びています。

打鍵感ですが、素晴らしいです。
一言で表現すると、ソフトな打ち心地です。
軍用とは思えないほど優しい感触です。
短点を打つと「ト」と聞こえて、長点を打つと「トー」と聞こえます。
筐体全体が、共鳴して楽器のような音がします。
木製、鉄製の机の上はもちろん、腿の上でも打ちやすいです。
自動車で走行中でも打鍵可能です。輸送トラックの中でも可能なのでは?
最前線の、どんな環境でも打鍵可能なように設計されたものと思われます。
陸軍の様々な通信機に使用されていたようです。

通信兵たちは祖国を守るために、南方の野戦場の高温多湿で過酷な環境で
飢えや渇きに耐え、電鍵をたたいたのです。
隼(はやぶさ)で特攻したパイロットも、家族を守るために
敵艦に突入する最後に、電鍵をたたいたのです。
送信が途切れた時、彼らは英霊となったのです。
私たちは、この電鍵をたたいた人たちのおかげで今、幸せに生活できるのです。
二度と過ちを繰り返すことのないよう、この電鍵で
英霊たちに、感謝と哀悼の意を込めて電信を打ちます。

「ニッポンハ セカイイチ ヘイワデ ユタカナクニニ ナリマシタ」
「エイレイヨ ヤスラカニ オネムリクダサイ」
「セカイヘイワヨ エイエンナレ」


■ ■ ■

戦中、極限の状況下で電鍵を打ち続けた通信兵たち。彼らが最後に伝えたかった言葉、心の奥底に抱えていた祈りに、私たちは今こそ耳を傾けなければなりません。

JH7VHA 柴田さんの投稿からは、ただの機材紹介ではなく、「電鍵を通して英霊たちと心を通わせようとする真摯な姿勢」が伝わってきます。そして、平和な時代にアマチュア無線を楽しむ私たちこそが、その願いを引き継いでいく使命を持っているのだと、改めて気づかされました。

この電鍵が、次の世代にとっても平和と感謝の象徴となることを願いながら、この記事を締めくくりたいと思います。

JH7VHA 柴田さん、貴重な投稿を本当にありがとうございました。