JH1LHVの雑記帳

和文電信好きなアマチュア無線家の雑記帳

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【情報 TNX】コリンズ KWM-2

友人である JH7VHA の柴田さんから届いた情報です。

今回も前回に続き、昭和時代の青春を思い出させる憧れの無線機、KWM-2 の紹介記事をお送りいただきましたので、ここにご紹介させていただきます。いつもありがとうございます。

JH7VHA 柴田さんからの情報

【紹介編】

以下の KWM-2 は、HAM を再開した時からお世話になった OM が昨年サイレントキーとなり、ご家族の御意向で「処分してください」とのことでしたが、この M-2 は OM の思い入れが強く、先輩たちから「おまえが持って行け」と言われ、買い取らせていただいたものです。

真空管といえば、小学生の頃は、レコードプレーヤーの中に入っていて音を出すための部品で、うっすらと光って、熱い物。無線を始めた頃は、送信機の終段増幅に使用されていたもの。何百 W の電力を出す、リニアアンプ用という程度の知識しかありません。

とりあえず、「KWM-2 メンテナンス」という本に書かれている真空管「6AZ8, 12AT7, 6CL6 等」は何者か ? ネット検索しました。ただ差し替えればいいという訳では無いということも、分かりました。偽物もたくさん出回っていることも、知りました。今のオレのレベルでは、下手に触らない方がいいことが分かりました。

というわけで、紹介したいと思います。

写真1

アメリカ コリンズ社製の HF トランシーバー「KWM-2」です。 
1959 年デビュー。この個体は製造番号から推察して1963年製
(内部部品には 1962 年 10 月の刻印あり、私と同じ誕生年月です)
70 年代の中高生の頃、「CQ誌」に広告が載っていたと思います。
価格は約 40 万円(国産の「TS-820」は約 20 万円)、高すぎて、手も足もでませんでした。
80 年代までロングランヒットを飛ばして、世界のジェントルマンをうならせた魅力とはどんなものだったのでしょうか? 
オレ流に、検証してみたいと思います。

写真2

先ずは、この「KWM-2」を置くための台が必要です。「大きい、重い、大がかり」の3Oです。
本体、電源、ステーション・コントロールやスライダック等を設置するためにプリンター台を購入しました。
移動させることが大変そうなので、台ごと移動できるワゴンタイプにしました。

写真3

電源は、本国アメリカの交流 115V 仕様のまま日本に輸出されています。
そのため日本で使うためには 100V から 115V に昇圧する必要があります。
日本がアメリカの「ポチ」だった頃はこんなことが、あたりまえだったのでしょうね。
(まー今も「ポチ」ですが)
東芝製スライダック(写真3 下)で 115V に昇圧して純正電源(PM-2 写真3 中央)を使用すると少し唸り音が聞こえます。M-2 のリアパネルにピタリと装着できるものですが装着すると端子(写真7)が隠れてしまいます。普段は使用していません。
この M-2 には前オーナー自作の 100V 専用電源(写真3 上側)が付属されていましたのでこちらを使用しています。

写真4


写真5

ケースを外して中を見ると、もちろん全真空管式です。
トランジスター世代のオレは、見た瞬間「外国に来たみたい」という感想でした。

写真6

裏側は空中配線です。
「KWM-2 メインテナンス」の本に書いてある定番の消耗部品交換が実施されていたのですが部品のリード線が、ねじられた後に半田付けされていてそれをほどいて、再度巻いて半田付けされており、前オーナーの苦労がうかがえます。

写真7-1


写真7-2

リヤパネルです。
写真7-2 左側の大きな多芯端子が、電源装置と接続するための端子です。
低圧(ヒーター用)から高圧(電力増幅用)まで各電圧供給用の端子です。
電源端子の右側は、アンテナ、スピーカー、PTT や ALC 等の端子です。
全ての端子が RCA ジャックです。
ステレオアンプや TV の入力端子に使用されているものです。
高周波特性は、M 型コネクターよりも優れているそうです。
マジかよ? と思いましたが、案の定、使用開始直後にアンテナ端子、スピーカー端子の接触不良を感じました。
アンテナ端子だけでも、BNCにしてほしかったです。
(耐久性を優先させてほしかったです)

写真8

7MHz SSB を受信してみました。 
なんとも懐かしい音がしました。これが 伝説のメカニカルフィルターの音か? 
「ほっこり」とした気持ちになりました。
2.1KHz 帯域のメカフィルから得られる音声信号は 200~2000Hz 程度と思われ、200 × 2000 で 40 万の法則に該当しているためなのか、それとも気持ちのせいなのか分かりませんが、とても心地よい音です。
S メーターは ♠ 型の針先で、動き方が「たまりません」。

写真9

送信は、故郷アメリカ製のガイコツマイク(ダイナミック)を使用するとローカルの評判が悪いため、同じく故郷製のシルバーイーグル(クリスタル)に交換したら評判がぐんと上がりました。
自分の送信音を録音して聞いてみたら「少年の声」でした。まだ声変わりしていませんでした。
なお、シルバーイーグルは PTT スイッチが半端なく重く、子供の僕にはキツかったので、中継 BOX を製作して送受信切り替えをしています。
また、内蔵電源が乾電池式(006P 9V)です。この電池は結構高価なので、外部電源給電(ファンタム電源 48V)としました。(単独使用時は乾電池です)

CW は、受信周波数より送信周波数が 1750Hz 高くなります。
国産の 600Hz に慣れた耳で聞くと、超高音です。
昔、DX ペディション局の CW を追いかける OM たちは、このことを計算していたのでしょうね。
オレも、1KHz 以上離調して呼んだら、拾ってもらった経験があります。

古い車やバイクと同じで、始動してからすぐには運転できません。
ウオーミングアップをしないと、動作が安定しません。
無理に始動後すぐに運転しなければならないときは、外部周波数カウンター(秋月AE-FCOUNT-3)があるので、安心です。
(「周波数ずれてますよ~」という指摘を受けないですみます。)

オレにとって、この「KWM-2」の1番の魅力は、ずばり、デザインです。異国情緒を感じさせます。
実物は、本やパソコンの画面で見るのとは、全く迫力が違います。
筐体、パネル、ノブ、ツマミやメーター等は、他の COLLINS モデルでも共通するもので、そのブレのなさが、かっこいいです。

2番目は耐久性です。
オレと同じアラ還でも現役バリバリです。
高耐久性の必要条件として、部品交換修理が可能ということが重要です。
最近のトランシーバーは、そのトンシーバーのために設計した専用 LSI を使用していて、製造終了後、保守用部品保管法定年数が過ぎると、部品交換不可能になります。
一方、真空管は製造中止になっても、汎用代替品が十分に現存しています。
「KWM-2」は、製造後 100 年を過ぎてアンティーク無線機になることが、ほぼ確実です。

昔、無線界では「コリンズ」、バイク界では「ドウカティ」、車界では「ベンツ」には手を出すな。という教訓がありました。
理由は、高価なので、はまり過ぎると、秋田弁で「かまけす」。
(かまどがひっくり返る:破産するという意味)からです。

これら製品の生産国「日独伊と米」は、かつては戦争した国々です。
平和で仲良くなった時代に無線を楽しめることは、本当に幸運です。


【メンテナンス編】

写真1


写真2


写真3


写真4


写真5

メンテナンスといっても、真空管機はオレの実力では磨くくらいしかできません。
真空管といえば(中学生の頃、コミ捨て場のテレビから真空管を取り外してきて、それを壁にぶつけて破裂させて、遊んでいました。く○ガキでした)
(多分、12AX7、6JS6C 等、東芝や日立製のいわゆる MADE IN JAPAN だったと思います)
つまみを外して、中性洗剤につけて洗います。
前面パネルはタオルや綿棒に水をつけて拭きます。ドライヤーで乾かしながら。
送受信切り替えリレーも接触不良が感じられたので、清掃しました。
ダイヤルノブのアルミエスカッションが痛んでいたので、他の無線機用のものに交換しました。
スピナー部分の形が KWM-2 に合わないので、削って整形しました。
消耗品なので、はがせる両面テープを使用しました。

アンテナやスピーカーの RCA 端子が接触不良で、BNC 端子に置換しようと考えましたが、オリジナリティを保つために、整形・洗浄等で現状維持としました。

コリンズの保守用部品を扱っている会社に問合せしたところ、ほとんどの部品が「在庫なし」でした。
これから先、このトランシーバーを維持していくことは、難しくなっていきそうです。


【スピーカー改造編】

写真1


写真2


写真3


写真4


写真5


写真6


写真7


写真8


写真9


写真10


写真11


写真12

コリンズのスピーカーです。
ベルテックというユニットが入っています。詳細は不明です。
パンチングメタル(穴あき)筐体のためエンクロージャーの役目を果たしていません。
音がスカスカです(おっと失言、世界を敵に回してしまった)。
原型復旧がしやすいように、いじってみました。
バッフル板にデッドニング板を貼り付け。
防音カーペット(ピアリビング製)でエンクロージャーを形成。
外観は全く純正然としています。音は低音がぐんと出るようになりました。
他のスピーカーと聴き比べてみました。
コリンズスピーカー(4Ω)、オーラトーン 5C(8Ω)、JBL4338(8Ω)、BOSE 101(6Ω)を、アンプ・スピーカー切替器を使用して切替試聴しました。偶然にも全てアメリカ製です。
SSB 受信音と YouTube ミュージックで比較しました。
SSB 受信音は、BOSE、コリンズ、オーラトーン、JBL の順番で好みでした。
ミュージックは、「YOASOBI」「LiSA」等を聴いた場合は、JBL、BOSE、オーラトーン、コリンズの順番で好みでした。
「およげたいやきくん 子門真人」を聴いた場合は、オーラトーン、コリンズ、JBL、BOSE の順番で好みでした。

ステーション・コントロール「312B4」
こちらのスピーカーは楕円形、筐体は穴なしです。後ろ側は解放です。
音は、まあまあ。
(おっと、また世界を敵に回してしまった)

 

■ ■ ■

JH7VHA 柴田さん。

KWM-2 の投稿記事、誠にありがとうございます。
何度もご投稿いただき、その度にハムへの情熱が伝わり、大変感謝しております。

今回の記事で、先輩ハムの方が亡くなられた後、譲り受けたという「KWM-2」の写真を拝見しました。アメリカの名器であり、かつ高価なこの無線機を、同じようにハムを愛する柴田さんが受け継いだことに深く感銘を受けました。持つべき人に渡るというのは、本当に素晴らしいことです。

また、この記事を編集する際、80 年代の松田聖子の曲を聴きながら作業を進めました。当時の熱いハムへの思いが蘇り、ノスタルジーに浸りながらの編集となりました。

柴田さんの記事では、KWM-2 に対する深い理解と愛情が伝わってきます。特に、真空管についての説明や、KWM-2 のメンテナンスからスピーカー改造に関する苦労話、そして無線機の設置や運用に関する詳細なレポートは、非常に興味深く、読み応えがありました。

先輩ハムから受け継いだ無線機を大切に使い続ける姿勢、そしてその魅力を共有してくださることに、心から感謝いたします。これからも、ハム仲間として共に楽しんでいきましょう。

ありがとさん!

de JH1LHV(JR7FHN)